第百十話「少女の思い、彼女の思い」
「……疲れたーーっ! お家帰りたーい! たまご蒸しパンになりたーい!」
フジ島司令部の応接室でソファーに仰け反って叫びをあげるのはミーシャだった。
「……ミーシャがだいぶ荒れとるのぉ」
「陸軍のフリーダムさがかなり堪えた様で、開発部のとんでも兵器もストレスの原因ですね」
同じく応接室で紅茶を飲んでいたマシリーが窓の外を眺めると例の陸上戦艦ハウスラーテが鎮座しており、一人の少女が『イヤッッホォォォオオォオウ!! 最っ強だぜぇぇぇ!!』 と叫んでいた。
見なかった事にした。
技術部のオリヴィアがハウスラーテの上に居て、『これを作った私ったら天才ね! いや、むしろ、あたいったら最強ね!! イヤッッホォウ! 技術部最高ーっ!』などと叫んでいた。
見なかった事にした。
「お家帰りたーい! お風呂入りたーい!! ロォーマァーッ!!!」
負けじと窓の外に叫び返すミーシャを見てマシリーは大きなため息を吐いた。
「……これは、また、重症であるのぅ」
ミーシャが窓の外に向かって『ファーーーック! ユーー!!』と叫んだ時、応接室の扉が開きメアリ達が入ってきた。
「……これは、また、大荒れだな」
「ストレスの余り、ビグ・ラ◯グと化して『記録願います!』と叫ぶミーシャの図である」
「記録願いまーーーーっす!!!」
窓の外に叫ぶミーシャ。
「記録願いまーーーーっす!!!」
ハウスラーテの上から叫び返すオリヴィア。
「オリヴィアの奴は何を叫び返してるんだ? とゆうか、あいつは何をやってるんだ?」
「未熟なー! パイロットはー! 戦死するんですかーーっ!?」
「それはー! 論理のー! 飛躍だーーっ!!」
「うるさいわ貴様らっ!!!」
メアリが余りの惨状に怒り、ミーシャは我に返った。
「……はっ! 表紙そでの漫画作者みたいになってた!!」
「なんの話だ?」
「あ、いや……ゴホン! なんでも無い。で? なんか用か?」
ミーシャは何事も無かった様に話を振った。
「彼らの件だ。私は王国海軍から客が来るので失礼するよ。燃料2隻分と弾薬4セットと鉄11トンを分けて欲しいそうだ」
「軽巡関係ないだろ!? つか、王国海軍か、響と雪風はちゃんと運用出来てるのかねぇ……」
「客と言うのはその貸与艦の艦長だ。ヴィェールヌィ艦長とタンヤン艦長が来る。……あぁ、ヴィェールヌィ艦長から伝言があったな。『xopoшo』? だそうだ」
どうゆう意味だ、と首をかしげるメアリである。
「……『Спасибo』って伝えといて」
「? あぁ、わかった」
メアリは腑に落ちない感じだったが応接室を出ていった。
「ヴィェールヌィか、不死鳥の二つ名を持つ優秀な艦長らしいのー」
マシリーは紅茶を口に含む。
「……あなた、北部方言話せるのね? 難解なのに」
「ほんのちょっとな」
つか、北部方言ってロシア語かよ、と心の中で突っ込むミーシャだった。
「ミーシャのスペックは軽く世界水準越えであるからの」
「なんつーの? 立場的にも大和帝国のビッグセブン的な?」
「ビッグセブンどころかナンバーワンではないか。ふふ怖ー、であるの」
「ワケわかんないわよ。んで、私達はどうすんのよ?」
アイシーの言葉にキョトンとする二人。
「……あぁ、そういや出国禁止だったね」
「そうよ、ハナはいいけど私達三人は学校もあるし困るの」
「アイシーさん? 僕の事を忘れてません?」
完全に学校関係者として忘れられているウィルダーをほったらかしにしてアイシーはミーシャを睨み付けた。
「私も困るんだよねー。まださ、文化祭とか体育祭とか定番のイベント消化してないわけじゃん?」
「文化祭や体育祭が何かわかんねっけど、うちの学校にイベントなんて無いぜ? あってもうちらのクラスは参加資格ねーし」
「あ、じゃあ、やっぱ、いいわ。アパートからザワークラウトの壺だけ回収して引き上げよ。アパートは別に使えばいいし」
「ちょっと待ちなさいよ!!」
激昂するアイシーにミーシャは飄々とした態度を崩さない。
「なんならうちの国に新しく学校建てるからこっち来ない? 留学生としてさ」
「俺は学校出た実績があればいいし」
「ごはん美味しいからこっちがいい」
「全然良くないっ!!!」
アイシーの怒声が部屋に響いた。
アイシーの肩は小刻みに震え、視線はミーシャを射殺さんと睨み付ける。
その余りの迫力に他一同は呆気に取られていた。
「王国の! あの学校じゃなきゃダメなのよっ! こんな訳のわからない場所の学校を出たって言って誰が喜ぶの!? 私は! あの学校の! トップにならなきゃいけないの! 私の力で見返してやらなきゃいけないの!! 私の手で私を捨てた私の家に復讐しなきゃならないのっ!!!」
「…………はぁ〜っ……」
