逃れられない対決
上手にキリな所できれませんでしたので、本日もう一話あげさせていただきます
「侯爵令嬢様はともかく、今は冒険者達がいきり立っているのを抑えるのが先だろう。何しろこちらが約束を守っていないのだからな」
食糧をこちら側が用意するという約束を違えている現在、やはり手当は一人のおひめさまではなく荒くれたちへの対処が優先だ。
兄はそう言ってフリードをたしなめた。
「ガスパ殿とネリー殿ならうまく取りなしてくれるだろう。頼んだ。ニコル」
心配気な視線を一瞬ジルベールは私に投げかけた。
獰猛な顔のせいで他の人にはわからないだろうが。
私は大丈夫だという風に頷いておく。
慌ただしく、ジルベールとニコルが領主館からとんぼ返りで飛び立っていき、私は竜麝香について兄に相談することにした。
「なるほど、『竜麝香』を使って狩りをする地域か。」
「戦略として広く認知されていますが、元々は狩りに使う方法だったのでは?」
「『竜麝香を敵地に投げ入れる』ね。実際にやったとしたら下手の一手だろうな」
決死の覚悟で敵地へ乗り込む事を意味するそれは、実際にしたら大惨事になる事だろう。
「私は故事にはそう詳しくないが…、昔の戦でそれを強行した戦いがあったな。
結果は使用した陣営も敵方の陣営も壊滅に近い結果だったらしいな」
「我が国が起こるより前の出来事らしいですからね。まだ野蛮な時代でしたでしょう」
…過去にここより進んだ文明に生きていた記憶が戻った私からは、吹き出しかねない感想だった。
剣と魔法で国の取り合いごっこをしている今の時代も、そう近代的とは言えないと思う。
微妙な間があいた。
この場には私と兄とフリードの3人がいるのみだ。
「で、きちんと話は出来たのか?」
兄は、私とフリードに問いかけた。
「ユリウスの事もある。周囲に押し付けられる前に二人で方針を決めておいた方がいい」
「え?」
間の抜けた声をフリードはあげた。
「まさか。まだ確認もしていないのか…」
兄は仮面をはずすように私に促した。