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第百二話「日常から激動へ」


アジーナ暦1944年6月中旬


私は見慣れた天井を眺めながら起床する。

アレから二ヶ月。

本国から内政や外交の成果を聞きながらアパートで生活している。


流しで顔を洗い、冷蔵庫から卵を取り出してフライパンで焼く、平行して食パンをトースターで焼きながらコーヒーを淹れる。


「いただきま~す」


ブラックのモカコーヒーとエッグトーストを堪能したあと鞄を取って部屋を出る。


ガチャ

ガチャ


「おはよう、ミーシャちゃん」

「おはよ、先生」


隣の201号室から出て来るウィルダー先生と挨拶を交わすのも日課だ。

てか、教師が生徒と同じ時間に家を出て良いのか?


私は先生と一緒にアパートの側面の階段を降りる。


「シーアさん、おはよー」

「はい、おはようございます」


いつもこの時間に掃き掃除をしているシーアさんに声を掛ける。


「おっお、おおお、おはよう、ございますっ!」

「はい、おはようございます」


先生がめっちゃキョドってる。

まぁ、首を突っ込むのも野暮かなと思って放置。


「そうと……ミーシャさん、おはようございます」

「サニー、おはよ」


203号室のサニー・ユンカース大尉が居たので挨拶。

後ろを見ると。


「……また?」

「またですね」

「……んごぉ~~っ! Zzz……」


ゴミ収集用の小屋に頭から突っ込んで寝てるハナさんが居た。


「……ハナさ~ん、ハナさ~ん」

「……まだまだ……飲める……ぞぉ~……ぐごぉ~……」


あ、ダメだこりゃ。


「サニー、お願い」

「了解しました」


言うとサニーはハナさんを引きずって行き104号室に放り込んでいた。

扱い雑じゃね?


まぁ、この二ヶ月、いつもの事なのでもう突っ込まないがな。


というわけで、いつもこんな流れで学校に向かう。


道中の乞食や浮浪者、孤児達はほとんど見かけなくなった。

これは、大和帝国が身寄りの無い者や、ホームレスを労働力にしている為だ。

労働力と言っても奴隷では無い、給金もあるし、休みもある、健康保険や労働組合だってある。

給金が良いが訓練の厳しく実戦に出される軍隊か、一般労働者に比べて多少劣る給金の生産工場勤務か。

軍属なら戦闘科以外にも運送や補給なんかも配属先に有るので本人の力量や人格、年齢に体力を見て割り振ってる。

おかげで軍事力の増加や生産力の向上が目に見えてデータに出ていた。

スラムの生まれでも軍属になった孤児達は愛国心の溢れる優秀な人材ぞろいらしいしな。


それでも、ちらほら見かけるのが、街のシステムに組み込まれている者たちだった。

どこかの組織の構成員だったり、チームを作って徒党を組んでいたり。

大和帝国の労働者になるのは原則としては任意だ。

働き口がない浮浪者は願ったり叶ったりで帝国本土に輸送されたが、例外も居るわけだった。


まぁ、この道沿いでアパートの住人にちょっかいを出すチンピラは一ヶ月前に駆逐済みなので安心っちゃぁ、安心なのだ。




******




「……はい、ここまでがナナル王国の発展の歴史です。……では十分ほど休憩」


ウィルダー先生が本を閉じる。

もちろん、O組の私達には教科書なんて無い。

しかし、私が無償で提供した黒板とノートがあるので授業には困っていない。

むしろ、時間割を見れば困らない訳が分かる。


一時間目

社会史:担当ウィルダー

二時間目

理科(生物):担当ウィルダー

三時間目

理科(科学):担当ミーシャ

四時間目

魔術(一般):担当ウィルダー

五時間目

魔術(特殊):担当ミーシャ

六時間目

数術:担当ミーシャ

七時間目

薬学:担当ウィルダー


である。


なんでガッツリ組み込まれてるんですかねぇ?


ちなみに私の担当教科は全て教科書配布済みである。


あと、私の授業が始まったら何故か学園長と理事長が机持参で来てガッツリ授業に参加して行くし、ウィルダー先生も当たり前見たいに陣取って聞く側に居るし。


一応、学園側から受講料が払われるので良いんだが。

つか、払われる受講料の額がビックリする金額なんだが。

学園の経営傾くんじゃねーかな?


まぁ、授業の内容については大和の教育水準より低めに設定してある上、公開可能な範囲は大和が既に公開しているので直接教えてもらえるか、書面で覚えるかの違いだけど。


そして、私は授業をした後、夕飯を買って帰るのだ。


しかし、その日はいつもと違った、




******




夕焼け色に染まる帰り道。


いつもなら何事も無く帰宅するのだが。


その日は何故かサニー大尉がアパートの前で待っていた。


「……閣下。例の件に進展が。つきましては一時的に本国へお戻りください」


ついに、この時が来てしまった。

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