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第五十六話「闇夜に響くは」

ウェンズレイポート

トラファルガー邸

執務室


湾内を見渡せる大きな窓を背にディスクに座るのがトラファルガー伯爵である。


『トラファルガー伯爵』

イース王国海軍司令長官でありウェンズレイポート一帯の統治者である。

でっぷりと肥えた、見た目ははまさに西洋の服を着たダルマである。

彼はごっつい口ひげを撫でながら部下の報告を聴く。


「……以上が今回の摘発の内訳です」


「……成る程、押収した積み荷は?」


「闇市に流し資金に変えております、総額は押収した船舶を軍艦に改修するに十分となっています、しかし……」


「どうした? 言ってみろ」


「はっ! その増えた軍艦に乗船する船員の手当てや育成費などはいまだ不十分であります。そして、中央からの海軍予算は前回比の3割減、ライシス家へ軍艦の増加を報告すればさらなる減額が予想されます」


「想定の上だ、儂は海軍の全権とウェンズレイポートの全権を任されている、他ならぬライシス家からな。報告などどうにでもなる」


この国の執政は、国土の4分の1を三大貴族であるライシス家が国王より預かり、傘下の各貴族達に分割統治させている。

つまり、ライシス家にまともに報告が行かなければ国王へは何の報告も行かない。


「北のフェンゲル最高司令長官は軍備増強を進言してはいるが、受け入れられる気配は無い」


イース王国北側を統治する三大貴族『武門フェンゲル家』

国王直下の親衛隊や各貴族の私兵、治安維持の憲兵を除く残り全ての軍隊の指揮権が『北のフェンゲル家』に集中している。

このフェンゲルの壁が北に面する北方帝国の南下を遮っているのだ。

今は一時的に停戦協定を結び睨み合うだけだが、それは陸上での話し。

海上では度重なる領海侵犯が発生していた。


「国王は使者を出して『遺憾の意』などと言ってはいるが、そんなものなんの役にも立たん。この国の海軍はウェンズレイポートにしかないのだ、いつ北方の『海の壁』を突破されるかわからん。そのための海軍拡張だ」


トラファルガーは一息ついて目の前の部下を見据えた。


「予算が無いなら作るしかない、早急に作れぬなら有る物を使うしかあるまい、近いうちに増税をも考え軍備を強化せねば北方帝国とは既に技術で差が開きつつある」


「はっ! 先日も北の海域で帝国の新型艦が目撃されております」


「国家無くして国民は無い! 北に蹂躙されてからでは遅いのだ、今は外道であってもな!」


その時、1人の憲兵が部屋に飛び込んでくる。


「き、貴様! ここを何処だと思っている!?」


報告していた男が驚きの声をあげるが。


「き、緊急事態ですっ!!!」


「緊急事態だと? 詳しく報告せい!」


「反乱です!! 船乗り達と……あとよく分からない『もの』が街中に溢れています!!」


「反乱だと!? いや、待て、よく分からないものとはなんだ!?」


「魔物の類いかと思ったのですが、なんとも形容しがたく……ひっ……!?」


憲兵は窓を見て小さく悲鳴をあげ気を失ってしまった。


何事かと伯爵と部下も窓に視線を向ける。


「ぎゃああああぁぁぁぁぁっ!!?」





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