冒険者になって
サムの父親は狩人をしていたが、病気の妻の薬代を稼ごうと王家の森の近くで狩りをした折に、兵士に捕まってしまった。
狩りをしていたのは王家の森ではなかったはずだが、罪人として5年の懲役を科せられ刑に服した。
その間、一家の働き手を失ったサムの家は困窮をきわめた。
狩りの出来る子どもは、狩りをし、下の兄弟達も近隣の家へ手伝いにいった。
それでも生活は苦しく兄弟たちは飢えていた。
ある日、狩りから帰ると姉の姿がなかった。
家族の手には銀貨の入った袋。
サムのひとつ上の姉が自ら自身を売ったお金だと言う。
「俺を売ればよかった」
サムは号泣した。
姉が自分を犠牲にしたお金で母は医者にかかる事が出来て、よい薬も処方され快方にむかった。
5年の刑期を終え、父も帰宅し、下の兄弟達も狩りに出られるようになってサムは決意した。
冒険者になって、稼いで姉を取り戻す。
その年に故郷から冒険者になった者はサムを含めて5人いた。
ラスティ、パメラ、ボビー、ヒックス、そしてサムが故郷の村を出発した時は春のはじめで、見る物が皆輝いていた。
農家の三男で継ぐ事のできる農地がない者。王都へ行って夢をかなえたいもの。冒険者になって一発逆転をしたい者。
そして家族を取り戻したい者。
夢と希望が、彼らの背を押していた。




