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第十三話「拒絶・・・そして・・・」


「状況は、最悪・・・か」


俺はそう呟いていた。


今の状況はこうだ


キースは自宅にて面会謝絶。

孤児院は火災により使用不能。

孤児院の子供達は一時的にラダッド家へ。

キースの情報により火事の犯人と貴族の計画がわかった事。

交渉当日はラダッド家代表としてなぜかメイドであるジュリーが交渉する事。

そして俺は村への立ち入り禁止処分。


最後の条件が何よりも痛い。

もともと髪と瞳の件で村での俺の好感度は少ない。

それがキースが怪我をした件で、

俺が交渉の場に割って入って状況をかき回した上怪我を負わせた

という扱いになってしまい、まさに村人から疫病神的扱いになってしまっていた。

それのせいでキースの妹にもすっごい嫌われてしまったし・・・。


「嫌われ者はやっぱり辛いなぁ・・・」


そして今日が約束の日・・・。

あの腐った貴族のやる事だ、ろくな事は無いだろう。

俺はいそいそと『準備』をはじめるのだった。



side「ジュリー」



村長宅。

その応接室の様な部屋で向かい合う貴族と村長。

相手方は領主の息子ジル・ミラー。

こちら側は村長と私。

旦那様から私が交渉に出るようにと仰せつかって来ましたが、既に交渉と言えるものではありません。

話の内容はラダッド家が今回の税徴収の不足分を肩代わりするという形で終わっています。


「ふん、まぁいいさ、これだけで勘弁してやろう」


そう言うとジルは立ち上がり玄関へと向かう。

私たちもそれに続き、玄関の前でジルの動きが止まった。


「・・・・・・ん〜?何やら外が騒がしいようだぞ?」


ジルはゆっくりと振り返り喋りだす。


「賊にでも目をつけられてるのか?」


実に驚いたように、しかし確実に楽しむ様にそう言い放った。


そんな馬鹿な!そう叫びたくなるのを必死で堪える。

あの少年の話では交渉が住めば助かるのでは無かったか。

村長も狼狽え、私も激しく混乱する。

しかし、もし村が襲われる様なら私だけでも村を守る盾にならねば。

もしもと思いスカートの中に隠した短剣に手を伸ばそうとした時だ。


外から村人だろうか数人がこの家(村長宅)に走ってくる音が聞こえる。


「まぁ、とりあえず外に出てようずげぇっ!?」


しかし足音は止まる事なく村長宅の玄関を蹴破り数人の男たちが飛び込んでくる。

扉の前に立っていた貴族を吹き飛ばして。

勢いよく飛び込んできたのは村人ではなく・・・


「あ、あんの貴族の坊主はどこだ!?」


ボロボロになった賊どもだった。

私は短剣を取り出し村長をかばうようにして男たちと対峙する。


「〜〜っつぅ!き、貴様ら何をする!」


衝撃で床に叩きつけられたジルは打ち付けたであろう鼻を抑えながら男たちを睨みつけた。


「てめぇ!それはこっちのセリフだ!俺たちを売りやがったな!?」

「な、なんの話だ!?」

「とぼけるんじゃねぇ!あんな化物がいるなんて聞いてねぇぞ!?

 こんな割に合わねえ仕事はごめんだ俺たちは降りる!」

「お、おい!待て!」


男たちはそう言い残すと外に飛び出していった。


「・・・っは!ま、待ちなさい!」


私はとにかく状況を把握する為に外に飛び出していた。


「な、なによコレ・・・」


そこにあったのは目を疑う様な光景だった。

後ろからついて来た村長も唖然としている。


「うぅ・・・」

「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ・・・」

「ぶくぶくぶくぶく・・・」

「おがーちゃーん!(ガタガタ)」

「あ、流れ星だ、綺麗だなぁ・・・いや違うな、流れ星はもっとパァってなるからなぁ・・・」


20人程の屈強な男たち(しかし無残にも傷だらけ)とそれに巻きつく様にとぐろを巻く大蛇。

南方の守り神であるグリーンスネークが村の中央の広場に鎮座していた。

住人たちも怯えて近づく事ができないでいる。

そんなモノに巻き付かれている野盗たちは気が気では無いだろう。

意識を失う者、失禁するもの、ひたすらに許しを請うもの、現実から逃げ出すもの。

まさにこの世の物とは思えない光景だった。


「ジュリーさん危ない!」


こちらへ走ってくるエミーが叫んでいた。

私はそこで後ろから発せられる殺気にやっと気づいた。


ジルがナイフを手に斬りかかって来ていたのだ。


(っく!間に合わない!!)


私はとっさに後ろへ飛び跳ねていた。


「っクソ!これでもくらえ・・・ぶげぇ!?」


本日何度目になるかの驚愕。

私に襲いかかるジルの顔面に両足で着地した小さな体。

頭には植物で編んだ様な不思議な三角形の帽子をかぶり、大きめの黒いマントに体を覆った人物がそこにいた。


ズダアァン!!


それはジルの顔面に乗っかったまま地面へと着地する。


「・・・か、かっぺ・・・」


ジルは無残にも衝撃で後頭部を打ち付け、歯は折れ、鼻血を垂らし、白目を向いて気を失っていた。


「・・・・・・ジュリー気を付けなよ」


私を一瞥しするとその人物は走り出す。


「ちょ、ま、待ちなさい!」


私は引き止めようとするがソレはありえないスピードで走り去ってしまっていた。

グリーンスネークもいつの間にやら綺麗さっぱり消え去っている。


「・・・・・・・」


そこには唖然とする私と村人たち、そして戦闘不能に陥った野盗だけが残っていた。

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