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モブの恋  作者: 相川イナホ
第一王子の毒吐
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吾輩は第一王子である


吾輩はグルフェミア王国の第一王子である。

名前はフェルナンドである。


母上は王の正統な妃であるからして、まごうことなき長男で嫡男である。


吾輩が7歳の時に父上の側室に子どもが生まれた。

弟の誕生である。

名前を「ライオネル」とつけられた。


こいつがとんでもない弟だった。


まず、髪と目の色がよくない。

我が王族の伝説的な先祖と同じ色なのである。

ちなみに吾輩は「賢王」と呼び声の高い3代目の王と一緒の色合いなのである。

この人物は優秀だったのだが、まあいい、今はこの話はおいておこう。


さて、その「伝説的な先祖」というのはキラキラしい金色の髪と特徴的な青い色の瞳の若者で、もともとは冒険者だったと言う。

そう元々は貴族でもなんでもなかったのだ。


今でこそ、その「伝説的な先祖」は崇められ、一般市民には人気なのだが、王族に伝わる歴史書での評は悪い。

こいつのおかげで、グルフェミアの文明は50年は後退したと歴史書には記されている。


こいつの功績は、当時、王国を害していた負の魔力を浄化する石をどこからか持ち込み、王都を清浄な都へと戻したとともに、当時の王の娘をたらしこんでちゃっかりとその夫に収まったということぐらいしかない。


負の魔力の浄化は放っておいても、数年のうちには方法が確立されたのだから功績といっても低いものだ。

そいつの血が相当強いのか、我が王家の血筋からはよくそいつと同じ色の髪と瞳の子どもが生まれる。まるで呪いのようだ、と2代前の王が言ったとか言わなかったとか。


で、その弟のライオネルなのだが、生母である側室と周囲の者が甘やかすので尊大な性格になった。

世界は自分のために周っているかのように振る舞っている。


が、たしかに奴の生まれた年の前後5年は豊作だった。

豊作というのは、人材が、という意味である。


将来王国を背負ってたつような家柄の才能をもった子どもが大勢生まれていたのだ。


吾輩の生まれた年など酷いものである。


吾輩が学園に在籍している間に、側近候補までいって今でも残っているのは、二つ名を「赤鼻」とか「でこ」とか「あご」とか言われる平均的な人物ばかりである。


  いや、彼らは一生懸命吾輩に仕えてくれている。


 実直でもある。唯一の美点だ。


 対してライオネルの周囲には、切れ者と噂される宰相の息子、(こいつはモノクルをかけている)魔術に秀でたもの、剣術、戦術に秀でたものなど才能あふれた者が豊富におり、おまけに同盟国の王子とは同じ年である。


 正直吾輩の側近とそっくり入れ替えたい。


 が、尊大な弟は、その環境を恵まれたものだとは思わず、一人の女性を巡って側近候補たちと火花を散らす関係になる始末。


 そのドタバタのせいで、王国を支える忠臣の家が巻き込まれ、いくつかは「断絶」寸前まで行ってしまった。


 グルフェミア建国以来の窮地である。


 おまけに同盟国のはずの国とは、戦争になってしまった。


 父王と吾輩が東西南北走りまわって事態を収束させたが、当事者の王子達はどこふく風。


「いろいろな不幸な行き違いがあったが、また仲良くしような」


とか握手で閉めたらしい。


 おまえらのせいで何人の兵士が帰ってこなかったり、いくつ他国に有利な条約を結ばされたりしたと思ってるんだ!


 年がいってから生まれた弟に甘かった父上も頭を抱え、奴を王位継承位から外すことを考えはじめた。

 吾輩も同じ気持ちだ。


 だが奴の周りの人材は惜しい。


 まず、宰相に言って、奴の息子をこっち側につかせた。

 まだ青臭いところはあるが、さすが宰相の息子、いい性格をしている。


 一緒に剣の優秀な使い手と、芸術肌の伯爵息子も引き抜けた。


 が、ここへ来て妙な噂が出回るようになった。


「第一王子と第二王子が一人の侯爵令嬢を巡って対立しているらしい」

「第二王子は第一王子よりも庶民的で話し易い」


 なんだそのプロパガンダは。


 吾輩、ションベンくさい若い女には興味ないぞ。

 それと奴と対立どころか政事の世界から追放しようとは考えているがな!


 庶民的で話し易い?王家が大衆におもねってどうする?

 大衆の意見とは時として、自分勝手なものだぞ?

 例えば、自分のところだけ税を安くしてほしいとか道を通してほしいとか。


 王族とは一部の利のために存在するにあらず、対極的に物事を見る力がないといけないのだ。


 ふむ、何やら臭うぞ。


 吾輩と弟を反目させて利益が得られる奴は・・・誰だ?

 建国以来の忠臣の家を没落させて得をするやつは誰だ?


 そして我が国と周辺国との軋轢が深くなることを望んでいるのは・・・。


 陰謀の臭いがするぞ。

 どうやらよほどの大物が黒幕にいるようじゃないか。



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