第七話「騎士を目指して」
さて、俺がエミーと知り合ってから一ヶ月が立つ。
今ではたまに孤児院の小さな子供たちの遊び相手になってたりする。
「ミー姉ちゃん!お話し、お話し!」
「ん?おぉ、そうだなぁ今日は『勇者モモ・ターロウ』にしようか」
「わーい♪」「ワクワク」
前世の物語をこっち風にアレンジして子供たちに話したり。
「ミーシャせんせー、次の問題出してー」
「じゃあ次は、ふた桁の計算だな」
年長組(6〜8歳)の子供たちには算数を教えていたり。
「お・や・つ!お・や・つ!」
「はいはい、今できるからちょっと待て」
子供たちのおやつを作ったり。
まぁ、かなり孤児院に馴染んできてると思う。
つか、年長組は年下に勉強教えてもらうってどうなのよ?
さて、おやつも食べ終えてお昼寝の時間。
子供の相手って結構激務なんだなぁ。
「ミーシャちゃん、いつもありがとね〜」
「あぁ、ミランダさん、いいですよこのくらい」
「謙遜しちゃって〜、と〜っても助かってるのよ〜
ミーシャちゃんもまだ小さいのに偉いわねぇ〜」
「は、ははは〜」
(言えない、中身はあなたと同い年ぐらいですとは言えない)
ウェーブのかかった紫の髪を腰まで伸ばし、間延びした声をかけてくるのはこの孤児院の管理人で
村の協会のシスター『ミランダ・フォード』ナイスバディのお姉さんだ、見た目は20代後半くらいかな?
ちなみにこの孤児院の子供たちはみんな『フォード』になるらしいエミーもフォードだったし。
「あとは私が見てるから〜、は〜いこれ、おやつ詰めたからエミーと遊んでらっしゃいな」
「ミーシャ、今日・・・『特訓』・・・するの?」
「ん〜、そうだなぁ、エミーはヒミツの修行場所見たい?」
「見たい・・・かも・・・」
「じゃあ、ちょっと出かけてきます」
「は〜い、あまり遅くならないように帰ってきてね〜」
などど孤児院の激務を終了してエミーと切り株の広場まで移動するのだった。
〜孤児院を出発して15分後〜
『フィリス村とラダッド家の間の林』
(・・・誰かがついてくる・・・村を出てからずっと・・・)
いや、たぶんだが孤児院を出た時点でつけられていたような気がする。
隣を歩くエミーは気づいていないのか黙々と歩いている。
(あれで気づいて無いのもなぁ・・・)
後方、大体20メートルほどの距離。
さっきから茂みがガサガサとやかましい事この上ない。
立ち止まって振り返って見ると茂みから金色の髪がはみ出している。
(いや、気づかれていないと思ってる方もか・・・)
「エミーちょっと・・・(ゴニョゴニョ)」
「え?・・・うん」
エミーは俺の指示で来た道を戻る。
俺は横の草むらに入っていった。
金髪のストーカーはエミーが近づくと慌てて草むらに隠れる。
(バレバレだっつの)
俺は足音を消してヤツの背後に忍び寄る。
どうやら同い年くらいの男の子の様だ。
いじめのグループには居なかったと思うが、関係者ならお仕置きだ。
「よお、こんなところまで散歩か?」
「ぎゃあっ!」
少年はまさに飛び上がって驚き、草むらから飛び出した。
「女の子に声かけられて『ぎゃあ』って、ちょっとへこむわ」
「べ、別に家の場所を探ろうとかしてない!」
「聞いてねぇし、自分で喋ってるし。エミー帰ってこーい!」
エミーも帰ってきて、少年と『お話し』する事にした。
少年は道のど真ん中で『正座〜SEIZA〜』中である、もちろん強制。
「さて、私の家の場所を調べてどうするつもりだ?
この間のいたずらっ子のお仲間か?
『お礼』なら気持ちだけ受け取ってお帰り願うが・・・?」
「ち、違う!あいつらとは関係ない!これは僕が勝手にやってる事だ!」
「ほぅ、個人的に私に恨みがあると?」
「だから違う!恨みとかじゃない!あとこの座り方なんだよ!足痺れて来たぞ!」
「なんだよ、辛抱が足りねぇなぁ、なんの用事だ?」
「お、お願いします!弟子にしてください!」
そう言うと少年は頭を下げた。
正座から頭を下げたので日本の謝罪の最終進化系『土下座〜DOGEZA〜』である。
「・・・は?」
「僕はキース!キース・ロックフットて言います!
歳は五歳!将来の夢は王国一の騎士になること!」
「いや、聞いてない」
「あの時の立ち回り、とってもかっこよかった!
あなたの強さに惚れました!弟子にしてください!」
「たしかに・・・あの時のミーシャ・・・かっこよかった」
(なんですかコレ?褒め殺し?)
「いやいやいや、待て待て。
お前それでずっとついて来たのか?」
「もちろん!」
「もちろんじゃねぇよ!バカ!」
ゴッ!
「いったぁ〜!」
キースの頭にげんこつを落としてやった。
「〜〜っう〜〜!ぼ、僕はなんと言われたって諦めないからな!
絶対に強くなって王国一の騎士になってやるんだ!」
涙目で必死にすがり付いてくる。
その目にはどんなに拒否しても絶対に諦めない、そんな強い意思を秘めていた。
「・・・はぁ・・・何言っても無駄・・・か」
「ミーシャ・・・力を貸してあげたら?」
「エミーまで・・・しょーがねぇ・・・」
「!・・・じゃあ!」
キース がなかまになりたそうに こちらをみている。
「だが弟子は取らない!」
「「え!?」」
「あくまで弟子は取らない、弟子じゃなくて・・・友達として修行に付き合え」
「・・・うん!」
こうして騎士を夢見る男の子「キース・ロックフット」が修行に加わるのだった・・・