チャラ騎士とわたし
チャラ騎士について説明しよう。
わたしこと、フローラ・ダフマンが恋に恋した相手、フリード・ラズリーは侯爵家次男である。
学園のアイドルでもある彼は金髪碧眼の王子様然とした外見でチャラい騎士である。
この国の俺様王子と似た色彩をしているのは何代か前に王家より降嫁した人がいたかららしい。が本当は先代王の落胤ではないかとも噂されている。
というのも先代王がラズリー家の当主夫人に横恋慕していたという事実が公然の秘密としてまかり通っているからである。
事実、長男で兄であるオーウェン様は当主である父親と同じ茶髪であるし下の弟御も茶髪である。
彼だけが王家の色に近い色彩なのだ。
ご丁寧に、瞳まで王家と王家に近い人間にしか出ないというロイヤルブルーだ。
だからか少し屈折した性格になったのかもしれない。
無類の女好きを装って実は女性を憎んでいたのではないかと。
彼を他の兄弟と同じ色彩に産んでくれなかった母親を憎みながらも慕っていたと思われる。
兄弟の中で一人だけ違う「色」をもって産まれた彼は疎外感をいつも感じていたようだ。同時に生まれもった甘いマスクは周囲の人々を容易く虜にしていって彼を放っておいてはくれなかった。
加えて、努力や苦労をしなくても七割近くまで簡単にできてしまう才能を持ち合わせていた。
恵まれた容姿、恵まれた身分、ちやほやしてくれる周囲。
彼はだんだん刹那に生きるような生き方をするようになっていった。
当然、女の子たちとの付き合いもそう。
フローラは恋する乙女の嗅覚で、そんな刹那に生きるフリードの倦みに気が付いて、人知れずその心を痛めていた。
本当に馬鹿な子
心を痛める程思い慕った相手から手ひどい裏切りを受けるのに。
フリードがフローラに目を止めたのは、遊びなれた他のご令嬢達に飽きて、違うタイプの女の子にちょっと食指が動いたからだけである。
わたしことフローラの外見は、ちょっとアダっぽい。
身体も少しばかり早熟で、大人っぽく派手な顔つきをしていた。
町に平民の恰好をして出れば、あまり素性のよくない男たちに通りすがりに口笛を吹かれたり「一度お相手を願いたい」などと失礼なことを言われたりする位には。
ところが中身は年齢相応・・・というか少し幼い・・というかバカっぽかった。
「一度でいいからさせてくれ」
とにかくそんな失礼なことを相手に吐かせてしまう、そんな安くみられるような容姿なのだ。
12歳でこれだから嫌になってしまう。
まだ、そういう知識は乏しいが、何となくいやらしい事を言われているのはわかるので男性は苦手気味。
だからファンクラブでも、肉食系のおねえさまからは遠巻きに、学園のアイドル達をそっと見るだけで満足していたし、彼らを偶像化すらしていた。
彼らの中身だって、思春期の男子で煩悩まみれであるという事に気がつかないまま。
また「ファンクラブ員」であるという事が、「そういう娘」という色メガネで見られる事もあるという事実にも気がつかないおバカさんだったのだ。