表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/135

第五十四話「魔王代行の昔話②」

それから我らは船に乗り出発した。

あくまでマーティの冒険家仲間であり、人間として乗り込んだ。


船旅は長く険しいものであった。

外洋に出るにつれ大きく、気性の荒くなる『海獣』と呼ばれる海の支配者達。

海という相手のフィールド。

海上、海中、あるときは海面を飛び出し、あるものは海流をも操り、あるときは海を飲み込み巨大な渦潮まで発生させておった。

また、時々見かける岩礁には凶暴な怪鳥が巣を作り、空からも攻撃してきおった。

なにも生物だけが脅威ではない。

自由気ままに顔色を変える天気、いきなり流れが変わる潮の流れ、突如現れる岩礁。


我らの乗る船を含めた5隻の帆船はその大部分を失いながらも新たなる島へたどり着いた。

マーティは喜び飛び上がり、その島に上陸した。

島はイース王国や魔界ですら見ることの出来ない植物や動物が暮らす楽園の様な場所であった。


一ヶ月ほど調査滞在し、食べれそうな植物や船内で飼育し食料とする動物を積み込み帰路についた。

帰りにも、もちろん海獣、怪鳥、天候に襲われイース王国周辺海域に達する頃には5隻の帆船は1隻しか残っておらなんだ。


そんな時、奴らが動いた。

例の騎士と魔道士だ。

だいぶ数が減ったとは言え、もとは国王の息のかかった者たち。

もとより予定していたのか全員がマーティとその仲間である我らを排除しようとしおった。

もちろん我らは魔族、それも上級魔族だ奴らの襲撃(それも寝込みを襲う為にわざわざ深夜に)を難なく返り討ちにしてやった。

マーティは呑気に寝ておったがな。

しかし、運が悪い事に襲撃と嵐が同時に襲いかかってきおった。

嵐が来ても戦闘中で船を制御できる者は無く、当時最先端の船はあっけなく沈んでしまった。

吸血鬼の我は海に落ちればひとたまりもない、ヴィーナは我とゴーザスを抱え、ギリギリ転移圏内であった陸地に転移した。

その際、直接触れておらなんだマーティは転移先がブレてしまい行方不明に、我らもまさに血眼で探したが見つける事は叶わなんだ。


そこからは流れて来た話ではあるが。


後日、海岸に打ち上げられたマーティは民家で保護され、国王に報告に向かった。

その際、襲撃の事実を知らぬマーティは。


「私の褒美は要りません! どうか、この旅で死んでいった者達にせめて立派な墓と遺族に恩賜を願いたい!!」


と泣きながら懇願したと言う。

しかし、国王はこれを却下、マーティを投獄した。


その報を聞いた我らは急ぎ助けに向かうが、時すでに遅く、偶然海岸に打ち上げられた騎士と魔道士の死体の罪を着せられ処刑された後であった。


後の話によれば、国庫を圧迫してまで送り出した跡継ぎは死に、報告も物証の無いマーティの証言だけでは貴族に納得させられない。

しかも、マーティは知らなかったがもとより手柄は奪うつもりであった事もありマーティに罪を全て被せたと言う。


その事実を知る者は少なく、数少ない者たちも監視の目が付いた、魔族の我らにはもとより発言力は無い。

そして、『ほら吹きマーティ』と名の付いたおとぎ話が広まるにつれ事実はすげ変わっていった。


マーティは冒険などしておらず、ただの詐欺師であったと。

中身に辻褄が会わない事があるにもかかわらず、大衆はおとぎ話を信じた。


マーティの最期は民衆に罵られ、笑われながら死んでいく無残なものであったと言う。

もちろん墓などある訳もなく、我らが遺体を探し作った石と木を組み合わせた物があるだけである。

13.10.23 誤字訂正しました、ご指摘ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