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第十五話「突撃!隣の領主宅!」


side「ミラー区領主:カンバス・ミラー」


領主のお屋敷その執務室で一人頭を抱える男が居た。

彼の名は「カンバス・ミラー」、よく肥えた体に上等な衣服、蓄えた口髭と禿げた頭のてっぺんにとうもろこしの様に残った金髪、しかしその顔には明らかな疲労の色が見て取れた。

搾取する側として不自由のない暮らしをおくる彼が何をそんなに悩むのか、その原因は息子にある。

彼の息子「ジル・ミラー」が最大の悩みの種だった。


ジルが成人(15歳)になってからの事だ。

執政区の一部をジルに任せ自分は後方に回る準備を進めている時の事だった。

カンバスが収める領地のあちこちで彼の預かり知らぬ命令が次々にくだされ始めた。

ありえない額の増税、人身売買の強要(もっともこの国では奴隷は珍しい物ではないが)、地上げ、盗賊などの癒着。

すべて息子であるジルの仕業だった。

最初のうちは小さな事件だった為に目もくれなかったそれがどんどんと数を増やし今では領地にカンバスの味方は残っていない。

事態が悪化した時には手遅れだった、ジルを捕まえ命令を撤回させようとした時には彼は既に一人だった。

ジルを押さえ付けていた部下でさえ買収された後だった。


ジルの要求はこうだった。


今までの通りに執政をする事

ジルに全ての権限を譲渡する事

その際の全ての事態を黙認する事

他の領地への情報操作

状況が悪くなった時の為の賄賂の資金繰り


等など


もしこの要求に従わない場合はカンバスがやっていた事を全て告発すると脅迫をしてきた。

カンバスも一人の人間だ、資金難の際には法に触れる様な事をやったことがある。

しかし、息子がしていることに比べれば霞んで見えるような悪事だった。

息子は頭が回る、もし従わなければない罪を着せられる事は火を見るより明らかだった。


夕暮れ時、執務室に堂々と構えるディスクの上で頭を抑え彼は唸る。

両サイドには執政に必要な書類が詰められた本棚が並び、ディスクの後ろには大きな窓が付いていて夕暮れ時の日差しを取り込んでいた。


コンコン


彼の思考はノックの音で中断される。

また息子が何かやらかしたのか・・・。

そう思い彼はドアを睨みつけた。


「誰だ?」


ドアに向かって呼び掛ける。

すると幼い声が帰ってきた。


「フィリス村からの使いでございます、是非ともご面会をお願いしたい」


(フィリス村?確か『神剣』が隠居している小さな村だったと思うが)


「・・・入れ」


彼はこの時気づいていない、なぜ声の主はこの部屋の入口に居るのか。

下級貴族で小さな領地とは言え領主の屋敷だ、もちろん入口には門番がいる。

屋敷内には小間使いが居るし、まず屋敷の住人が主人に取り次ぐのが常識のはずだ。

そしてその幼い声の主がなぜこの時間帯にこんな所に居るのか、村からこの屋敷まで馬で一日半の時間を要する。


しかし、その入口は一向に開く気配がない。


(一体何をしている?)


彼は不思議に思い部屋の前を確認するべく立ち上がった。

コツコツと静かな屋敷の中に彼の足音が響き、キィという音と共にドアが開けられる。


(・・・誰も・・・居ない?)


