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希う
あたたかな光がこの身を包む
痛いほどに冷たい感情の荒ぶりさえも
溶かし、鎮め、春の涙となって頬を伝っていく
優しい場所
夢のように心地よく
楽園のように安らかで甘美な一室
あなたとあなたとあなたたち
彼らの吐息に抱かれた一室
その穏やかな空気に身を浸していると
私の口角は自然と上がり
優しい気持ちで満たされる
この生がいつまでも続くといいのにと
気付けば幸せなため息を零す私がいる
ああ、永遠が恋しい
満たされたこの感情がいつまでもいつまでも
絶えることなく湛えて欲しい
私は切なる願いをこの身に抱く
現実からは逃れられない
遠く輝く星々でさえも終焉を定められている
矮小なこの身では一瞬にも等しい時間しか残されていない
幸せであればあるほど
時間はあっという間に過ぎていく
止れよ止まれ、時間よとまれ
幸福な時間を永遠に
廻れよ廻れ、時間よまわれ
閉じた一室を映し続ける壊れた映写機のように
続けよ続け、夢幻よつづけ
いつまでもいつまでも幸福な夢を綴ってほしい
ああ、この願いのゆくさきは……