襲撃3
「ララリィ!大丈夫か!」
白馬でかけつける王子様が若干一名。
たしかに、市は封鎖され、ここまでの通路は人気がまばらだ。
でも市に残っているのが身体能力に優れた獣人でなかったら、誰か怪我させてますね…絶対。
うしろについてきたと思われる兄、レーフェンも苦笑を浮かべている。
「ご領主様!お待ちいたしておりました」
獣人の市の代表と思われる男が兄の前で跪いた。
「うむ。よく知らせてくれ、一人として死者もなく混乱もなくこの場を納めてくれた。よくやった」
地下でおかしな動きがある事を検知したのはどうやら市で店を出している獣人達のようだった。
それゆえにアマゾン領の兵士達が動くのも早かったのであろう。
「お褒め頂き、恐悦至極、お役にたてまして私は!」
あれれ? なんで市の責任者の人、感極まって男泣きしてるの?
お店の人達もうっすらと涙を浮かべて兄を見つめているし。
アマゾン領の兄の家臣団達と同じ反応なんだけど!
「さすが歩くカリスマ」
ダンが唸るように言ったので、ふとダンの横にいるピールを見るとピールももらい泣きをしている。
そのむこうで、ララリィ嬢と王子が抱き合ってさっきより甘い空気を醸しているが
インパクトでいうとこちらより薄いのが何とも…。
「何だか疲れた」
緊張状態が抜け、気が抜けた。
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「お疲れ、ごめんね。襲撃が予想できるのに、迷惑もかけて」
ジェイが苦笑している。彼はもうララリィ嬢の逆ハーの一員ではないのかな。
「ジェイ?腕?」
彼が利き腕を擦っているので、彼の手をとる。
「大丈夫だ。かすり傷だし、最後の奴が妙な武器を持っていてそれが掠っただけ…」
「見せて」
「あ、おい」
彼の騎士服の腕を取り、袖をまくり上げる、
血もにじまないような傷。
だが、うっすらと周囲が青黒くなっている。
「見せてみろ」
近くにいた「煌駆のジン」も傷を覗き込む。
「治癒かける必要もないと思うけど」
「いや、この変色具合、おかしいだろ」
3人で騒いでいると注意を惹きつけたとみえて「赤の牙団」面子が寄ってくる。
傷を見たガスパが顔色を変えた。
「紐を寄越せ!」
私が髪を縛っていた紐を渡すとジェイの肩に近いところで縛り上げる。
「ダン!毒消し!例の濃い方だ」
ひったくるようにダンから毒消しを奪うとジェイの口に突っ込む。
「飲め!」
「ジルベール!ネリー!こいつを押さえろ。」
ジェイの傷口の周囲の変色はみるみるうちに広がっていく。
「こいつは治癒とかで治したらダメなんだ。対処法は変異部を切り取るしかない」
ガスパはスラリと刀を抜く。
「痛いぞ覚悟しろ」
「!!!!!!!」
声にならない悲鳴をあげてジェイが歯を食いしばる。
変色した部分から随分と離れたところから刃を入れる。
ついで刀を変え、反対側からも刃をいれる。
そして両側から切れ込みをいれられた腕の肉にナイフをつきたて、変異部分を腕から切りはずす。
「毒消し!」
ダンが差し出した毒消しを切り取った部分にふりかける。その領は切り取った部分に溜まる程だ。
痛みに暴れようとするジェイを両側から抑えるネリーとジルベールも必死だ。
「足はまかせろ」
ジンが魔法で土枷を作り足を固定するが、ジェイの足が暴れまわるので、慌ててピールもジンと一緒に足を押さえにまわる。
「空き瓶!」
ダンが毒消しが入っていて空になった瓶を渡すと、ガスパはその中に切り取ったジェイの腕の肉片をいれる。
もはやそれは真っ黒な色に変化していた。
ガスパは傷口を睨んでいるが、残った腕の方に変色がおこらない事を確認すると私の顔を見た。
「フロル・・傷を塞いでくれ」
私は治癒魔法をジェイにかけた。
ジェイは気を失ったようだ。




