ミスマッチ
正直意外だった。
チャラ騎士とわたしが呼んでいることからわかるように、彼は騎士科に所属する上級生だ。
図書室とのミスマッチ感がぬぐえない。
「・・・・どうぞ」
最初とまどってしまったとしても仕方がないと思う。
憧れの人が近くにいることにドキドキしながら本の頁をめくるが内容が全然入ってこない。
(他の席も空いているのに何故?)
こっそり横目で見ると、彼は頬杖をつきながらわたしの方を微笑んでみていた。
「!」
あわてて視線を本に戻すと隣から軽く噴き出す気配がした。
どうやら挙動不審なわたしの行動が面白かったらしい。
顔に血が集まるのがわかった。きっと耳まで真っ赤だったに違いない。
本を睨むようにしていると隣から腕が伸びてきて、本が目の前から取り上げられた。
「最近、見ないなと思って」
ファンクラブを抜けたわたし達は活動に参加していない。自然と彼の周囲に近づく事は少なくなっていたから、彼がそう思ったとしても不思議がない。
けれど、たくさんの女子生徒がいる中でわたしの存在に気がついていたのかなと思うと少なからず、ほんわかする気持ちが湧きあがってきた。
「サロンにも出ていないんだって?」
彼がそのことを知っていたのはひどく驚いた。
同時に恥ずかしくなる。サロンへの出入り謹慎だなんて外聞が悪い。
「ちょっと・・・あって」
自然と声が小さくなる。上級生のご令嬢の婚約者につきまとわれているだなんて
なんだか言いにくい。
「僕でよかったら、相談にのるよ?」
キラキラしい笑顔で言われて、心臓がはねあがる。
「ご迷惑でしょうから・・・」
そこまでずうずうしくはないつもりでそう断った。
うつむいていると、机の上で重ねていた手に彼の手が重ねられた。
「実は、だいたいの事は僕も聞いているんだ。」
ロイヤルブルーの瞳で射すくめられて、身体が縮こまった。
「おせっかいを焼かせて?」
そう言われれば、頷く事しかできなかった。
顔を赤くしてコクコクと首を縦にふるわたしの気持ちは彼には筒抜けだったに違いない。
「大丈夫。悪いようにしないよ」
チャラ騎士はわたしの手をやさしく握った。
すっかりのぼせてしまったこの時のわたしに今のわたしは言いたい。
目 を さ ま せ
ペースにはめられてるんじゃないよ
と。