悔恨
フリードの胸中です
当時の自分を窘めたい気持ちもあるが、あの頃はああいう風にしか生きられなかった。
生家では自分が生まれ持った色彩のせいで居場所がなく、女性を渡り歩き刹那的で褒められた物でない関係を複数もっていた事はたしかだ。
相手の女性達も未来のないそれに気がつくのか、フリードの前からいつの間にか居なくなっていて別れ際にあまり揉めた記憶もない。
そういう相手を選んできたとも言えるが、たしかにダフマン家の令嬢であったフローラとの出会いはそれまでの関係とは違う物だった。
彼女に手を伸ばすべきではなかったと今なら思えるが、今更なかった事には出来ない。
ララリィと出会って真実の愛を知ってからは、心の空虚さは薄まり、自分の行為の愚かしさを自覚出来るようになった。
愛しい人しか欲しいとは思えなくなった。自分は変わった。
だか、自分が愛を向けているあの人は自分だけを選んではくれない。
彼女の愛はいつも平等に皆に向けられている。
そして今は、自分が仕える第二王子が彼女を捉えている。
女々しくも彼女の周囲で愛のお零れを待つ自分を以前なら哂ったであろう。
理解できないと。
だが彼女の愛を独占できなくても彼女を嫌いになるどころか彼女を愛しく大切に思う気持ちは募るばかりだ。
一方で、他の女性を踏みじみっていたことは事実。
「…俺は、酷い男ですね」
項垂れてそう呟いたフリードに、レーフェンはただ冷たい視線を送った。
「された方の気持ちを考えれば出来ない事だろう?貴殿は妹だけでなくわたしもわたしの家族も…この領に住む者の気持ちを踏みにじったのだ」
正論だが、フリードはこの目の前の男も、愛されて育った人間の側なのだと妬ましいような気持を覚えた。
望んで作った子どもではなかったが、自分の血を受けた子ども。
彼は周囲から愛され、必要とされている子どもだった。
自分が弄んで捨てた形になったその母親も、愛され慈しんでいる家族がいて、その家族によって自分は罪を問われた。
捨てた方の自分は?
自分には愛してくれる家族はいない。女性を弄んで捨てた非道な男に相応しく冷たい血のつながりだけの関係の家族しかない。
自分が受けた仕打ちを、人に与える事しかできない男なのだとフリードは自分を呪わしく思った。
なんと価値のない救いようのない人間なのだろうと自虐的な思考が浮かぶ。
記憶の中のピンクの髪が目の前を揺らいで映る。
今はただララリィに会いたかった。
会って
「貴方がそうなのは貴方のせいじゃないのよ」
と言って欲しかった。




