第二十八話「食」
「本当にありがとうございました!」
正面に立つおっさんが深々と頭を下げてくる。
このおっさんが俺たちの助けた商隊の責任者。
「マッケンジー商会」のトンネコ・マッケンジーさんだ。
名前からお察しの方もいるかもしれないが、某大冒険な商人クリソツである。
ちょっと肥満気味の体で口ひげを蓄え、商売道具の詰まったカバンを常に背負っている。
ただし髪の色などが2Pカラーっぽく、赤髪で赤髭だが。
「あ、ありがとうございました」
トンネコさんの後ろで頭を下げるのは6、7歳の少女。
名前をラシャ・マッケンジー、トンネコさんの娘さんらしい。
赤髪に所々金髪の混じった髪を肩まで伸ばした女の子だ。
盗賊どもは全員気絶させているがこんな少女に乱暴を働こうとしたとは万死に値すると思うのですよ。
YESロリータNOタッチ
今からでも盗賊どもの骨を一本ずつ折ってやりたい気分になる。
「我々からも礼を言わせてくれ、ありがとう」
護衛の一人である女性が頭を下げてくる。
赤髪をボーイッシュに刈り上げた女性だ、確か名前はヘレンとか言ったけか?
「いや、いいって事よ、困ったときは助け合わねぇとな」
ゴットンがガッハッハと笑いながら返事をする。
ゴットンが俺に付いて来ているのではなく、俺がゴットンに付き添っているという風に装っている。
実はドラゴンを倒しておいてなんだが、あまり目立ちすぎる事が危険であると今更判断した結果だ。
直前ゴットンに任せておいたニャルは今は俺が背負っている。
ニャルは商隊に接近する際に目を覚ましたので少し離れた位置で待機させていたのだ。
「ちなみに後ろの方々は?」
トンネコが訪ねてくる。
俺は軽く会釈し、自己紹介を開始する。
「わたしはゴットンの旦那の世話になってます、ミーシャと申します。こっちのはニャルでさす。あぁ、顔の方を怪我しておりまして頭の笠は外せませんのであしからず」
とりあえず顔を隠している事については誤魔化しておく。
名前は正直に言っておいたほうが良いだろう相手はアーコードの住人だからこれからも世話になると思うし。
とりあえず街に入ったら髪の色と瞳の色をどうにかしなければ。
髪はまだどうにかなるとして瞳は無理そうだが・・・・・・この世界にカラーコンタクトなんて無いし。
「そんなにひどい傷なのですか?」
トンネルが心配そうに見てくるが。
「えぇ、頭を火傷してしまいましてね。なにただの火事ですよ」
これも誤魔化す。
冒険者なら体に傷があるものがいても可笑しくない。
実際それを聞いて護衛である冒険者たちの興味は既に他の物へと移っている。
捕まえた盗賊たちを馬車に押し込んでいく者。
死んだ者たちを火葬して埋めていく者。
死体は放置しておくとアンデッド系モンスターとして動き出すことがあるらしい。
周りの者たちは黙々と作業を続けている。
「積荷をだいぶやられてしまいましたね」
俺はそんな光景を眺めながら話しかけた。
「ええ、南方の国からの輸入品を運んできたんですが半分残っただけでも有難いと思いませんと」
トンネコさんは残念そうにそう語る。
どうやら話を聞くと。
南に位置するコスタリカン連邦から食料や香辛料、調味料を輸入。
海路で持ち込まれたそれを西のエンジェルポートから受け取りアーコードに戻って来た所らしい。
「ちょっと拝見させてもらっても?」
トンネコさんの許可を得て荷台を覗いてみる。
「こ、コレは!!!」
そこに積まれていたのは俺にとっての宝の山だった。
米俵だ。
そう米俵が積まれている。
戦闘で破れたのであろう中から見事なジャポニカ米がこぼれ落ちていた。
さらに。
「・・・・・・スンスン。この発酵臭は・・・・・・!!!」
俺は積まれている壷に飛び付く。
「ペロ・・・・・・こ、これは・・・・・・SYOUYU! 醤油だ!」
壷いっぱいの黒い液体は正しく醤油だった。
「こ、こっちは!?」
別の壷には独特の発酵臭を漂わせる茶色い物が詰まっている。
「MISOだ! 味噌がある!!」
なんという幸運、なんという運命。
感動に体が震える。
「み、ミーシャ殿?」
トンネコさんが心配そうにこちらを見ているがそんな事は既に意識の外側だ。
「・・・・・・い・・・・・・」
「い?」
「イヤッフゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!」
その日ミーシャの雄叫びがアーコードの空に木霊した。
次回からアーコード編に突入です。
13.05.14 一部修正しました、ご指摘ありがとうございます。




