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第八話「森の中からコンニチハ」


今、俺・エミー・キースの三人で修行場に来ている。

しかし、この状況は・・・


「・・・・・(プルプル)」


エミーは俺の後ろで小さく震えているし・・・


「あばばばばば(ガタガタブルブル)」


キースに至っては腰を抜かしてヘタリ込んでいる始末。

まぁ原因は『アレ』である。


「大丈夫だって、私の森の友達だから、名前はオロチな!」

「と、友達って・・・大蛇じゃないか!」

「・・・・(プルプル)」


そう、原因は大蛇である。

今から3年前この森で修行中に現れた蛇、『オロチ』・・・。

怪我を治した為かなんなのか懐かれてしまい、今では俺が広場に近づくとやってくる。

当時せいぜい100センチ程度だった緑色の蛇は、今や全長10メートルは超える大蛇に成長していた。

何を食ったらこんなにでかくなるんだろうか?


「しかも!コレって南の樹海にいるはずの『グリーンスネーク』じゃないか!?」

「知っているのかキース!」

「うん、お父さんが子供の時おじいちゃんに聞いたらしい・・・」


〜グリーンスネーク〜

南の国『コスタリカン連邦』

その国土の大半を占める樹海、その奥地に伝説の大蛇『グリーンスネーク』はいる。

その巨大さたるや、大きなものは100メートルを超え樹海の木々をなぎ倒し進む。

性格は温厚であるが縄張り意識が強く侵略者には容赦ない攻撃が待っている。

皮膚は剣や弓などいともたやすく跳ね返し、その巨体から繰り出される攻撃は城壁さえなぎ倒す。

知能も高く、体内の魔力を使って上位の土魔法を使ってくる。

大量に貯めた魔力は瞳から結晶となってこぼれ落ちこれを『大蛇の涙』と呼ぶ。

グリーンスネーク自体が希少種であり、大蛇の涙が採取できるのは数十年に一度。

また縄張りに踏み込まなければいけないため採取の難易度はSランクとされる。

その貴重さと大蛇の涙の持つ大量の魔力、魔力の増幅力は魔術師が喉から手が出るほど欲しがる。

野球ボール程度の大きさの物の市場価格は一生遊んで暮らせる程度である。

またグリーンスネークのウロコはオリハルコンの次ぐ強度と異常なまでの魔法耐性を持つ。

連邦ではグリーンスネークを森の守護神として信仰する国や部族も存在する。


民○書房刊「樹海の奥地に大蛇を見た」より


「・・・待て待て待て!いろいろおかしい!民○書房あるのこの国!?」

「本当だよ!うちのおじいちゃん昔は南で戦争してたって言うし!

 あと民○書房は国でも上位の出版社だよ?」

「つか全長100メートルってゴ○ラと同じくらいのデカさだし!」

「ゴジ・・・?それは知らないけど・・・」

「なにコイツの存在がチート!?」


俺はオロチを振り返った・・・


「キュイ?」


オロチは不思議そうにこちらを見ている。

その口には木の棒がくわえられていた。


ぼとっ

「キュー♪キュー♪」


木の棒を俺の足元に落とし、オロチが何かを催促している。

うん、まぁ、木の枝を投げて欲しいんだろうけど・・・。


「そぉれ!」

ブンッ!ひゅぅぅぅぅぅ・・・・

「キューーーーーーー!!」

ドドドドドドドドド!!!


木の棒を森の中へ投げ込んでやると凄まじい勢いで追いかけていった。


「・・・・・・犬かっ!!!!」


キースのツッコミが聞こえてきた。

うん良いツッコミ。


「なにアレ!?ほんとに森の守護神!?」

「いや、そう言われても私もよくわかんないし・・・?」

「・・・かわいい」

「ま、まぁ、なんだ無害なヤツだから問題ないって」


俺はキースを説得するのだった。

つか、エミーなんか可愛いとか言い出したぞ!?


「じゃあ、オロチが戻って来るまで特訓な!

 キース!それが今回の目的だろ!」

「う、うん・・・」


なんとかキースを丸め込む事に成功した。


「・・・ミーシャ、私は?」

「う〜ん、エミーも魔法の練習してみる?」

「(コクコク)」


エミーカワイイです!


「エミーはどの属性魔法が使える?」

「・・・水を使えると思う」

「キースは?」

「僕は火の魔法が使えるよ!」

「・・・よし、エミーは適当に魔法を使って魔力を消費して。

 キースはそっちで筋トレな」

「・・・きんとれ?」

「あぁ、要するに筋肉付ける運動しろって事」

「ちょ、ちょっと待ってよ!僕の魔法は?」

「森の中で火魔法なんて使ったら火事になるだろ?」

「そ、そうだけど・・・」

「魔力は使ったらちょっと増える、だからエミーはここで魔力を使い切ってくれ。

 ただしキースは危ないから魔力を鍛えるならどっか別でやれ。

 つか、私の特訓に付き合え、OK?」

「別にいいけど・・・特訓って何するのさ?」

「まぁ見てろ『ヘビィ・グラビトン』!」


俺はキースを指差し魔法を発動した。


「・・・ぐぅっ!?」

ドサッ!


