29/52
雫
冷たい水
上から
ぽたりぽたりと
落ちてくる
大きな水たまり
その中に
僕は身体を浸している
大事な大事な
あたたかで
きれいな水は
両手で掬って
口に運ぶ
舌でころがし
喉でとどめて
ゆっくり嚥下する
夢見心地の味わいは
けれど
やはり一瞬で消える
喉を通り抜けた
その一瞬だけを
何度も繰り返し
夢見てる
いつか周囲の水が
僕のぬくもりを
奪い尽くすまで
何もせず
遠くの視界に
君との日々を
映し出す
これは緩慢な
自殺のようで
ただの怠惰でしかない
今日も記憶の雫が
ぽたりぽたりと
落ちてくる
今日も
みんな冷たい水だった




