可笑しければ笑え!
笑うしかない。
何そのメロドラマのようなすれ違い。
乾いた笑いが浮かぶ。
誰なの?
お互いの言伝や手紙を握り潰してくれたのは。
「私の分だけ?届かなかったのは?」
「他の人のは届いたり、届かなかったり、学園やパーティー経由で、友人やツテでやり取りしていたから」
私は、二人の関係をおおっぴらにして、衆目の場でひけらかすようなマネが出来なかった。
そのため、極めて正攻法な手紙の出し方をしていた。
「他のファンレターと一緒に処分されていたって事?」
フリードは、たくさんのファンレターをもらっていたはずだ。
それらの処分と一緒にされた?
「いや、使用人は主人側の指示がなければそんな事はしないはずだ。考えられるのは…」
フリードの眉間に皺が寄る。
「考えられるのは身内だ…。まさかそんな事までされているとは思いたくなかったが」
フリードの兄弟仲はよろしくない。
幼少の頃は、上下の兄弟で結託してフリードを閉じ込めるなどの兄弟喧嘩としては陰湿な苛めをしていたみたいだしね。
「そもそも『学園にかわいい子がいる』って先にお前に興味を持ったのが兄だったんだ」
…それは何とも、複雑な気持ちになる。
「横から俺にかっさわれて、相当頭にきたんだろうな」
ふふふっとフリードは笑う。
…黒フリードがかいま見えました。
「私はお兄様へ意趣返しするための存在?」
「そんな事…きっかけのひとつじゃないか。拗ねないで。」
フリードは自分の手で私の手を包んで弄んだ。
「どんな出会い方をしたって、俺は…」
向い合せになるよう手を引かれ、いきなり噛みつくようなキスをされた。
こんな事してる場合じゃないのに。
というか、ララリィ嬢の事はいいの?
身体に力が入らない。ふわふわと思考が宙に浮く。
「…君と恋に落ちるよ」
唇が離れると、そう囁かれた。
視線と視線が絡み合い、何も考えられなくなる。
「フローラ、心配かけてごめん。苦労をいっぱいかけてごめん。俺、どうかしてたみたいだ」
思考停止状態のところを再び、フリードの顔が近づいてきたと思ったらまた唇が重なっていた。
ちゅっちゅっ というリップ音が響く。
「ここから帰ったら、3人で暮らそう。俺とお前と…俺達の子どもと。…びっくりしたよ俺にそっくり」
「ユリウスよ」
「うん。ユリウスと。」
これは夢?
私の願望が見せている夢?
フリードは今度は額と額をコツンとくっつけて甘い声で囁いてきた。
「フローラ、今までの埋め合わせをさせて?」
ずるい人。
そんな風に言われたら赦すしかないじゃない。
ずっとあなたを待ってた。
ずっとあなたとこうしたかった。
寂しかった。
辛かった。
哀しかった。
涙があとからあとから溢れてきて頬を伝って落ちる。
「好きだ。…フローラ。愛してる」
私が一番欲しかった言葉。
この人からしか欲しくない。
他のどんな人から言われても、心がこんなに震えない。
「フリード…さま」
「本当、ごめんな…もう不安にさせないから」
気のせいかバックミュージックが聞こえる。
ボーカルがロマンスが止まらないだとかロマンティックを止めてとか歌っている。
さらに頭の中ではもう一人の私が冷静に突っ込んでいた。
「そんな場合じゃないんじゃない?」
「まるでチョロインじゃない?ちょろすぎでしょ」




