冒険者になって2
最初の年、5人の仲間は同郷のよしみでパーティをくんだ。
だが報酬の配分で揉めたり、方向性の違いから争いごとが絶えなくなり、早々に解散となった。
サムは姉の身請け代を稼ぐまでは強く死ねないと思っていた。
安全マージンを取りたがるサムと他のメンバーとでは冒険者としての姿勢すら違っていたのだからパーティが解散したのにはある意味無理はなかったもしれない。
最初サムが抜け、次に農家の三男のラスティが冒険者としての限界を感じて辞め、残ったヒックスとボビーとパメラは3人で依頼をこなしていたようだ。
サムはコツコツと着実な依頼をこなし、贅沢をしないで小金を一生懸命貯めていた。
無茶な依頼を引き受ければ、無理が祟って防具も武器も痛むし怪我だってする。
想定外な事はいつだって起こり得るのだから、出来るだけ安全マージンを取って活動する。
サムなりに立てた計画だった。
対してヒックス達はパメラの魔法を頼りに、実力よりやや上の依頼を派手にこなしていたようだ。
サムが初心者であるFランクからEランクに上がった時にはすでにヒックス達はDランクに上がっていた。
ギルドで顔を合わせても、無視をしてくるヒックス達に、サムは危うさを感じていたが話しかける雰囲気ではなかった。
そんな感じで1年たち。ヒックス達は冒険者として一人前だと言われるCランクになっていた。
その頃になるとヒックス達はギルド期待のホープとして名前が売れるようになっていた。
だからか、慢心があったのかもしれない。
とある依頼の魔物の討伐でパメラが怪我をし、魔物を逃がしてしまった。
当然違約金も発生し泣きっ面に蜂である。
「サム、お金を貸してくれないか」
突然、ヒックスがサムが定宿にしている安宿に顔を出したのである。
(ギルドで散々無視してくれた癖にどういう風の吹き回しだ。)
サムが怪訝に思っていると、いい杖の出物があるのだが、違約金を支払ったために持ち合わせが足りなくなってしまったのだと言う。
杖には自分達の他にも買い手がついて、満額用意できなければそちらに渡ってしまうのだと言ってサムに借金を申し込んだのだった。




