表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
122/132

遭遇

  戦闘場所に近づくと剣の交わる金属音と怒声や人のものではない事が確実な声が聞こえる。


  私は走りながらも弓を取りだすと矢をつがえて加勢に入った。


 動きながら狙いを定めるのは難しいが、そこは魔法というファンタジー要素の出番だ。

 うっかりとでも、味方に怪我をさせないように、乱戦気味な現場じゃなく周囲からフリード達を狙っている魔物を倒していく。

相手の魔物側が、飛び道具を持ち合わせていないようで助かる。


現状を見ると、王子達は気が付かない内に魔物達に誘導されて、待ち構えていた群れの前に飛び込んでしまったようだ。

フリード達があわや、のところで、取り囲まれ退路を断たれる寸前で王子達と合流した所のよう。


 ララリィ嬢は例の美男の侍従に庇われる形で群れとは逆方向へじりじりと逃げだそうとしている。

 王子はララリィ嬢を守るように魔物の群れに対峙して戦っていて、フリードやジェイなどは王子達を挟み撃ちにしようと両側から機会を狙っていた左右の群れと戦っている。


 ジェイ・パットンは両手に剣を構え、フリードは片手で剣を振り回して、あと素手で飛びかかってくるゴブリンなどを殴ったり足をかけたりして裁いている。

 騎士の中では足の遅いアレンは途中で私達に追い抜かれたが、根性で追いついたようだ。

だが息が絶え絶えで…たいして役にはたたない。

 ターメリックが、こりゃ危ないと判断したと見えて、アレンにくっついて戦いはじめた。


 クリストフは広範囲魔法であとからあとから湧いてくる魔物の集団に向かって攻撃をしかけている。


 「きゃぁぁ!!ライオネル!」


 魔物の血か、あるいは疲労からか…王子が足をすべらせてバランスを崩した。

 ララリィ嬢の悲鳴に気がついて私は王子に向かって錆びた剣をふりかざしたオークの眉間に矢をお見舞いしてやった。


 「あ、ありがとうございます!」


 ララリィ嬢が私達の存在に気が付いて礼を言ってきた。


 お礼とかいいから逃げて。

 そんな場合じゃないから。


 「来てくれると…信じていました。銀の騎士様」


 へ?


 なんだって?


 思わず矢を射る手が止まりそうになったけど、思いとどまって矢を射るのに専念する。


タイミングと前後の状況から言って、今のは私に言った気がする。


銀の騎士って何?

騎士じゃあないし、格好も冒険者だし。

そもそも、この服装はレンジャーとか軍服に近いんだけど。

 意味わからない。


あ、髪?もしかして髪の色から?

貴族の中では、ちょっと助けに入ると、そういう通り名みたいなのをつけられるのが、昨今の流行なの?

社交界に縁がなくなって時間もたったからなぁ。

嫌な流れだなぁ。

ひっそり生きたいのに、目立ちそう。


矢が無くなったのでチラリとクリストフを見る。


 どうやら彼は炎系の魔法を使っているようだ。

 相殺するような属性でなければ私も魔法をつかっても大丈夫なはずだ。


 「いけぇ『灼熱の矢』」


 魔力で産み出した高熱の固まりを矢に見立てて放つ。


 矢はクリストフが生み出した炎の渦の中を通過するとその炎をその身にまつわりつかせたまま、後ろから前の方へ今まさになだれ込もうとしていたオークたちの群れに飛び込んだ。


 プギャギャァー!


 何匹かのオークの身体を貫通するとともに、クリストフの魔法の炎を吸い寄せるように纏わりつかせオークたちの群れに飛び込んで肉をその高熱で焼く。

 矢継ぎ早に同じような魔法の矢を撃ち込む。


 よし、随分間引いたぞ。


 左右に伏せていた群れを切り捨てて、フリードとジェイが王子に合流した。

 アレンの息もようやく整ったとみえ、3人の騎士達が止めを刺しそこなった残りをターメリックと共に始末していく。


よし、流れは完全に、こちら側になった。

 

 そう考えて一瞬気を緩めたのは私だけではなかった。


 「きゃぁぁぁぁ!]

 [ララリィ!」


 悲鳴と王子の叫び声にそちらの方角を見れば、蔦に絡みとられて宙吊りになっているララリィ侯爵令嬢の姿が。


 今度は植物系の魔物か!!?


 単純にそう勘違いしてしまったのは、以前に彼女が植物の魔物の触手のような蔦に絡め取られてしまった事故を聞いた記憶があったからだ。

 だけど違う、ララリィ侯爵令嬢を絡め取る蔦を目で追って視線を上に向ければ、木の上で複数のゴブリンが、蔦を引き上げているのが見えた。


 「チッ!罠か!姑息な」

 「「ララリィ!」」


 王子を含めた複数の男性の声がかけられる。

 うーん、王子がいるのに呼び捨てでいいのか?…

 というか、二重の罠だとかここの魔物は悪知恵がずいぶんまわるようだ。

 と、そんな事考えている場合と違った!


 王子も他の人も、ゴブリンやオークと切り結んでおり、彼女の元にはすぐには駆けつけられない。

 離れたところで魔法を打っていた私かクリストフしか対応できない。


 あの侍従はどうした?と探すと、頭から血を流して倒れているのが見えた。

 上から殴られたのだろう。

 

 「ラ…ラリ…ィ」

 

 まるでドラマのようにララリィ嬢に向かって手を伸ばし…力尽きたように動かなくなった。

 そしてゴブリン達はあれよあれよと枝の上に蔦でぐるぐる巻きにしたララリィ嬢を引き上げると担ぎ上げて今度は逃げ出した。


 「チィィッ!」


 思わず舌打ちが出てしまった。

 関わり合いになりたくないのに!

 今更かもしれないけど。


 「来い!」


 私は竜の背に飛び乗り、枝から枝へララリィを抱えたまま飛び移って逃げるゴブリンを追った。

 

 「くそっ!邪魔するな!」


 背後でクリストフの焦る声が聞こえた。

 やばい、追いかけているのは私ひとり?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