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第十七話「さっそくトラブルですかそうですか」

 村を出て半日、俺は眉間のシワが深くなるのを感じていた。


「さすがは旦那だ、あの大蛇を手懐けるたぁ」


 原因は隣に並んで歩く男「ゴットン」

 筋骨隆々でシックスパック、小麦色に焼けた肌、綺麗に剃り上げた傷だらけのハゲ頭、あとごっついヒゲ。どこぞの海賊商会のオーナーみたいな男だ。

 そのおっさんがさっきから似合わないマシンガントーク炸裂中なのだ、頭痛すら覚える。


「いや、俺も貴族のせいで村を失った口でね。あの坊主の顔、思い出しただけでも気持ちが晴れるってやつでさぁ」


 そしてもう一つ、コイツ俺が女だと気づいてない。確かにちょっと芝居掛かった喋り方してたけどさぁ。


「旦那、旦那の名前、教えちゃくれませんか?」


 流石にこの脳筋っぽいおっさんでも名前教えりゃ性別に気づくだろう。


「・・・・・・ミーシャだ」


「ミーシャ・・・なんか女みてぇな名前ですなぁ」


 いや、俺女だし、コイツどんだけ鈍感なんだよ。

 そんな人の気持ちも知らずに、ゴットンは話を進める。


「さては世を忍ぶ仮の姿ってヤツですかい?」


(おい!どんだけだよ!その歳でその見た目で中二病とかやめてくださいよ!)


「あんだけお強い旦那の事だ、本当の名が知れれば面倒な事になるでしょうしなぁ、その姿は呪いか何かでしょうし」


(スケールが変わってるぞ!あとこの姿は年相応だ!)


「呪いが解ければ元の姿にも戻れましょう、そんな子供みたいなナリじゃなく元の力強い旅人の姿に」


 どうやらコイツの中では俺はオーガも裸足で逃げ出すような大男か化け物で確定してるようだ。

 悪かったなどうせチビだよ!!!


 もはや突っ込む気力も訂正する気も消え去った俺は放っておくことにした、もうなんかメンドくさい。


「おいお前・・・」


「俺はゴットンでさ」


「・・・ゴットン、俺はこんなナリだから色々と面倒だ。この先オメェがオヤジで俺が子供って役割で行動するからな。あと俺は金銭感覚や一般常識的な面に疎いところがあるしっかりサポートしろ」


 もともと俺はそのつもりだった、こんなガキが一人で旅などすればいいカモだ。まぁ俺なら大抵の事を力尽くで解決できるが。

 だからゴットンの同行も許可したし、何より俺は村の・・・正しくはラダッドの家以外の常識をあまり知らない。そこで金銭感覚や一般常識をある程度わきまえている(もと盗賊だが)ゴットンを使って不自然な所をなくそうという魂胆である。


「はは〜ん、なるほど、つまり旦那は冒険者じゃなくて・・・」


(さすがに俺が箱入り娘だとバレたか?)

 俺はゴットンの言葉に注意する。


「・・・・・・山奥に篭ってた大魔道士様でしたか!!!」


 俺は予想の斜め下方向の剛速球にすっ転びそうになる。


「いやあ、確かに魔道士様でしたら不思議な魔法を使われてもおかしくありませんし、その格好も魔力を強化する為の特殊なものなんでしょうなぁ」


 もちろん、この網代笠にも口元の布にもマントにもそんな力は無い。

 こんなのが盗賊の頭とか・・・・・部下の盗賊たちが可哀想に思えてきた。


「はぁ・・・ゴットンお前、その微妙な敬語をやめろ。なんか違和感しかない・・・」


「お、そうか?ガッハッハッハ」


 こんなタコ坊主に妙な敬語なんぞ使われたらこっちが精神的にまいってしまう。


「ふぅ・・・」


 俺が眉間の皺を揉みほぐす為ため息を付いて立ち止まった時だった。


ドスッ!


 足元に、立ち止まらずに歩いていたら体に刺さっていた位置に弓矢が一本突き刺さった。


「ッ!!」


 俺はとっさにそこから飛び退き、辺りを警戒する。


「だ、旦那!あそこだ!」


 俺はゴットンの指差す方向を確認した。するとそこには木に突っ込み中破した馬車とそれを取り囲む緑色の小さな化物が5体ほど。どう見ても馬車を襲っている。


「めんどくせえが・・・やられたらきっちりお返ししねぇとな」


 俺はそう呟くと馬車の方へ走り出していた。

2013.3.26 一部表現を修正

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