そこには誰も居なかった、只々薄暗い廊下が続くだけである。


心労が祟ったのか、幻聴でも聞いたのだろうか。

そんな事を考えながらディスクに戻ろうと室内に目を向けた時だ。


「っ!?」


そいつは居た。

奇妙な帽子と真っ黒なマントのチビだ。

口元は黒色の布で覆われていて表情はわからない。


入口はここしかない、窓ははめ込み式で開かない。

恐怖で背筋が沸き立つ様な感覚に襲われる。


「な、なんだ貴様!ど、どうやって入った!?」

「いや、なに、入口から」


そんな馬鹿な、入口には私が居る気付かない訳が無い。

混乱している私を無視するようにそいつは話を続ける。


「私はフィリス村からの使いで御座います。

 フィリス村は今、『蛇神様』のご加護の下に御座います。

 その村に害を成した者、すなわち貴方のご子息をお預かりして御座います。

 しかるべき罰を与え悔い改めるならばその身をお渡しいたしましょう。

 しかし、もしこのまま悪事を続ける様でしたら蛇神様から恐ろしくもおぞましい罰を受けることになりましょう」


蛇神?そんな物は聞いた事がない。

あそこには少ない余生を送る年老いた騎士しか居ないはずだ。


「ば、馬鹿馬鹿しい!脅迫のつもりか?」

「私の言葉を信じられないなら結構。

 私は只々、蛇神様のお言葉をお伝えしているだけに御座います。

 信じられないと仰るのでしたらご子息の安全は保証致しかねますが」

「なにをするつもりだ!?」


悪事を働いているとは言え息子だ、こんな怪しい奴に何をされるかわかったものではない。


「なに只、蛇神様のお怒りを鎮める為にご子息の御身と御霊をもって人柱と致しましょう。

 さすれば罰が貴方に下される事もないでしょう」

「馬鹿を言うな!むざむざ息子を見殺しになぞする物か!!」

「では、その意思をば蛇神様へお伝えしましょう」


すると部屋に差し込んでいた日の光がスッと無くなり、部屋の中が薄暗くなる。

私は反射的に窓の方へ目をやった、そこには・・・。


「っひ!?」


執務室の大きな窓から部屋を覗き込む大蛇が居た。


「では、貴方はご子息を引き取り、しかるべき罰を与え、今までの行いを恥、人々の為尽くすと誓いますね?」


私は蛇に睨まれた蛙の如く、只々頷く事しか出来なかった。

ヤツは私が頷くのを確認すると、大蛇の方を向きよくわからない言葉で何やら唱えだした。


「此に仰ぎ奉る 産土大神 恐み恐みも白さく―――――――」


ヤツが唱え終わると大蛇は窓から身を引きスゥーっと姿を消した。


「・・・大神の廣き厚き御恵を 辱く奉り 恐み恐みも白す」


ヤツは両手を合わせ深く礼を終えるとこちらを向き直り話しかけてくる。


「・・・では、ご子息のお迎えは後日村にお越し下さい。

 もし、いらっしゃらない様なら・・・・・・・」


「・・・あぁ、窓に!窓に!」


そこで私の意識は途絶えてしまった・・・。



side「ミーシャ」



「・・・ふぅ、難しい言葉なんか使うからかキャラがブレてたなぁ・・・」


領主の屋敷を出たところで一息ついていた俺は網代笠を手で少し押し上げ手の平を見る。

(網代笠は森に生えていた竹っぽい植物を編んで作った物だ、生前じいちゃんに教わった。なぜか陣笠の作り方も知ってたし、じいちゃん何者だよ・・・)


「オロチ・・・ご苦労さん」


俺の手の平には蛇神様、もといオロチが乗っている。


え?さっきまで馬鹿でかい大蛇じゃなかったかって?

それはコレ、なんと便利なマジックアイテムのご紹介!


先日、ガーデルマンから届いたのはこの銀のリングに小さな赤い宝石をはめ込んだ指輪。

その名も「守護の指輪」!

この指輪は契約を交わしたものをいつでもどこでも召喚できる優れモノ!

しかも召喚対象が特別な種族の場合、対象の大きさをコントロールする事も可能なのだ!

実際この2年で全長50メートルクラスまで成長していたオロチを音もなく林の中に出現させたり、デカくしすぎて村に入れないのでそこそこの大きさに調整したりと大活躍だった。

さらにさらに指輪の中には専用の居住空間まで生成され特別な種族の場合その中で飼育、育成も可能なモン○ターボールなみのハイテクなのです。


でもお高いんでしょう?


大丈夫、なんとこの指輪5つセットで大蛇の涙1つ分!

今ならガーデルマン先生の貴重な資料も付けてなんと驚きの安さでご提供!


まぁ、大蛇の涙1個分ってだけでバカみたに高いんだけどね。

しかもこの指輪並みの人間なら1匹契約するだけで命に関わるほどの魔力を消費するし、召喚中も容赦なく魔力を吸い取ってくる。

俺だからこれだけ扱える物であって王宮の最上級魔道士ですら満足に使役できるのは1匹が限界らしい。

ガーデルマンが5個も送りつけてくるあたり相当期待されているようだが・・・。

一応お返しにオロチから取れた大蛇の涙を一つ送っておいた。


どうやらオロチは俺の魔力を吸収して育っている様で、異常な速度で成長し魔力の容量も既に聖獣レベルに達している様だ。

あまりの吸収速度に大蛇の涙がボロボロ取れる、普通に考えれば億万長者なんてレベルではないのだが・・・。


「まぁ、あまり遅くなる前に帰るとしますか」


俺は『ライト・グラビティ』で自身の重力を軽くする。

そして『身体強化』で大ジャンプ。

ある程度の高さまで飛び上がったら『ウォール』で結界を足場がわりに設置。

後は『身体強化』でその上を猛ダッシュで村までひとっぱしりだ。


一見めっちゃメンドくさい事をしている様に見えるが、『アンチ・グラビティ+ブースト』より個々の消費魔力が少ないので長距離移動はこちらの方が向いている。


ここで『補助魔法の身体強化』と『魔力による身体強化』の違いに付いて語っておかなければなるまい。

え?おんなじ意味じゃねーのって?

これが違うんです。


ここで言う『補助魔法の身体強化』とは


『人間の体に掛かっているリミッターを外し普段ありえない力を出すもの』


要するに火事場の馬鹿力というやつを人為的に起こす魔法なんですねぇ。

当たり前、そんな事を長時間続けた上肉体を酷使すれば、筋肉は引きちぎれるわ骨は粉々になるわ、最悪死ぬ。


そこで『魔力による身体強化』の出番というわけ。


『細胞レベルで肉体を強化・補強・修復を行う』


つまりこの二つを併用する事で事実上人外を極めた様な力が発揮できる。

もちろん魔力の消費も激しいが(無属性魔法で魔力を大気中にバラまくよりはマシ)補助魔法単体よりリスクが減るし、俺の魔力量なら問題はない。

しかし、疲労は確実に蓄積するし、身体強化の効果として強化された視力や感覚の脳への負担が掛かるので鍛錬によってそれを軽減する。

まぁ、この移動自体が魔力制御の鍛錬にもなるし、ちょうどいいんだけど。


実際に補助魔法を使用するこの国の騎士などにおいては身体の基礎能力を上げるために並々ならぬ鍛錬を重ねるそうだ。


この速度で帰るのであれば今の時間帯なら人に見られる事もないし、あまり遅くはならないだろう。

そんな事より帰ってからの事のほうが気にかかる俺だった。

ご都合主義万歳ー!

後付け設定しまくりですね。

プロットはガンガン書き変わってるし・・・。


主人公より前世のじいちゃんの方がチートだったりして。

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