途端にキースは地面へ倒れ込んだ。


「な、これ・・・体が・・・重、たい!?」

「このくらいかな?

 魔法でキースの体にかかる重力を強くした」

「・・・じゅうりょく?」

「要するに体を重たくした」

「く、空間・・・魔法・・・!?」

「まぁ、そうだな。

 ちなみに時間魔法も使えたりする。

 今日の特訓は、私は『キースに魔法を使い続ける』キースは『その状態で組手をすること』だ。

 ほら早く立った立った!」


ガッ!

俺はキースの腕を掴み・・・


「ちょ、ちょっと待っ・・・」

「そぉいっ!(ぶぉん!)」

「うわぁ!」


ぶん投げた。

グラビティが掛かっているのでかなり重たい。

丁度いい筋トレになるな・・・。


「私に一度攻撃を当てられたらこの修行は合格だ。

 寝てる暇はないぞ?手加減してやるから全力でかかってこい!」

「うわぁあ!」


こうしてキースと私の楽しい修行の時間が始まった。



〜2時間後〜



「はぁ、はぁ、も、もうムリ!はぁ、はぁ」

「ふぅ・・・、私も魔力がすっからかんだし組手はここまでだな」


結局キースは一撃も当てられずひたすらボコられただけである。


「・・・ミーシャ、私も、もうダメ・・・これ以上、魔法使えない・・・」

「う〜し、今日の特訓はここまで!

 ちょっと休憩してから帰るぞ〜」


そう言いながら私はお茶の準備を始める。

魔法で火を焚き、お湯を作る、持参したティーセットでお茶を淹れる。


「・・・ミーシャ、それ何?」

「ん?あぁ、これはタンポポコーヒーだ。

 タンポポの根っこを洗って干して炒って作るお茶だよ、エミーも飲む?」

「・・・いらない」

「タンポポって確か薬にはするけど・・・お茶は聞いたことないよ?」


この国にもタンポポが生えていた。

タンポポには発汗や利尿作用があるらしくこの国ではもっぱら煎じて薬にするらしい。

こっちの世界ではコーヒーが少ない(というか見たことがない、紅茶はある)ので、

前世でコーヒーが好きだった俺にはタンポポコーヒーが貴重な楽しみでもある。

ちなみにゴボウも見つけたので醤油でもあればきんぴら作るのだが。


そんなこんなで休憩をしている最中だった。


ガサガサガサ

どうやらオロチが戻って来たようだ。


「ミーシャ、どこまで投げたのさ・・・」

「あ〜、さりげなく木の棒に『ライト・グラビティ』かけて投げたからなぁ」

「・・・ミーシャ、アレ・・・」

「ん?」


戻って来たオロチはしっかりとくわえていた。

木の棒・・・

を持った立派な白ひげのご老人を・・・


「「な、なんだってー!!」」

「・・・(なでなで)」

「キュー♪」


エミーさん頭なでてる場合じゃないっす!


「ど、どどど、どうしょう!?これどうしたらいい!?」

「お、おち、落ち着け!落ち着くんだキース!素数を数えて落ち着くんだ!え〜と、1、2、4・・・」

「ミーシャこそ落ち着いてよ!あと何かわかんないけど多分間違ってる気がするよ!?」

「だ、だってどうすんだよコレ!予想外だよ!?だって人間だもの!?」

「ミーシャはオロチの友達でしょ!?飼い主でしょ!?意思の疎通とかできないの!?」

「いや、まぁ、できるけど?」

「できるの!?」


〜少女意思疎通中〜


「・・・要するに・・・だ」


どうやら事の次第は

ミーシャが木の棒を投げる

グラビティの解けた木の棒がご老人の後頭部に直撃&最後の気力で木の枝を掴み気絶

木の棒を掴んだご老人をオロチが運んでくる←今ここ


「・・・テへッ☆」

「テへッじゃないよ!?ほぼミーシャのせいじゃない!」

「後悔はしている・・・だが反省は・・・していない!」

「余計にタチが悪いよ!?」

「反省したら負けかなと思っている・・・」

「どういうことなの!?」

「・・・二人ともうるさい・・・」

「「ごめんなさい」」


エミーさんに怒られました。


「・・・うぅむ・・・」

「・・・二人共おじいさん起きるよ」

「よかったぁ・・・」

「このじいさん、こんな森の中で何してたんだ?」


じいさんの見た目は長くて白いヒゲと禿げた頭。

紫色のローブを着ている。歳は80くらいか?かなりのご高齢に見えるが・・・

腰には魔法の杖だろうか?それと荷物を入れる袋、中身はキノコがいっぱい。


「うぬぅ、こ、ここは・・・?」

「・・・おじいさん、大丈夫?」

「気がついた様ですね(ホッ)」

「ふははは、この私様に感謝するがいいわ!」

「・・・ミーシャ・・・」

「ごめんなさい」


じいさんは周りをキョロキョロしている。


「おじいさん、ここはフィリス村の外れですよ」

「正しくはラダッド家の裏の森の広場だけどな」

「なんと、ラダッドの小僧の家の近くか・・・」


小僧って、まぁこのくらいの歳の人は年下は小僧みたいな感じか?


