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モブの恋  作者: 相川イナホ
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「分室」ギルド始動

「いい提案があるんだけど」


 ふいに窓の外から声をかけられて、私達はビックリして飛び上がった。

 気配に敏感なネリーが気がつかなかったところを見ると、この青年はよっぽど気配を消すのが上手らしい。


「せっかくギルドを開設したのに、使い方がわからないのか誰もこないんですよ。

 だから自分から来ちゃいました。素材の鑑定とかまかせてくれませんか?今まで売れるかわからずに保管しっぱなしの物、あるんじゃないですか?僕が鑑定して適性な値段をつけますからそれを王都のギルドに納めたらいいんです。そうすれば帰りはいっぱい必要なものを買い物して帰れますよ?」



 たしかに今までは買付にきた商人の言うがまま素材を売っていた。

 こんな辺鄙なところまで来てくれる商人は数が少なく、適性な価格がつけられていたとも思えない。





「ゴブリンの巣?」


 何故魔物の素材が潤沢な地にも関わらず、アマゾン領にはろくに商人が来ないのか。

 聞けば街道沿いの森にゴブリンが巣を作って、大きなコロニーになっていて、荷物を積んだ荷車は恰好の標的になってしまい、数人の徒歩のグループしか安全に街道を通れなくなっているらしい。


 「竜人が腕試しで闘いを挑んでくる?」


 隣領との境の街道の峠にひとりの竜人が現れて、通りかかる腕に覚えのある人間に勝負を挑んでくるらしい。

 すなわち、ゴブリンの襲撃から逃れるために強い人間を護衛につけた場合、その竜人が現れて、勝負を挑んでくるのだという。



「ジルベール?」

 ネリーの笑顔が怖い。


  →ジルベールは逃走に失敗した。


 「それってコイツだと思います。どうもすみませんでした。うちのパーティに入る前のこととはいえご迷惑をおかけいたしまして」


 ネリーに頭をぎゅうぎゅう抑えつけられて、でっかい身体でペコペコおじぎをするドラゴニュート。うんシュールだ。

 「すいませんした!」

 「誠意が足りない!」

 あ、ネリーにどつかれました。・・・この世界では種族的にめちゃくちゃ強いはずなんだけど。

 ドラゴニュートのジルベール、ネリーに簡単に敗北。


 100人斬りだか1000人斬りだか、命まではとってはいないようだがジルベールは何かの願かけで街道を通る強い人間に勝負を挑んでいたらしいが、ネリーに負けていまは「赤の牙団」の使いっ走りだ。


 まったく、どこの弁慶だよ。


「街道沿いにあったゴブリンのコロニーなら、もう討伐済みですよ?」

話を変えたいのか、自分が参加していないのに成果をひけらかすジルベール。

ネリーに睨まれ、語尾が小声になってますが。


 「まったく!そういう事はギルドを通してくれないと困るんだよなぁ」

ニコルがギルド規定集をヒラヒラとさせた。


 「ハイグリーンのギルマスに報告させてもらいますね!というか、王都までの護衛の依頼!ちゃんと出してくださいよ。領主自らお手本を示さないと。いい機会ですから!」



 ニコルの要求に答えて、依頼書は兄が書き上げ、家臣達は領民に冒険者ギルドが出来た事を知らせ、死蔵している魔物の素材があれば持ってくるように伝えてまわる。


 あっという間に、「冒険者ギルドアマゾン分室」の前に素材が積みあがる。



 高速で仕分けしていくニコル。


 ・・・・あまりの速さに残像が見えるようだ・・・。


 「よっぽどお仕事が好きなのねぇ」

 のんびりとそう言うパトリシア義姉上。


 ニコルを見ているだけで目がまわりそうだ。まったく。



 「まず、素材を王都のギルドに納めて現金化してきてください。

そして領内で不足しているものをこのリストに基ずいて買ってきてください。

いいですか?王都で買うのはこれだけですよ。他のものは他所で買った方が安くつきますからね。で、残った現金は素材提供者に支払います。もちろん手数料としてご領主の手元にこれだけは先に残しておいてくださいよ。」


 わかったけど、少し息継ぎしてしゃべろうか?ニコル。


 ニコルの指示でどんどん計画が進み、私達は彼の指示通り右往左往しつつも動くだけだ。


 あれ?内政、私がやるんじゃなかったっけ?


「王都で買った品物は、こちらへ戻ってきたら領民に販売します。

最初は、魔物素材を提供したことによって手元に渡ったお金で、領民達は買い物をします。

お金は使ったらなくなる。さて、そうなったらどうすると思いますか?」


「・・・・・ギルドへ魔物素材を納める?」


「よく出来ました!、アマゾン領内では物々交換が主でしたからね。まずはお金を使う事を覚えてもらいます。次はお金を稼ぐ事を覚えてもらいます。」


 ニコルは商才があるんじゃないだろうか?


「そうすればギルドの使い方を自然に覚えていきますよ!僕の仕事も増える!」


・・・考えがギルドのお仕事中心である。なんか間違っている。惜しい。


「パトリシア様は炊き出しの際に文字を教えてください。そうすればみんなが依頼書を読めるようになる!」


 どこまでもギルドのお仕事中心なニコルだった。


 まぁ、使えるものは使うさ、と兄上が黒い笑顔で言っていたので無問題か。



「私も魔物討伐班に代わるかな」

 そんな班はないけど、私がポツリというと、ダンが表情のない顔で私を見て言った。


 「まだ、借金の計算が残っているけど?」


  NAISEIへの道は遠い。


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