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モブの恋  作者: 相川イナホ
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保育園

「では行ってくる」

レーフェン兄が家臣団とネリーとガスパを連れて王都へでかけた。


「ホワイトランドとの戦争時に恩を売ったあの貴族とあの兵長と実家がアレなあいつに金を無心・・・じゃない融資をお願いしようと思う」

悪い笑顔で言っていたので該当者は、諦めて抵抗せずに兄に協力してほしい。

わがアマゾン領のために!


「ひと狩りいきますか」

私はジルベールを誘って魔物を狩りにいくことにする。


ユリウスは義姉のパトリシアに預けた。

「いっぱい狩ってきてね」

小さいながら、私達の狩ってくる獲物の肉が多くの人を支えているのをよく分かっていて聞き分けてくれる。

最近は、その物分りがよすぎるところがやや心配だ。


ぎゅっと抱きしめると子どもの高い体温が私を包む。

「行ってらっしゃい」

私の肩にまわした手でトントンしてくる。

今日も天使だ。


「今日は何して遊ぶの?」

「えとね。まる入り!、あとねあとねカルタ!」

「そう。仲良く遊ぶのよ」

この世界での男の子の遊びは主に「戦いごっこ」なんだけど私は女の子と男の子が一緒に遊べるように前世の遊びを子供達にいくつか教えて、アマゾン領の子どもの間で大うけだ。


あと、ユリウスのために「保育園」に該当するようなシステムも作った。

これは領民達に感謝された。

ここに子どもを預けているうち大人たちはいろいろな仕事に集中できるからだ。

もちろん預けっぱなしにならないよう利用時間を決めてあるし、若い親にはベテランがアドバイスなどして子育て支援するようにした。


 ただ、家の仕事が出来るようになってくると、だんだんここに来なくなる。

こればかりはいたしかたない。


 本当は読み書き計算を教える学校を作りたいのだけれど、子どもといえども大事な労働力なのだ。領民置き去りの政治はいけない。


 なので、遊び感覚で文字や数字を覚えてもらおうとカルタやトランプもどきを作った。

 早期教育な気がしないでもないが、ここに通っているうちしか機会がないのだから仕方ない。


「今日のメイトさんは、オリバーとベティと・・・」


「保育園」を卒園したような年長の子どもで、小さい子どもの面倒を見る子を「メイトさん」と呼ぶ。

 この子達には「研修」をほどこして、保健や道徳や常識を教えて報酬に1回の食事とおやつ札を渡す。

 このおやつ札が人気でメイトさんは順番待ちになっているくらいだ。

引き換えたおやつを食べずに大事そうに家にもって帰る姿は涙を誘う。

 我慢して家に帰って家族と分け合って食べるのであろう。


 なのでおやつを渡す時には、たまにおまけをする。

「これはおまけよ。あーん」

と言ってその子の口に小さいのや欠けたのを入れてあげるのだ。

 ちなみにその役目はアマゾン家の人の役割だ。


 ・・・・一揆とか起こされたくないしね。


 王国から増援の派遣がなかったのは領主の力がなかったせいとかそう炊きつける奴がいないわけじゃない。

 行き場のない怒りはたやすく出口を求めて暴発することもある。

子どもの頃から領主一族=いい人と思ってもらえれば味方も増える。


 いい話が台無しになってしまった感もあるが、アマゾン家はいい領主だと思う。

ひどい領主はたくさんいる。

 領民を家畜のように扱う、人でなしを領主にもった領民は普通に生活することすら大変であろう。


「ダンは・・・・?」

「保育園を手伝いたいんだそうだ」


 読み書きや一般常識のみならず色んなことに造詣があるダンは、底なしの体力もあって子ども達に大人気だ。

 子どもが疑問に思う事は大抵答えられるし、彼の「高い高い」や「飛行魔法ブーン」は行列ができるほどだ。

 本人も大の子ども好きであり、保父さんのする前かけが最近板についてきたと評判だ。


「二人だとあまり深いところはいけないなぁ」

 私が魔物狩りができる事を領民は知っているので、「フロル」になる必要がない。あの外殻、むれるんだよね。マスクは視野が狭まるし。


「僕にお供させてください!」

「びっくりした・・・」

 最近ふと気が付くとニコルが傍にいる。まだギルドは暇らしい。


「『フロル』にはならないんですね。僕、ファンでした」


 おおう、過去形なのがちょっと気になるけど自分のファンという人間に初めて会った。

 たしかにニコルはギルド職員なので私のプライベートデーターにアクセス出来るから知っていたとしても不思議がない。


「僕の勤めるギルドに英雄が出入りする、僕はその人たちをそっと支援したり補佐したりする。小さい頃からの夢でした。『フロル』も僕のお気に入りの冒険者でしたから」

 なるほど、真面目なニコルらしい。


 このアマゾン領の人々は強い。

 きっとたくさんの強い冒険者が生まれるであろう。


「私がフロルなのはここ以外では内緒で、じゃ仕度してくるから待ってて」


 すぐに部屋を出てしまったため、その言葉は空耳に聞こえた。


「でも、今は・・・フローラ、あなたに夢中です。僕のミューズ」


・・・・・・え?


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