心臓
最近、よく夢を見るせいなのか
深く、眠れていないせいだろうか
授業中にも関わらず眠くなることが多くなった。
しかしこれは最近に限ったことではなく、
昔からよくあることだった。
眠りが浅い。
昔からそれは悩みの種だった。寝付くまでに時間がかかることにも悩んでいたが、最近はそういったことも無くなってきていた。
しかし眠りが浅いのは今でも変わらず、度々夢を見ていた。
ちぐはぐで、矛盾していて、現実味を帯びない夢。 けれど夢の中では中々それを夢と感知することが出来ない。
そう、そこが現実であると、夢の中の俺は気づけない。
しかし最近、現実に起こり得そうなほどリアルな夢をよく見ていた。
夢の中の俺が今よりも幼くなければきっと、現実と勘違いしてしまいそうだった。
小さな悩み。本当に小さな、小さな悩み。
本来は気にも留めない。けれどその夢を見る回数が増える。
不安は高まっていった。
「ね~!また寝ちゃうの~?かーずーまくんっ!」
突然、目の前が真っ暗になった。
「私はだーれだ?!」
暗闇のなかで、美雪の声が聞こえた。
最近寝不足で元気の無い俺を、美雪なりに励ましてくれているのだろうか。
昼休みになったばかりの賑わう教室、恐らく美雪は後ろから俺に目隠ししているのだろう。
「美雪だろー?」
美雪のささやかな気遣いが嬉しかった。
けれど次に聞こえた声は明らかに美雪ではない男の声だった。
「俺でーっす!」
「冬樹くんでしたー!」
「あはははは!」
離れた手のある方を振り返ると、俺の友達の冬樹と、美雪の友達の水姫が嬉しそうに笑っていた。
「なんだお前かよ!」
「男の手と女の手普通間違えるかー?」
斎藤冬樹。
中学からの友達で、今はサッカー部に入っている。
顔は平凡だが根は優しい奴で、クラスでは人気者の部類に入る。
「一将はほんとに美雪と熱いね~」
山城水姫。
ポニーテールが目印の明るくて元気な奴。美雪とは結構正反対にうるさい。
大抵昼休みはこの面子で食っていた。
冬樹と水姫は付き合ってもないのに仲は良いし、喧嘩もすることないし、一緒に居ても気兼ねない俺はいつも昼休みが楽しみだった。