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モブの恋  作者: 相川イナホ
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ガスパの魅力

 ガスパの魅力に気が付いただなんて、ララリィ嬢侮りがたし。

 守備範囲が広いな。嫌な方向に。


 ガスパは決して美男だとは言えないが、大人の男性の魅力の持ち主だ。

 私は前世の記憶が・・・げふんげふん・・なせいで、大人の魅力には五月蠅いですよ。


 けっしておじ様趣味というわけではないと思う。たぶん。


 王子も、ララリィ嬢の取り巻きも、彼の前では単なる見目がいいだけの子どもに思える。


 そう、ひとつ告白すると、私はガスパに憧れています。


 でも、私の事は「娘のように思っている」とのことで、恋になる前に速攻失恋でしたが。


  まぁ、なんだかんだ言って、フリードの事はユリウスと「赤の牙団」が癒してくれたんですけど、中でもガスパは本当に人の気持ちに添ってくれる人で尊敬しています。前世風にいうとすれば、リスペクトです。


 なんていうのかな、心のバランスがいいんです。

 あたり前のことをあたり前に感じられて、ふつうの事をふつうに判断できるっていうのがね、私には眩しかったりするのです。

 


 幸いな事にララリィ嬢からの熱視線はガスパには悪寒としか感じられなかったようで、よかった、よかった。


 ララリィ嬢がどんなイケメンを侍らせようと気になりませんが、ガスパはだめです。ガスパだけは嫌です。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「兄上、お帰りなさいませ」

「フローラか。留守番、ご苦労だったな、よくやってくれた」


 本来は一番最初に兄のところへ顔を出すべきだったのだが、順番が逆になってしまった。

 少々後ろめたい気持ちになりつつも兄へあいさつに行く。


「商人と話は済んだか?」

 兄は、順番が逆になったことを、気にしている風もなかった。ほっとする。

 

 兄達は、埃まみれの旅装もそのままに、荷を下ろしたり、馬を休めたりしている。

 出かけた時より多い馬車の数、それにあの最後尾の馬車は・・何だろうか。

 鉄の棒で全体が覆われている。


「あれか、あれには奴隷が乗っている」


 兄は奴隷を持つことに忌避感のある人だった。王都に行って考えが変ったのだろうか?


「言いたい事はわかるが、フローラ。あれは途中で襲ってきた野盗の類を、処刑する代わりに引き取ってきたのだ」


 魔の森と隣接する領は、アマゾン家だけではない。

 他の領の食うに困った領民達が、背に腹を替えられず盗賊行為を働き、失敗して捕まったのだ。


「わが領からは賊を出していないが、他の領では多いと聞く。元は勤労な領民だったのだ、処刑されるのがあわれでな」


 王子一行を襲った野盗は騎士達に皆殺しにされたらしい。

 わが兄の一行を襲った連中は九死に一生を得たようだ。


「王子専属の近衛隊は精鋭だ。適うはずがないのが分かっているだろうに。わたしには覚悟の上の自殺のように思えた」


 自死を選べない飢えた領民が、自国の王子一行に決死の覚悟で刃を向ける・・・ 少なからず抗議の意図を感じる。


「気の毒に・・・・」


「一歩間違えれば、彼らはわが領民の姿だったかも・・見捨てるなど・・・。」


「領主様は結局、アマゾン領の隣の領を賜ったので、実際、彼らは、新領民みたいなものですからね~」


「どういうこと?」


 言葉少ない兄の話の後を引き取って、兄の部下であるペンネが説明してくれた。


「アマゾン領の南の続き領は壊滅だそうで、そこの領地の管理をお館様は賜ったんだよ。」


 ペンネは私とは乳兄妹になる。

 ペンネの母親で、私の乳母の乳に二人して吸い付いてぶらさがって育ったそうなので、彼としても私のことを妹のように思っているらしい。

 少し砕けた物言いをするが、誰も咎めない。


 「詳しい話はあとにして、フローラ、ここはまかせたよ。わたしはライオネル王子のご機嫌をうかがいにいく、荷物の置き場所はペンネと相談してくれ。どのみちすぐしたくをはじめないと・・・だろ?」


 そうなのだ。そろそろ夕飯の心配をしなければならない。


「私もあとですぐ厨房にいきますわ」

 顔や手を拭くための濡れ布巾を手に兄を出迎えた義姉のパトリシアと共に、兄は館に戻っていった。




「わぁ豆だわ」

「こっちはパンよ」

「塩に、砂糖にスパイスだね。これでまともな料理が作れるよ」


 館から出てきた、家臣団の妻が中心の女達も荷ほどきを手伝いに出てきた。 

 荷がほどかれるたびに歓声があがる。

 でも、誰も薄い粥よさようならとは言わなかった。

 長い困窮生活で、すぐ甘い見通しをたてる者は誰もいなかった。


 「難民が増えるよ。お嬢様。」


ペンネは厳しい表情をしていた。


「うちのところの倍か、もっとか・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」


 両手両足を大地について脱力を示したかったが耐えた。


 同じ被災民なのだ。手を差し伸べなければ。

 自分さえよければいいというものではない。

 放っておいてたら、あの捕まった野盗のようになりはて、今度は我が領地と領民を襲いにくるかもしれないのだ。


 人道的にもそうだが、周囲の領地も安全でなければ、わが領の治安は保てない。


 檻の中の囚われている人を見に行く。

 皆、項垂れて背中を見せていた。

 顔が見える人も絶望をその表情に張り付かせていた。


 皆、やせ衰え、こんな状態でよく野盗などをしていたなと思わせる。


 平和時にはみなよき領民であり、誰かの夫であり息子だった人々なのだ。

 まるで自殺のようだったとの兄の言葉どおりだったのなら、立ち直らせてあげたい。 



 甘いかもしれないが、この世界では夢や希望でもたなければ、容易く心が折れてしまいそうだ。


 私の夢はユリウスと、「赤の牙団」と兄達と・・・領民と・・お腹いっぱい食べられて笑って暮らせる事。


 そのための一歩を、私は兄達とすすめようと決意も新たにした。

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