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モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
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ゴーレム

 ゴーレムは警戒するわたし達の数メートル先で止まると暫く動きを止めていた。

 やがてチカチカとその身体が光ったと思うと音声が流れてきた。


 「※’?v4※{{*?」

 「&@_|@‘*?」

 「$#$”$%”&?」

 「・・・・・>??」


 系統の違うと思われる言語数種類で話しかけられたようだ。

 だが、残念ながら理解できない。


 


 「なんだ?襲ってこないのか?」


 フリードが私に問いかけるとゴーレムはその音を拾ったようで繰り返す。


 『「ナンダ?オソッテコナイノカ?」』


 次に赤い光が目の前のゴーレムから私達に向かって照射される。


 フリードが警戒して私を庇うように私の前に出る。


 赤い光は私達の足元から頭の先までなぞるように動いていく。


 「何ともない?これは攻撃ではないのか?」

 「探られている?」


 よく観察すると目の前のゴーレムの腹のあたりにカメラのレンズみたいなものもついている。


 「ゴーレムじゃなくてまるでロボット…」


 私の呟きを再び拾ってゴーレムは繰り返す。


 『「$7@#ロボット…」』


 そして再び動きを止めていたが、突然流暢に話しかけてきた。


 「騎士と冒険者の方ですか?。この通路は危険なので避難誘導しますのでついて来てください」


 あまりの事に私達は顔を見合わせた。

 

 「私の話す言葉は通じていますか?通じていたら一回、頷いてください。」


 ゴーレムからは落ち着いた男性の声が流れている。

 私達は顔を見合わせて、それから頷いた。


「ここの通路は、修理が終わるまで閉鎖されます。他に迷い込んできた方はいませんか?」


「…いない」


「この先にここの責任者がいます。そこまでわたしがご案内します。」

 

 ロボットというかゴーレムというか、無機質なボディから流暢な言葉が流れてくるのが不思議で仕方ない。

 一体どうなっているというのだろう。


 ためらっていると、その話す個体の後ろから同じようなゴーレムが何体も現れて、私達の横をすり抜けていく。


 「彼らの事ですか?ご心配なく。この通路の保全員ですから」


 「ココハアブナイ。ハヤクイッテ」


 保全員だというゴーレムのひとつが振り返って、私達に声をかけていく。

 その言葉はどこかたどたどしく、流暢に話せるのは目の前にいる最初の一体だけのようだ。


 とりあえず、襲ってくるような気配もないので、私達はゴーレムの後ろをついていく。


 「ここは遺跡ではないのか?」


 ゴーレムの言葉を信じるとしたら、この通路を管理している存在がいて、しかもそれは私達の知らない高度な知識と技術を持っているという事になる。


 「まぁ、その話はおいおい…」


 見てくれに反して、ゴーレムは妙に人間臭い言葉づかいをする。


 「仲間と一緒だったのだが、逸れてしまった。ついていっても合流できるだろうか?」

 「ゴブリンに女性が浚われたの。早く助けにいかないと」


 目の前で起こっている事態も、目の前のゴーレムも受け入れがたい事だが、それよりも私達には優先しなくてはならない事がある。


 「まぁ、その話はおいおいと…。とは言ってもご心配でしょうから結論だけ申し上げます。

オールオッケーです。ご心配するような事はありませんよ。そちらの方は別要員が対応しています」


 やがて、いくつかの扉をくぐり、(ゴーレムが入口でタッチパネルを操作して開閉していた)

 なんだか地下にあるとは思えないほどの天井の高くて明るい場所に出た。



 「ここは…一体」


 フリードが驚いている。


 私達の目の前に広がるのは3Dパネルやよくわからない研究用の実験道具や装置で埋め尽くされている広い部屋だった。


 …私の前世の知識にあるラボがそこには展開されていた。


「やぁ」

「ようこそ。」

「はーい」


 急にそのラボ的な部屋のあちこちから声をかけられて私達は戸惑った。


 幽霊のように身体の透けているそれらの声をかけてきた人達は、白衣を着ていたり作業着を着ていたり、つまりこの世界の人とは、まったく異質な姿だった。


 身体が透けているだけでも十分異質なのだけれど。

 中世的な文明の明らかに今の時代の物ではない光景に私達は声を失った。


 「透けている?」


 「うん。まぁ彼らはホログラムだからね。プログラムされた動作しかできないんだけど。どうだい?びっくりしたかい?お嬢さん」


 「ホログラム?」


 聞きなれない言葉にフリードが首を傾げる。


 「本人達はすでに死んでしまっているからね。ここでは私が最後の遺物となるかな。もっとも私の本体もとうの昔に寿命を終えているから、正しく言えば、私も生きているとは言えないんだけどね」


 ホログラムとして映し出された人々は、前世の私の記憶にもあるようなさまざまな年齢、人種からなる人達で、彼らの姿がなければ、このラボの無機質ぶりが際立つだろう。


 「…あまり驚いていないようだね。君達を、いえ君をこのラボに招待したのは取引に応じてもらいたいからなんだけど。どうだい?」


 「取引?」


 「そう、君はさっきタッチパネルを躊躇わずに操作していたね。と、言う事は、こちら側がして欲しい動作が出来ると思うんだ」


 ゴーレムは、ホログラムの人間の間を縫うように進んでいく。

 やがて、大きな水槽の前にたどり着くとそこで止まった。

 水槽の中には紫の長い髪をした青年が複数の管に繋がれまるで眠っているかのように揺蕩っていた。


 「これがわたしの復元した身体さ。どうだい?なかなかのイケメンだろ?そこの彼氏には負けそうだけど」


 私とフリードの視線は交互に水槽の中身とゴーレムを見比べる。

 

「出入り口のパネルを操作するのとは違って、わたしをこの身体にインストールするための操作には、この身体のこの手じゃ不適当でさ。だいたい思わないよね?復元体に問題があって、解決する間だけちょっと仮にゴーレムに避難させていたら、本体が突然死しちゃうとかさ」


 前世からいったらまるで中世のような世の中に私は転生したと思っていたんだけど、なんだろ?この未来チックな光景は。


 

 








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