「すまんのぉ、迷惑をかけたようじゃ」

「・・・ううん、大丈夫」

「おじいさん大丈夫ですか?」

「儂は平気じゃよ、ふぉほっほっほ」


じいさんは大丈夫そうだ、ふぅ。

すると後ろから誰かが押してくる。

オロチだった、遊び足りない様だ。


「キュー、キュー」

「こらオロチ、今日は遊びはおしまい」

「キュー・・・(しゅん)」

「これは、また、たまげたのぉ・・・」

「お、おじいさん、あのグリーンスネークは大丈夫ですから」

「わかっておるよ、こんなに人に懐いたものは初めてじゃがな。

 もともと温厚な蛇じゃ、危害を加えず、優しく接すれば懐きもするわいのぉ

 大きさからいくと既に二十年は生きておるようじゃが少し知性が低いかの?」

「へぇ、オロチお前二十年も生きてんのか?

 たしか3年前はチビだったけどなぁ・・・」

「いやいや、いくらなんでも育ちすぎじゃわい、別の蛇ではないのか?」

「いや?コイツだったぜ?」

「グリーンスネークは魔力を少しずつ吸収して育つんじゃ。

 この森にはそんなに魔力は溜まっとらんのじゃが・・・ん?」


言うとじいさんはこっちをガン見してくる。

なんか照れるぜ?


「なんとまぁ、長生きはするもんじゃてなぁ・・・」

「な、なんだよ?」

「・・・ミーシャがどうかした?」

「なんじゃきづいとらんのか?

 ミーシャ・・・と言ったか・・・?

 おんしの魔力、既にこの国でもトップクラスの容量になっておるぞ?

 その上、儂の『目』を持ってしても底が測れんとはなぁ・・・」

「・・・ミーシャすごいの?」

「すごいどころか・・・

 すでにこの世界の常識を超えておるよ」

「へぇ、やっぱりミーシャってすごいんだ」

「ちょ、や、やめろやぁ!て、照れるだろうがぁ!」

「・・・ミーシャが赤くなってる」

「(ニヤニヤ)」

「キース、お前後でボコボコにしてやるからな!」

「わーん!暴力反対だー!」


すでに状況が理解できない、なんで俺は褒め殺されてんだ!?


「ミーシャ、おんし学校に来てみんか?」

「んぁ?ガッコ?」

「すぐにとは言わんよ、元より入学は10歳になってからじゃ。

 まぁ、親御さんには儂から伝えておこう。

 それと『無属性魔法』に興味はないか?」

「無属性魔法?なんだそれ?」

「要するに魔力を直接叩き込む荒技じゃな。並みの魔力量では扱えんが・・・

 おんし程の魔力なら使いこなせるじゃろう」

「要するに『レベルを上げて魔力で殴れ』って事だな?」

「まぁ、あながち間違ってはおらんよ。

 儂はガーデルマン、ヘンベルボックで教師をしておる」

「へ、ヘンベルボックだって!?」

「何!知っているのかキース」

「・・・この流れまたやるの?」

「「YES」」


〜ヘンベルボック〜

イース王国は国王と三家の大貴族によって管理されている。

王都周辺は国王の直接執政下、残りの国土を三分割し

北部を武家である『フェンゲル家』が

南東部を魔術研究に秀でた『スミテル家』が

南西部を新しい統治方法を考案、試験運用する『ライシス家』が管理する。

そのライシス伯爵領内最大の学院都市が『王立ヘンベルボック学院都市』である。

位置的には王都の西側、フィリス村からやや北東に位置する。

騎士や魔術師を訓練、研究する国立の教育機関である。

3年間の基本教育を受ける一般部。一般部を卒業後、より専門的研究・鍛錬を4年間行う高等部に分かれる。


民○書房刊「たのしい王国教育読本」より


「まぁ、儂は村に泊まっておるから声を掛けるといい」

「わかった、例の無属性魔法教えてもらいたいしな。

 そろそろ日が暮れるから今日はお開きだ。

 学校の件は父様に聞いてみるよ」

「ちなみに親の名前は何かのう?」

「ああ、父様はクリフ・ラダッド、母様はトリシャ・ラダッド

 私はミーシャ・ラダッドだ」

「なんと、あの小僧め、娘をこさえておったのか・・・

 しかし、トリシャは子供を産めなんだような気がしたがのぅ」

「・・・え?それって?」

「エミー、あんまり聞くもんじゃないぞ?」

「・・・ごめん・・・」

「気にすんな」

「儂もうかつであったわ、すまなんだな。

 にしても歳のわりに大人びておるのぉ」

「はいはい、もういいから今日は帰った帰った」


こうして、この日は別れたのであった・・・

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