アーティファクト?
「まず。ここから出ないと」
天井を見上げる。
落ちてきた穴は崩れた土砂でふさがっており、今もパラパラ土砂が落ちてきていて登るのには不適当。
第一、騎竜がはばたいたり助走つけたりする広さがない。
それより二人してゴロゴロ転がっている内に気が付いていたのだが、ここ人工物っぽい。
「ここ地下通路…だよね?」
「遺跡の通路だろうか?」
「わかっている遺跡の範囲より実際は範囲が広いってことか」
「…北東にのびている。ゴブリン達の進行方向と一緒…」
無理に上にあがるか。
その場合騎竜を引き上げるのに人手が欲しくなる。
こんな時に騎竜の心配をするべきではないのかもしれないが、時間をおけば、魔力を満タンまで貯めて、力技で天井にそれなりの穴を開けてスムーズに脱出することが出来ると思う。
「…心配だが、殿下もジェイもいるし、クリストフもいる。それに森の中よりここの方が走りやすそうだ。ここを騎竜で走れば速度が出る」
気配を探っても魔物の気配はなく気のせいか空気も清浄だ。
濃い魔力には閉口するが、見方を変えれば、ここを通る方が魔力の回復も早いはず。
「こっちへ進んでみよう」
魔力酔いでややふらつく私を騎竜の背に押し上げ、フリードが竜のたずなを握った。
「さ、追いつくぞ」
騎竜も何だかやる気を見せていて気合の雄叫びをあげる。
グェェェェ!
地下通路内にその声は殷々と響く。
障害物のない地面に、私達を乗せた竜が飛ぶように走る。
暗かったのは私達が落ちた周囲だけのようで、暫く進むと灯りの光源など必要がない不思議な光が通路を照らしていた。
「ここはもう、完全に遺跡の中なのだな」
私としては床にずっとレールのように敷かれたレールのようなものが見えるのが気になる。
「トロッコか何かを通したのか?」
フリードも興味深げに、そのレールのようなものを見ている。
レールにしては平坦で、金の車輪を噛み合わせる溝もない。
それは何というか近未来的な何かを彷彿とさせる。
やがて私達は行き止まりまでたどり着く。
「くっそ。なんだこの透明な壁は」
どうみても強化ガラス的な何かでした。
壁の向こうにも同じような二本のレールのような線が続いているのが見える。
「どいてろ、フローラ」
フリードが剣を抜き、透明な壁に向かってふりかぶった。
「まって。こういう時には、周囲に何かしらのしかけがあるものなの」
ダンジョンの攻略をしていると、このようなアーティファクトのようなしかけにあたる事がある。
私もつい前世の記憶から、スイッチはどこかしら…とか思ってしまうので、念を入れて周囲を調べる。
だいたいスイッチすらこの世界ではないものなのに、どうみても照明をつけるためのスイッチっぽいものがあったりボタンがあったり、ダンジョンは不思議なところだ。
この遺跡も半ばダンジョン化しているのかもしれない。
「わ!なんだ!」
フリードが驚く。
見れば、フリードが探った壁のあたりに何かが浮かび上がる。
まるで何かの端末のようだ。
私の中にあるスマフォとかタッチパネルとかいう記憶のものと似ていた。
タッチパネルを操作する要領で画面を変えていくと
壁が扉となって開き私達を通した。
「……」
注意しつつ、周囲の気配に気を配りつつも前に進む。
すると前から小さな点のような光が音もなく近づいてきた。
そしてそれは私達の前に姿を現す。
それはセグウェイっぽい物に乗ったゴーレムだった。