荒々しくまくし立てたアイシーに対しミーシャは深いため息を吐いたうえ、机に片肘をついて顎をのせ、さらには反対の腕を頭の上でプラプラするという完全に舐め腐った態度で語りかけた。
「やめなさいって。そんな事より面白い事は世の中にいっぱいあるでしょーに」
「なっ!? っ! うるさいうるさい!! あんたに何がわかるのよ! 私がどんな気持ちで追い出されたか! どんな気持ちで生きて来たか! 復讐こそが生きる目的なのよ! 見返してやるにしても、彼奴らをこの手で葬るにも!!」
「みんなそう言うの。親に捨てられた奴は特に。絶対に後悔させてやるって。周りも世界も巻き込んでめちゃくちゃにしてやるって。捨てられた自分が必死こいて生きてるのに奴らは気楽に生きてる、そんな理不尽な世の中はぶっ壊してやるって」
ミーシャは大げさなジェスチャーで語り続ける。
「奴らがひっくり返る様な事をやれば。そういう自分を見ればきっと奴らも自分を捨てた事を後悔するって。……でもそれはマチガイなワケ。そーんな事は全っ然っ無いわけ。結局は野垂れ死にしちゃったりしてさ。馬鹿な奴の馬鹿な死が、酒場の隅で酒の肴になってる頃には、『よ〜し、パパ頑張っちゃうぞ〜!』とか言っちゃって、子供コロコロ産ませちゃったりなんかして、呑気にバースデーパーチーなんかやっちゃったりなんかしちゃったりして、ドレスなんて買っちゃって『きゃー、かわいいねー』なんて言っちゃってさ。よしんば見返せたとして、利益があるならコロッコロッ手のひら返されてさ、用が済んだらポイよ、ポイ。それで世界は丸く収まって、『バカが馬鹿を見る、全て世は事もなし』ってなわけなのよね。馬鹿馬鹿しいと思わない?」
「うっ……それは……」
「だったらさぁ、やめよーぜ? みんなで幸せになろうよ」
「っ! なによ!? それで止めてるつもり? 人をからかうのもいい加減にして!」
「だからさぁ」
「だからさぁ、じゃないわよ! じゃあ、なに? あなたいい方法でも知ってるってゆーの!?」
アイシーの言葉にミーシャは不気味な笑みを浮かべて問いかけた。
「……知りたい?」
「……え?」
「いい方法、知りたい?」
「っ!? ……し、知りたいわ」
「…………知らない」
「……はぁっ!?」
「第一に、うちは軍隊国家だよ? お悩み相談室じゃないの、軍人や政治家はそーゆーのしないの」
ミーシャの言葉にワナワナと震えるアイシーだがミーシャは構わず続ける。
「助言くらいはしてあげる、でも手助けをする気は無いね」
「……もういいわよっ!」
「アイシーちゃん!?」
我慢の限界だったのだろう、アイシーは叫び、走り出していた。
「総統閣下、アパートの管理人をお連れし……おっと!?」
アイシーは部屋に入って来た兵士にぶつかりそうになるも部屋から飛び出して行った。
「閣下……今のは?」
「……マシリー、ちょっと彼女のお家の事、調べといて」
「天邪鬼だのぅ。我も暇では無いのだがの」
「お礼は精神的に返すからさぁ」
「にしたって言いかたがあるんじゃないか?」
ハナの言葉に肩をすくめたミーシャだったが、予想外の所から声が上がった。
アパートの話で呼ばれたシーアさんであった。
「……彼女の家の事は私がお話します。彼女は……アイシーは……私の妹なんです……」
くだらないあとがき。
『魔法使い(マジシャン)』それは異世界でのステータスの一つ。その人口の増加は魔法犯罪の増加に繋がった。帝国国内で多発する魔法犯罪。国家公安委員会はこの事態にC.V.33、カルロベローチェを配備し対抗した。警邏戦車、通称『パトパンツァー』の誕生である。
『装甲警察パトパンツァー』
って外伝思い付いたけど本編すすまないし、絶対怒られるから書かない。
長らくお待たせして申し訳ありません、作者です。
早く画面で動くレレイ嬢が見たい、作者です。
夏になったらGuPを観に映画館へ急げ、作者です。
Q.更新をサボっていた原因は?
1.プロットを考えていたら全く違う作品が出来ていた。
2.隼鷹姉さん轟沈のショックでRJに主力艦隊をたーんとお食べ、状態。
3.かわう……5500トン級がうるさかった。
4.最上んかわいい。
5.オリョクルはもういやでち! と言いつつまだ潜水艦娘にすら会えてない。
6.最上んかわいい。
7.WoTでヒャッホォォォウ! 最高だぜぇぇぇぇ!
8.てゆーかGuP観てた。
9.セラ重も読んでた。
10.てか、ゲートも一気読みしてた。
11.響かわいい。
12.那珂の人など居ない!!
A.全部。
本当にすみませんでした。
〜おまけ〜
本編で尺と話の流れからカットされた一幕。
「そんな事より腹減ったな。ちょっと出前頼むか。私はカツ丼だけどマシリーは? 麻婆茄子?」
「ナスは嫌”い”な”の”だ!!」




