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モブの恋  作者: 相川イナホ
旧ソルドレイン領にて
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トゲシー討伐Ⅲ

 やけにくぐもったような響く咆哮をトゲッシーはあげた。

 ガスパの攻撃が届いた証拠だ。


 ついに獣は立っていられなくなって後ろ足から崩れるように横倒しになる。

 おそらくは腰椎のどこかをガスパの攻撃で傷つけられたのだろう。


 さすがガスパ、いい仕事する。

 あの棘山の下にある、小さな範囲を狙うのは他の人には出来ない芸当だろう。

 いや無理だ。普通は棘に阻まれて、トゲッシーの背中までは貫けない。


 「さて、最後のあがきが来るよ。みんな気を引き締めな! 」


 ネリーが発破をかけ、皆に緊張が走る。


 致命傷を与えてからの方が、手ひどい反撃が来るというのを私達は自分達への戒めとしている。勝ちそうになった時が一番危ないのだと。


 案の定、トゲッシーが一声咆哮すると、ネリーの威圧で固まっていたトゲシー達の硬直が解け、再び棘の毛を飛ばしはじめた。


 「…『鼓舞』を使ったようですね」


 ピールとガスパの武器は対接近戦用なのでこうなると少しだけ不利になる。


 「フロル、やっちまうよ」


 ペロリと指を舐めネリーは剣を握り直しながら言った。


 「はい」


 私は頷いてファイヤーボールを作り出す、

 ゆっくり、魔力を込めて一つずつ。


 「ハッ!」


 それをネリーが縦三つ横三つに切り裂く。

 こんな芸当、他に出来る人がいるとは思えない。

 ファイヤーボールを林檎か何かのように分割するだなんてあり得ない事が出来るのがネリーだ。


 9つの塊になったファイヤーボールはトゲシー達に向かって飛んでいく。

 次と私の出すファイヤーボールを細切れにしていくネリー。


 さながら無数の火の玉がトゲシーの上に降りかかっていくようだ。


 トゲシ―は丸くなって柔らかい内側部分を守る姿勢を取るが、そんな隙だらけの恰好を「赤の牙団」の仲間達が見逃す訳もなく、総攻撃を仕掛けていく。


 トゲシ―はなすべくもなく、背中側から矢や投げナイフを突き立てられ絶命していった。


 そしてあんなに荒ぶっていたトゲッシーもガスパとピールのコンボ攻撃に留めを刺され、とうとう力尽きた。


 「終わったな」


 今回の討伐は数が多かった。

 その分難易度はあがったが「赤の牙団」としての仕事としての難易度は中程度であろうか。


 「ブレスノ出番がナカッタナ」


 ジルベールは竜達にブレスのスタンバイをさせていたらしい。

 本人も大して出番がなくて不満そうだ。



 



「むむッ、この素材は使えるぞ」


 トゲシ―の臓物は毒消し効果が、トゲッシーの棘針は矢の材料になるらしくニコルが例の背負子に詰め込んでいた。

 お肉も大変美味しいらしい。

 こんなに数があるのにと思っていたが、ニコルの背負子に大部分が収まってしまった。

 ブラックホール並みの収納力だ。


 「これから侵攻する魔の森の素材も集まるだろうから、その分は開けておかなくちゃ」


 え?まだ入るの?


 ニコル…収納チートじゃない?

 ギルド職員をしなくても物流関係に関われば、一生困らなさそう。


 「僕には冒険者ギルドを盛り立てるという使命がありますから」


 爽やかに笑ってみせるニコルだが、残念臭が何処となく臭う気がするのは気のせいだろうか?



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