対決ーすれ違うふたりー 4
読んで気分を悪くされたらすみません
罵倒するシーンが出てきます
そうですか。そうですか。
あくまで、私とのことは気まぐれで、お互い遊びだったって事わかってくれていたと思っていたよというスタンスですか。
処女が珍しかっただけ、子どもを産んだと聞いたから最低限の誠意ってやつを施してくださるんですね!
本当に最低。
この人と間違っても結婚して所帯とか持たなくて良かったわ。
本気で恋をしていると思っていた私がバカだったのね!
私は失意を通り越してやさぐれていた。
結局、侯爵家でユリウスの存在を認知し、フリードは自分に継げれる財産があれば、それをユリウスに優先的に継がせると約束した。
財産とかいらないのに。
冒険者でけっこう稼いでいるから。
でも、ユリウスにくれるというなら、それもまぁ是だろう。
だけど、その約束は本当に守られるのかね?
自分は家庭をもたないつもりなのだろうか。
ララリィ嬢に夢中な今はそうかもしれないけど。
政略結婚でもして新たに子どもが生まれたら、婚前前に成人前の小娘に手をつけて産ませたユリウスに優先的に財産を渡すとか言ったら、奥さんとその間に生まれるだろう子どもが黙っていないんじゃないですかね。
これについては期待しないでおく。
それと、ユリウスの王都の学校の入学の際や社交デビューすることがあれば、もちろん自分が保護者として責任をもつとの事で、これだけは助かる。
だが、最後のあの一言はいただけない。
「君にもいい相手を紹介しようか。ユリウスが成人してからだけど。まぁ初婚者は無理だろうけどね」
大きなお世話だし、そもそもお前が傷もんにしたんだろうがって所ですよね。
皮肉な笑みを浮かべて言う事じゃないよね。
そもそも捨てたのってあなただし!
馬鹿にしないで欲しい。
その気になれば、彼氏の一人や二人、いやいや二股禁止!彼氏は一人でいいけど!
今は冒険者活動と子育てとNAISEIが忙しくて時間ないけど、捨てられた元彼にそんな心配されたくはない!
そもそも独身でも別に引け目に思わないし!
ユリウス最高にカワイイし!
と、いう訳でやさぐれているのだ。
沼ワニ!沼ワニはいないのか!
ソルドレイン領には、沼ワニは生息していないようで、八つ当たりでフルボッコ
できる相手がいない。
それなのに、何のめぐりあわせか、今回の一件でフリードと一緒に行動しなくてはならない事が多く、
「押さえて、押えて、公私混同はだめ、プライベートと仕事は分ける」
を呪文のように唱えなければならないはめに陥った。
誰のせいだ!
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学園を途中で退学している彼女には正直に言うと期待していなかった。
付き合っていた時は年下な事もあり、俺にすべてを委ねていてくれたから、俺が何でも仕切って決めていた。
こっちに住んでから、彼女の兄の仕事を手伝っていたのだろう。
打てば響くような反応、物事の処理の速さや正確さには舌を巻いた。
行動力も早くて、彼女は騎竜と共に何処にでも即断で行った。
アマゾン領からの家臣団からは信頼も篤く、ソルドレイン領でもそれなりの心酔者がいるようだ。
特に応援部隊としてアマゾン領からかけつけた普段はユリウス付きだという5人の青年達の目つきが気にいらない。
崇めるような、憧れるような青臭い感情が漏れ出てきて気にいらない。
書類を受け取る時に彼女の手が触れただけで頬を染め、瞳を潤ませる姿にイラっとくる。
時々、これは庭で摘んだのですがとか、市場で見かけて綺麗だったのでとか言って小さな花束を渡しているのにもイラつく。
他に気にいらないのは 彼女は忙しい仕事の中でも、令嬢らしからず料理をするのだが、たまにお菓子を作って彼らや身近な人にお茶と一緒に差し入れるのだが、そのタイミングが見事なまでに心憎い。
俺が苦手とするアマゾン領主のレーフェン殿も、彼女のもたらすティータイムでその厳しい表情を緩め機嫌が良くなるほどだ。
兄妹仲いい事だ。
俺の兄弟仲は最悪なので妬ましくつい嫌味を言ってしまった。
「二人きり、いえ嫁いでいて無事な方も一人いらっしゃいますが、残されたご兄弟ですから」
俺の嫌味に彼女は黙っていたが、ペンネとか言うレーフェンの部下がこっそりと俺に教えてくれた。
「あなたが悪いと言っている訳ではありませんが」
と前置きしてその部下は言った。
ジェイにも言われていた事だが、ホワイトランドとの戦争中に、ここソルドレインや隣のアマゾン領は魔物の氾濫に対する対処が遅れて壊滅的な被害が出た所だ。
彼女の両親や兄弟や幼馴染の殆どは死んでしまったのだと。
特に彼女の家族は、城と共に殉じて亡くなったと聞いて後悔した。
俺は今の彼女の事をちゃんと知らない。
俺が知っていたのは学園で、迷惑な相手に言い寄られ、困惑していた幼い少女だけだ。
世の中の嫌な事やままならない事など知らないような令嬢のままだと思っていた。
「ご注意を願います。あなたの言動は全ての者に見られているのです」
ペンネというその男は更にそう言った。
それは警告だった。
ジェイにも言われたが、俺にはピンと来ていなかった気がする。
ただララリィの手を当然のようにとるライオネル王子がうらやましくて妬ましくて。
俺はライオネル王子の側近なのに。
俺達のそんな様子を面白くなく思っている者達がいることを俺は忘れていた。
「お館様が調べていますが、騎士団とて一枚岩ではないですよね?
まだ『契約』で行動する冒険者達の方が単純で扱い易いんですよ」
それは騎士団の中に裏切り者が潜んでいるという指摘でもあった。
「そんなバカな…」
思い出して騎士団のメンバーを思い浮かべる。
剣士のジェイを含め、今回の遠征には王子の将来側近となる人物ばかり、つまりは関係者ばかりが集まっている。
その部下を含め、ララリィの事ではお互い牽制し合ったりもするが、足を引っ張ったりする事はないはずだ。
そう考えて、ふと違う考えが浮かぶ。
魔術師のクリストフも俺も、冒険者グループでさえもララリィ嬢のお気に入りばかりだ。
お気に入り?ライオネルの関係者ばかりではなくて?
俺の中で何かが警笛を鳴らしている気がした。