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黒君
芦と佇む白い君
日差しを受けて揺らいでる
地を這う黒い鳥たちが
ふっと身体を染めて行く
川のせせらぎに流される
君はゆらりゆらりと何処へ行く
暗い瞳と歪めた笑みは
怪しくどこか艶やかで
風に揺られて立ち消える
そんな気さえもしてしまう
揺蕩う水面に映った君の
暗い瞳は何を見る
朱に染まった傾く視界
蟲の囁きは強まって
怪しき魔と遭う時となる
月の昇った空の色
黒く清く君の色
すっと消え逝く君の影
後には誰も居やしない
私が見たのは夢か現か