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第十二話「燃え上がる炎は・・・」

「・・・くそっ!」


俺は悪態をついていた。


キースが気絶してから20分。

俺たちは取り合えず孤児院の中で怪我の治療を行っていた。

キースの傷は左肩から肘にかけて、直撃したであろう左肩からは血を流している。

肘までは炎のせいか火傷を負っていた。

そこそこ威力の高い魔法が直撃した様であったがさすがは俺のスパルタ特訓に耐えるだけはある。

同じ年の普通の子供なら左肩は吹き飛んでいたであろう。

随分と丈夫に育ったものだ。


しかし、俺の悪態はそれだけの事ではない。


キースの治療が終わりひと段落したときである。

そう広くはない孤児院から火の手が上がった。

一箇所ではなく数箇所からそれも凄まじい勢いで。

孤児院はまさに蜂の巣を突っついた様になった。

子供たちは混乱し、ある者は泣きじゃくりある者は外に逃げるように周りを誘導する。

ミランダさんはキースを抱きかかえ周りの子供たちの誘導をしている。


しかし、出火が複数箇所、それもかなりの勢いである為に脱出経路の確保は困難だ。


「『タイム』」


俺は小声で時間魔法を発動する。

効果範囲は孤児院、対象は建物と炎に固定する。

これでほかの皆も移動が可能だ。


「これは一体・・・?」


いきなり周りの時間が止まった様に無音になる。

ミランダさんは事態が飲み込めていないのか足を止める。


「ミランダさん!そんな事より脱出を!

 村長さんも子供達の誘導をお願いします!」

「お、おお、わかった!」

「外に出たらある程度離れて子供達の安否を確認してください!

 絶対に中に戻る事が無い様に!」


俺は動きを止める周りに指示を飛ばし脱出を急がせる。

そして自分は逃げ遅れた者がいないかくまなく探してから脱出した。

脱出するとき孤児院の魔法を解除しておく。

時間停止中は外部からの干渉の一切を受け付けない。

時間を止められた物体は、

叩きつけようが蹴りつけようが傷一つ付かない置物と同じようになる。

水の時間を止めれば驚異的な硬さになる、もちろん破壊など不可能だ。

ただし、時間停止したものは置物と同じで抱えて動かすことはできる。

この場合炎はすごくリアルな置物と同じである、もちろん発熱も発光もしていない。

つまり時間が止まった炎は消化ができない。


「ミランダさん!全員無事ですか!?」

「ええ、みんな無事よ!」


それを聞いて孤児院を確認する。

魔法を解除してあまり時間は経っていないがかなりの燃え方だ。

これでは村の消火作業では間に合わない。


俺は近くにある小さな池を指差し範囲を指定する。


「『カット』」


指定された空間の中身は切り取られ一時的に別空間に隔離される。

そして、孤児院の上空を指差し展開の魔法を発動する。


「『ペースト』」


切り取られた池の中の水は孤児院の上に出現し、

結界という入れ物を失った大量の水は、

まさにバケツをひっくり返したように燃え盛る孤児院へと降り注いだ。

時間停止を解除した炎に大量の水が降り注ぎ水蒸気が上がる。

力技であるが消化は成功したようだ。



「ミーシャちゃん・・・これは?」

「ただの水魔法ですよ・・・ただの・・・ね」

「そう・・・」


ミランダさんは突っ込んで聞いてこなかった。いい人やわぁ。

もともと自分が『クロ』とか呼ばれて避けられている事は知っていた。

ミランダさんはともかくとして、村長などあからさまに嫌な顔をする。

ラダッドの家の者でなければ村に入る事すら出来無かっただろう。


(今回の事でこれからの身の振り方を考えねばならないだろうな)


そんな事が頭をよぎった時だった。


「お兄ちゃんっ!!?」


女の子がこちらに向かって走ってきていた。

歳は大体同じくらいか少し下、栗色の長い髪をポニーテールにしている。

孤児院の子供では見たことがないし、この状況下でお兄ちゃん・・・。

つまり・・・


「キースの妹!?」


妹居たのかよ・・・2年特訓に付き合ってるが見たことなかった。


俺は横たわっているキースに近づいていく、ラダッドの家からはエミー達が走ってくるのが見えた。

そして近くの林から去っていく男の姿も・・・・・・

13.10.17 一部表現を修正しました。

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