一粒
両手いっぱいに掬った砂が
ぽろぽろ
ぼろぼろ
零れてく
零れた砂には興味はないが
きっと初めは大事なものだった
そんな気がする
ああ、
また砂が落ちていく
無感情にそれを見やって
残った砂をいっそう大事に包み込む
きっと残った砂は大切だから
これだけは大切にしなければ
それがこの一粒一粒に抱いている
愛の証明
自身が生きていた
その証であるはずだから
ああ、
それでも日々砂は零れゆく
すべての粒を失ったとき
私もきっと死ぬのだろう
いまや生への執着も
手から零れて見当たらない
毎日
興味が失せていく
毎日
何かを忘れてく
ぼろぼろ
ぼろぼろ
砂は零れていくだけで
決して後から足されはしない
残った粒は残りわずかだ
ふと覗いた粒の中
たった一粒輝いた
黄金の小粒を見出した
ああ、
これを覚えている
心が弾んだ拍子に生まれた砂
その中でもひときわ輝き
色あせることのない
至高の粒
たとえ遠い過去の出来事でも
たとえ小さく些細な物事でも
それは希望の翼
未来の憂いを打ち払う
夜明けに白む日の出の光
これだけは零せない
これだけは失くせない
ああ、
本当にこれだけは
失くしたくないのだと
濡れた瞳が訴える
胸の痛みが呼応する
その時心の深奥に
どくりと
生の鼓動が打ち奮う
新たな呼吸が脈打ち息吹く
決して決して忘れるものか
あの日に生きたこの一粒を
あの日
あの時
生きた証を
私は決して忘れない
だって
これを零してしまったら
隣にいた彼をも失くしてしまうから
彼を失いたくはないのだと
心の底から
身体の隅まで
私のすべてが叫んでいる
だから
私は生きていく
生きていかねばならないのだ
そしてまたいつか
彼と隣を歩くんだ
この一粒を胸に抱いて




