再会までのカウントダウン
「ソルドレインのヘルドラ遺跡ねぇ・・・遊び半分で王族が手を出していいところじゃないんだが」
兄は顎に手をあて思案顔で言った。
あれから急ピッチで王子一行を迎える準備をして、何とか体裁を整えた。
今は王子と騎士団を迎えるべく、領境まで迎えに出て、待機中である。
私も銀色の鎧に身を固め、兄の傍に待機している。
「なぁ。フローラよ。お前がここにいるって事は・・・ユリウスの父親絡みだろう?」
兄には御見通しである。
私はため息をひとつついた。
「ユリウスは、私一人の子です。父親は必要ありません」
そう、あんなチャラくて無責任な父親などいらないのだ。
「やっこさん来ると思うか?」
「彼は騎士ですからね。第二王子のとりまきとして、行動を共にする気がします」
「来なくても、館で待っていればよかったのに」
今回、私が同行したのは居てもたってもいられなかったからだ。
彼は私のことを覚えているだろうか。
たった数週間つきあって、無情にも捨てた女の子のことを。
もしも詫びを入れるようなら、ぶん殴ってやる。
忘れたフリなぞしてとぼけようものならどうしてくれようか。
もう二度と戯れに女の子を口説いてくれようなどと思えないようなトラウマを与えてやる。
もう、あの当時の何もできない女の子ではないのだ。
今の私には、彼に打ち勝つ力も技も持ち合わせている。
「まぁ、お手柔らかにな。相手は腐っているが侯爵子息だ」
兄は肩をすくめたが止める気はないようだ。
「ええ、正々堂々、私怨を晴らしますわ」
鼻息も荒く、私は彼の到着を今か今かと待ち構えていた。
「来た」
馬の嘶き、馬具の音、蹄の音、それらが近づいてくる。
近づいて、目視できるようになって、私達はあんぐりと口を開けた。
白と金で統一された騎士団の装備。
飾りに使われている装備の金の色が太陽の光を反射して・・・・
眩しかった。
「め、目がつぶれそう」
「なんじゃあのキラキラは」
ペンネと爺の呆れた声が背後から聞こえた。
そこにはまさに一瞬にして私の毒気すら抜いてしまった煌びやかな集団がいた。
「おいおいおいおい・・・一体全体どういうつもりだ?」
パスタも低く口笛を吹いた。
「どこのエレク○リカルパレードだよ・・・」
うっかりと前世の夢とおとぎの国のパレードの名前が出てしまった。
それぐらい、浮世離れしていたのだ。
キラキラは電飾による光じゃなくて、輝くような笑顔の王子以下顔面偏差値がぶっちぎりで高い美男達から主に発せられていた。
毒気が一気に抜けた。私の。
「何なの、この非日常的集団は・・眩暈がしそう・・・」




