訓練
「ふん!ふん!ふん!」
5人組の騎士が最後の一人になったところで、サムは持っている三叉槍をバトンか何かのように頭上でまわしはじめた。
そしてキメポーズをするとドヤ顔で私の方を見た。
・・・・・・・・・・・・・どう反応しろと。
それを隙だと判断して騎士が木剣を構えて突っ込んでくる。
サムは視線は私においたまま、それをかわしてすれ違いざまに背後から槍で打ち据える。
えーと風船割るだけでいいんですけど?その騎士さん硬直してますよ?
あまりの痛みで意識が吹っ飛んだのか騎士がゆっくり倒れる。
すると自重で彼の前面に残っていた風船は割れた。
「ふん!」
どうだと言わんばかりの顔。
視線は私の方へ。
反応を求められているようなので、拍手をしてやる。
すると思わずニカっとうれしそうな顔をして笑ってからそれに気が付いたように慌てて顔をそらした。
褒めてちゃんかっ!
若干の謎の疲労感と共に交流試合が終わり、そのまま、アマゾン領軍指揮による訓練がはじまった。
兄によってこっ酷く打ち据えられたフリード以外は、皆参加だ。
「はい、前衛!そこで盾!」
「遊撃!前に出過ぎだ!周囲をよく見ろ」
「はい、後衛、入れ替わる!ぐずぐずするな!」
「属性の相性を考えろ、最初からがっつりあてていけ!」
「はい、ブレス~~。今ので全滅だ。油断してただろ?」
「違う、サーベルボアは牙をすくいあげるように突進してくる。その位置だと剣ごと持ってかれるぞ」
「横がお留守だ。前後左右上下すべてに気を払え!」
「「無茶言わないでください」」
騎士達は一人、また一人と疲労からへたり込んで座り込んでいく。
「今、立っていない者は死んだと思え!」
「「・・・・」」
「座り込んだ者は、これ飲んで、訓練所を10周!」
そこへ追い打ちをかけるかのような叱責が浴びせられる。
渡された飲み物を一口飲んで、騎士の一人が吹いた。
「な、なんだこれ」
所謂、アイソトニック飲料である。塩分と糖分が配合された味は彼らには新感覚だったようだ。
「うーん。慣れてみると旨い?」
汗として流れてしまったミネラル分を身体が欲しているため旨いと感じるはずだ。
「飲んだら、走れ、走れ。」
ララリィ嬢が、その大きな瞳に涙を浮かべ、「みんな可愛そう」などと寝言を言っているが軽く無視される。
「死んじまったら、可愛そうなんて言ってられないだろが」
煌駆のジンが吐き捨てるように言う。
彼は辛口キャラのようだが、もう少し発言する時に言い方とか気を配った方がいいと思う。
若干一名、「ララリィは優しいな」などとボケているどこぞの王子もいるがそっちも無視だ無視。
ジンの言葉に、ララリィ嬢の傍に控えていた侍従のセオドアが眉を吊り上げたが、爺が、持ってきた木剣をおしつけ言った。
「あなたは訓練をうけないのか?まさか騎士に守ってもらうつもりではないですよね?」




