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第八十一話「偉大なる瞳」

一掛け二掛け三掛けて

仕置いて懲らしめ日が暮れて

船の甲板腰おろし

遠い水面みなもを眺むれば

異世界つらいことばかり

片手に軍刀 銃を持ち

嬢ちゃん嬢ちゃんどこ行くの

私は天下の大総統

この名をミーシャと申します。


「……それで、辞世の句にはなにをおっしゃるんで?」


「まて! 我が悪かったから刀をしまえ! 銃口を向けるな! 魔力を抑えろ!! いや、抑えてください!?」


場所は再び医務室で

包帯姿の幼女マシリーが一人

涙浮かべて懇願するも

少女ミーシャの怒りは収まらぬ

怨み晴らさずおくべきか

少女ミーシャの心は鎮まらぬ

あぁ 恐ろしや にわか仕込みの南無阿弥陀仏


「……落ち着けミーシャ。目は見えるようになったんだろ?」

「…………」


見かねたメアリはそうミーシャに問いかけた。

ミーシャは無言で頷く。

ミーシャの左目には真っ赤な瞳が収まっていた、白目にあたるところが燃える様な赤で黒目は闇の様な黒。

爆発のせいで左目には縦に小さな傷が走っている。

もうすぐ八歳のミーシャは、身長は125cmくらい、体重25kgくらい、子供らしい体だがそこには八歳とは思えぬ筋肉が目立たないながら付いている。

長い黒髪をひっつめ髪にして腰まで垂らし、一見幼い顔に似合わぬ紅と黒のオッドアイ、目元の傷と、歴戦の戦士の様な眼光はあまりにもアンバランスである。


確かに魔眼がミーシャに取り憑いてから無傷な右目も視力が上がり今では床の小傷まで見ようと思えば見れる。

あと違うのは見た人物の中心部に炎が見えるくらいか。

メアリは青い中位の炎、マシリーは赤い業火と言ったところ。

そして、問題の魔眼は。


「左目は自分が見えるんだが?」


ミーシャはそう告げた。

マシリーを意識すればマシリーの視 点で、メアリを意識すればメアリの視点が左目に映る。

どちらもミーシャを見ているので自分が見えるのだ。


「……眼を盗む魔眼か、にしても……」


するとミーシャはため息を漏らした。


「右目と左目で目線が違うのは気持ち悪いな……」


左右の視界が違うことに少し吐き気がした。


「それは当時の魔王が『偉大なる瞳(グレート オブ アイズ)』と呼んでいた魔眼じゃ、本当は今ミーシャが着けた『盗視眼』と魔界あっちに置いて来た『転心眼』のふたつで一対なのだがの」

「……それで? 詳しい能力は?」

「……ふにゅ?」


ミーシャの問いにマシリーは首を傾げるだけだ。


「ふにゅ? じゃねーよ!! わかんないもん人に押し付けたのかコラァ!!」

「いや、だって、あんなキモいの触りたがるヤツ居らんし!? だってキモいし!?」

「キモいんはわかっとるんじゃあ!!」

「なんかいろいろ出来るらしいことしかわからんのだ~!!」


ミーシャがマシリーの胸倉を掴み上げている時。


(……ザ……ザザ……)


脳裏にノイズが走る。

一瞬のノイズは次第に大きくなり、やがて脳裏に浮かぶ光景。

燃え盛る家々、兵士に斬り殺される人々、阿鼻叫喚の地獄絵図。


「……ぐっ!?」

「どうした!?」


いきなり左目を抑え込むミーシャにメアリが心配そうに駆け寄った。


「……なんじゃ? 今のは?」

「見えたのか?」


直前までマシリーの視界をジャックしてんでいたミーシャは、盗んだ視界に自分が見た光景を投影したのだと仮定した。

それが正解ならいろいろ試せば面白い能力もあるかもしれない。


「……今のはこの目の記憶なのか……?」


ミーシャがつぶやく、その時。


<こちら、第一艦橋より。 ナナル王国、王都とおぼしき陸地と都市を発見!>


「……やっと着いたの」


マシリーがホッと一息ついた。


<? 様子が変だと? 煙が? こちら第一艦橋!! 王都にて戦闘を確認!!>


その報告に艦内は騒然としたのだった。



******



「状況報告!」


メアリは指揮所に入るやいなや命令を飛ばす。


「はっ! 龍驤搭載の航空機による報告によると王都は半円形、王城が中央に位置しており、東平面部つまり正面は全面が湾口設備、現在武装集団約二個大隊(約二千人)が北防壁つまり右手から侵入、北側の広場と思しきスペースに陣取り睨み合っています。湾口設備には例の魔法大筒があり、現在北部、約20%が占拠、大筒が鹵獲されています、湾口設備の占拠に約一個大隊程度の別働隊を確認」


「ガゼル帝国の陸軍か?」

「いえ、航空写真を見るに反乱かと思われます」


士官の一人が偵察機が撮影したと思われる写真を取り出した。

民生品のカラーカメラを補助パイロットに撮影させたカラー写真と機体に取り付けられた白黒写真の二枚である。


「……何という」

「こやつらは!?」


するとナターシャとティ・トークが声を上げた。


「北部のサンジェンス伯爵の私兵部隊にその他地方貴族の私兵も混じっている、ヤツら最後まで戦力を出し渋ったと思えば、これが狙いか!!」

「北部?」

「ミーシャさんには説明してませんでしたね……王国北部は穀倉地帯で更に北には厳しい山岳が横たわっています、この山岳は常に悪天候のうえかなりの標高の為にここより北は未開の地です。海路には海の民の国があり北は聖地とされているために海の民の国を通過できません」

「説明ありがとう」

「どういたしまして」


「にしても、妙だな……正規軍の足並みが揃って居ない様な、いきなり籠城するのはいい選択ではないぞ?」


ミーシャは顎に手を当てて唸る。

増援や物資の補給が期待できない状況で籠城しても兵糧攻めか敵援軍の押しつぶされるのが関の山だ。


「まぁ、妙ですよねぇ」


するとナターシャに付き添っていたラビーが声を上げる。


「どうされましたかな? ラビー嬢」


ティ・トークに付き添っているゴーザスが疑問の声を上げる。


「いや、だってさっさと城を取りたい筈なのにどっちも睨み合って……よっぽど港が大切みたいに取り合って……」


ラビーがそう言ったとき。


<第一索敵班より艦橋へ! 北から戦列艦を含む艦隊! 十五隻が接近中!>

<こちら第二索敵班! 南より艦隊が接近中! 中、小型艦ばかりですが数は十隻!>


「南は正規の王都防衛艦隊です! 北は……」

「反乱軍艦隊か!!」


予期せず決戦の地に踏み込んでしまっていた。


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