気のいい仲間
「ようサム。昨日は遅かったんだな」
いつもの飯屋で朝食をとろうとテーブルを前に座っていると、仲間が声をかけてきて相席してきた。
そして当たり前のように、手にもった今朝のおすすめセットの乗った盆をサムの前に置くと正面にすわった。
ここの飯屋は肉類を激安で提供してくれる。
肉体が資本のサムとその仲間達にとってはありがたい存在で、今朝も二人のテーブルの前の皿には、香ばしい臭いをたてる肉の塊がある。
「やあ、ザック。」
「なんだ?しょぼくれたような顔して」
冒険者になって4年目。ようやく腰を落ち着けられる仲間のパーティ。
サムにとっても気のよい奴らばかりで居心地がよい。
「…昔の仲間が死んで見つかった。それで剣も戻ってきた」
「…そうか」
事情を知る仲間は頭をガリガリとかいた。
「てっきり遠くに拠点をうつしているとばかり思っていた」
「まぁ奴らにとっては自業自得とは言え、知り合いが死ぬってのは…気分はよくないな。。どこで見つかったんだ?」
「ハイグリーンの南東のダンジョンだそうだ」
「あー。あそこか。意外と近くに居たんだな」
「ああ」
つい習慣で肉の塊を頼んでしまったらしいが、サムは食欲がなさそうだった。
ザックはブツリと肉の塊にフォークをいれ、ナイフでひと口大に切ってそれを口にいれた。
サムも釣られたようにもそもそと肉を切り分けはじめた。
「まぁでも、これで一区切りできるじゃねぇか」
「…故郷の奴らの家族にも報告もできるしな」
自嘲気味にサムが言うと仲間の男、ザックはサムの肩を慰めるように軽くこづいた。
「気にすんなよ。お前は悪くねぇ」
でかい塊を口の中にほうりこんで再びザックは話しかけた。
「それひしへも、はふはがしはーはんだふえほ(それよりも身体が資本なんだ食えよ)」
「何言ってんのかわかんねぇ。」
サムは苦笑して、自分の口にも肉をほうりこんだ。
それを見ていたザックだが、急に目を白黒させあわてはじめる。
「へはふひは(でかすぎた)」
ザックが大げさに胸のあたりを叩く。
そしてあわてて水の入った入物をテーブルから掴むと一気に飲みほした。
「あー死ぬかと思った。喉につっかえやがった」
「何やってんの」
サムの表情が少しだけやわらいだのを確認して、ザックはサムのグラスにもピッチャーから水を注いだ。
「今日はお前、休んでおけよ。ひでぇ顔色してやがる」
ザックはそう言うとサムの肩を慰めるように叩いた。




