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モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
104/132

対決ーすれ違うふたりー 3

ーーーーーーーで視点が変わります

 フリードには誠意という概念がないのか。

 今まで別れた女に刺されなかったのが奇跡ではないだろうか。


 大方、実家の侯爵家の方でこっそり後始末でもしていたのだろう。

 醜聞で侯爵家の評判が地に落ちる事を気にしたのかもしれない。

 高位の貴族家にはよくある事だろうが、こんな風に傲慢な態度を取られるのは悔しい。


 どうやら、前世の記憶に影響を受けすぎていたのかもしれない。


 フリードの実家はラズリィ侯爵家王国に2家ある侯爵家のひとつだ。

 今は公爵位が空位のため実質王国のナンバー2とかナンバー3の家柄になる。


 対して、我が家は、兄が昇進して男爵家になったが、侯爵家とは身分に開きがありすぎるし、私が養女になったダフマン家も子爵位だ。


 私の相手としてはせいぜいが良い所同じ男爵位か背伸びをして子爵位の家柄が相応しい。

 侯爵位の彼らからしたら私は「相手をしてもらったのを名誉と思え」なのかもしれない。


 つまり、目の前のこの男からすると、私の言い分は「話しを聞いてやっただけでもありがたいと思え」程度なのだろう。


 それゆえの傲慢な申し出だ。


 なんと自分の見る目がなかったのだろうと、私はここ暫くぶりに激しく過去の自分に文句をつけたくなった。


 「…あなた様は、自分の血を受けた幼子に、どんな保護を与えてくださいますか」


 質問に質問で返してやる。


 あくまであちらが主導権を持つのだ。

 私の言い分はあくまでも「聞いてやる」程度。


 この男に「フリード様」とハートをつけ、呼びかけ頬を染めていた過去の自分を殴り飛ばしたい。




――――――――――――――――――――――――――――――――



 過去の女達と同じだ。


 俺と別れたあと、家柄はともかく、俺よりも優良物件を捕まえ、俺を悔しがらせようとする稚拙な考えか。


 女は自分に対する賠償については口にしなかった。


 実家はすごいが家を継げず、兄弟どころか父親とも疎遠な俺は、実は不安定な位置にいる。

 ライオネル王子の側近として仕えている内はまだ俺の価値は実家にはあるが、兄は第一王子派だ。侯爵家にとって、第一王子と第二王子、どちらが王位を継いでも影響がないような体勢だ。


 そして俺の容姿は父に似ていない。

 明らかに父の種である弟と違って、俺は他の爵位持ちにとって婿に迎えるには、地雷にもなり得る存在だ。


 つまり爵位をつげない俺は第二王子のライオネルが失脚などしたら一気に落ちぶれる。


 過去の女達もそれはわかっていて、俺とは最初から恋愛ゲームの相手としてのみ意識していた。

 俺も誘われるままに色気を出していたので悪いのだが、いつの間にか馴染みの恋人は去っていて、俺の知らない内に爵位持ちや裕福な商人と結婚していたりする。


 だから、関係も自然消滅が多くもめた事がない。


 だが、社交の場で彼女達に再会した時などに意識させられるのだ。

 俺はライオネル王子の側近の侯爵子息などと持ち上げられているが、事実は何も持っていない男なのだと。


 地位も、欲しい女も、親の愛情さえも。


 かつて、睦言を囁きあった女が、他の男に手をとられて、俺を知らない風な態度をとるたびに。


 あれはゲームなのだと。

 あれは遊びだったのだと。


 俺は…。


 ララリィ、もう一度俺に囁いてくれ


 「本当のあなたを私は知っているわ。大丈夫よ。私はあなたの味方だから」と。




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