表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
118/132

裸のつきあい



 最悪ともいえないが、進んで加わりたくないメンバーだ。


 何故私がこのメンバーの中にいるのかとため息をつく。


 ジェイ・パットンは学園時代に友人を通じて少しだけ関わりがあったが顔見知り程度。


 フリードは元彼。


 クリストフとは…関わりらしい関わりが今まではなかった。


 アレンは、まぁ今回はじめて顔を合わせた。

 ララリィ嬢の周囲をうろちょろしているのは見かけている。


 そろいもそろって王子とララリィ嬢の取り巻きである。

 頭が痛い。

 この場に王子とララリィ嬢本人がいないのが救いといえば救いなのだが、

問題はこのメンバーで王子とララリィ嬢を捜索という流れに私も巻き込まれそうな事だ。


 「では、本隊と合流し皆の無事を伝えて、私は他の行方不明者の捜索に加わります」


 さっさと逃げだそうと図ったのだが、フリードに阻まれた。


 「一人で行動するな。この森はそんなに甘い場所じゃないのだろう?」


 こんな時に騎士道精神を発揮してほしくなかった。

 発揮するなら、あの時にしてほしかった。


 冒険者フロルは逃走に失敗した!



 一人でダメなら救援を呼ぶまでだ。



 冒険者フロルは仲間を呼んでいる!



 …つい現実逃避気味に某RPGのようなテロップを頭の中で流す。


 だってねぇ?


 無駄にキラキラしたこの色男共の集団はなんなんだよ!


 目がつぶれるわ…



 いらない。いらないわ。

 魔の森でドレスを着ているのと同じ程度に無駄な顔面の偏差値。

 クリストフのセリフにムカっとしたから引きあいに出してやる。

 最初の印象は「割と公平な人」だったんだけどな。


 顔面偏差値より戦闘偏差値ですよ。



 と、現実逃避はここまで。

 出来る事をしてしまおう。


 私は空に向けてファイヤーボールを打ち上げた。

 間隔をあけて3回。


 逃走を諦めず、救難信号を送る。


 「赤の牙団」ならおそらく無事なはず、様子を見にきてくれるはずだ。




 「魔力回復薬を持っていないか?」


 言われて持ち合わせからいくつかをクリストフにわける。


 「薬に頼りすぎると魔力酔いがひどくなりませんか?」

 「これがある。」


 クリストフが指輪を見せた。

 なんだろう、ミスリル製のようだけど。


 「魔道具だ。外と内の魔力をなじませてくれる」


 なるほど。

 さすが王国の騎士。

 いい道具を持たされてる。


 うらやましくなんか…あるけどね。

 なるほど、それがあるのでバンバン魔法を使って回復薬を飲みきってしまうほど使ったのか。


 それまで見ないようにしていたので気がつかなかったが彼の腕の内側から出血しているようだ。

 良く見るといたるところから出血している。

 ヒルに噛まれたんだろうね。


 うん、まぁ魔術師の恰好って森のような場所を歩くのに向いていないよね。

 騎士の恰好がむいているかと言われればそれも違うけれど。






 突然フリードが剣を抜いて足元の何かを切り捨てた。


 え?ここ安全地帯じゃないの?



 …足元、ヒルが潜んでいるみたいでした。

 ある意味、二次被害二次遭難になるところでした。



 「なぎ払え!」


 引き続き現実逃避でネタに走ります。

 いやいや、本当、救助に向かった先がヒルの巣とか勘弁してほしい。



 結構な広範囲を炎の魔法で焼いて地面に潜むヒルを退治する。

 私のブーツの中とか入ってないよね?

 一応、山ヒルが出たと聞いてから防御の魔法をかけているけど。


 するとなるほど、一晩中雨と山ヒル対策でクリストフは魔力も回復薬も使いきったのか。


 「ちっ!靴の中に!」



 え、やだ靴の中に入ってるの?


 焼き払って作った安全地帯を火傷しない程度に冷やしたところで他のメンバーも逃げ込んできた。 



 半裸の集団の中に入ってしまったが、恥ずかしがっている場合じゃない。

 私もブーツを脱ぎ足を確認する。


 首筋、腕まわり、うん大丈夫。違和感もない。

 足、おなか…まいったな背中が確認できない。


 皆自分の服や装備の隙間にヒルが隠れていないかあぶりだすのに夢中で私の方に注意を向けていないようだ。


 隠れる場所もないので諦めるしかない。


 私は思い切って服を脱ぎ、手で背中をまさぐった。

 うーんわからない。


 ウォーターボールを作り出し熱すると装備も服もいっしょに放り込んだ。

 ヒルがいても熱で死ぬだろう。

 こっち見んなとオーラを発しつつ裸になる。

 それなのに一人だけこちらを見ている気配がする。


 「こら…何をしている」


  フリードだった。

 

  気がつくなよ。


 って無理ないか。

 そりゃぁ気が付くよね。



 他のメンバーは私が脱いでいても気が付かないフリして顔をそむけていたのに。

 さすが紳士の集団。騎士様だよね。


 薬草を取り出すともう一つウォーターボールを作りだし中に入る。

 ヒルが嫌がるという成分の入った薬草だ。

 まぁ効果は気休め程度らしいんだけど。


 背中にフリードの視線を感じる。

 見るなよ。


 熱湯で殺ヒルした服や装備も薬草汁の中に漬け、びしょ濡れのまま身につけた。


 身体を覆う事ができてはじめて振り返ってうしろのフリードを見た。


 「ヒルが嫌がると言われる成分の入った薬草湯です。傷薬もブレンドしてありますから、噛まれたところの血止めが出来ます。うしろを見てますからどうぞ」


 そういうとくるりと後ろをむけ、地面を確認してから腰をおろした。


 うーん二つもウォーターボールを作って留めているから魔力がすごい勢いで減っていく。


 「早めにお願いします」


 背後で幾度か水音がするのを聞きつつ、ポーチから果物と飴を取り出した。

 早くこの集団から別れたい。

 そう念じつつ、とりあえず、気力だけでも、食べることで回復することにした。


 まったくこの面子の中で裸になるなどと、ごりごりと何かを削られた気分だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