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モブの恋  作者: 相川イナホ
回顧編
2/132

わたしが恋したのは・・・

回想に入ります



 そのとき、わたしは恋をしていた。





 王都の学園は12歳から入学できる。

 前世で言えば中高一貫校みたいな存在だろうか。


 大抵の生徒はこの学園を卒業したあと、さまざまな進路へと進む。

 その上の学校もあるのだが、そこは学者や研究者へと進む狭き門だ。


 遅ればせながら説明すると、わたしは異世界転生者らしい。

 平成の世の日本に暮していたのだが、気がつけば中世ヨーロッパ的な文明がずいぶん後退した世界に転生していた。

 しかも、記憶を取り戻してみれば、いきなりの「出産なう」な状態だ。

 泣ける。


 話をもどそう。

 そんな前世をもつわたしは12歳で王都の「学園」へ主家の令嬢であるレイチェルと入学した。

 はじめての寮生活。

 煌びやかなな超上流のご子息、ご令嬢との共同生活は気を使うことも多かったが、レイチェルの実家のダフマン家のツテで入る事が出来た派閥のおかげで、学園生活は概ね順調だった。


 ダフマン家では養女のわたしにも差別や区別なく援助をしてくれて、実子であるレイチェルと遜色ない生活を送らせてくれた。


 わたしの暮らしのすべては、主家の令嬢であるレイチェルを中心にして周っており、彼女の入る派閥に入り、彼女のとる授業をとり、彼女の入るサロンに参加して・・・要は彼女にべったりだった。


 だから、煌びやかな超上流階級の中でもひときわ燦然と輝く「彼ら」にレイチェルが夢中になると、わたしも一緒に熱をあげ、「彼ら」のファンクラブにも一緒に所属した。



 「きゃーーー!ライオネル様よ!殿下!」

 「フィリペさまぁ!がんばってー!」

 「アレキサンダー様!素敵!」



 お行儀の悪い、ご令嬢方の中で「はねっかえり」と称されるおねぇさま方が、熱い声援を送っているのは、この学園の中でアイドルのように崇拝されているヒーローたちだ。


 記憶の戻ったわたしの感性で言えば・・・。


 俺様王子、腹黒モノクル、天然タラシの同盟国王子


 その他にも、ワンコ魔術師、不思議アーティスト、熱血剣士


 そして思い出したくもないが最後にチャラ騎士



 愛されし(笑)やんごとなき身分の方々だ。


 ちなみに、不思議アーティストであるアドニス・ローリエ様はレイチェルとわたしの所属する派閥のマリアン・ローリエ伯爵令嬢の兄上で次期伯爵様であるので面識がある。


 彼はプラチナに近い金髪とアメジスト色の瞳の憂い顔のイケメンである。

楽器を弾かせれば、魔物すら安らかに眠り、絵を描かせれば描いた花に蝶が止まり歌を歌わせれば地獄の番犬すら眠るといわれる天才である。


 今思えば、恋をするのなら彼にしとけばよかった。


 冒頭に「わたしは恋をしていた」と書いた。


 わたし、ことフローラ・ダフマン子爵令嬢が恋をしていたのは、その憂い顔のイケメンであるアドニス様ではない。


 侯爵家次男であるチャラ騎士フリード・ラズリィ様である。

なんでよりにもよってなぜこの男だったのか。

 まったくもっていまいまいしい。


 2年前に戻ってその時のわたし自身であるフローラを小一時間ほど問い詰めたい。

 まぁ、本当はわたし自身その記憶を持ち合わせているので、わかっている。


 ほんとうに、認めたくはないが。



 学園に入学して最初のオリエーテーションで、周囲のハイスペックな方々に気後れして自信喪失していたわたしに、チャラ騎士が「君、かわうぃぃ~ね」

とやらかしてくれたからである。


 かくして、鳥の雛のインプリンティングのように、チャラ騎士は初心なフローラの心に刷り込まれ、一途に恋慕うようになったのである。


 それがそもそもこうなった元凶になるとも知らずに。


 なぜ面識があって親しみがもてる不思議系アーティストに恋しなかったのか。フローラよ。


 彼はおだやかで、理想の「お兄ちゃん」然としていて憧れるには、そしてかなわない淡い初恋の相手としては最適な相手だったのに。



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