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第一話:訪問者

男の主人公をあまり書かないので、難しいです(涙)気楽に読んでもらえると嬉しいです!

万病を治す薬を調合する事の出来る医者がいる。

名をグロウ。

万能薬の材料となる蛍惑草(グロウ)と同じ名をもつ男だ。

人々はさぞかし凛々しい男だろうと期待して行くのだが、ヤブ医者としか言いようのない姿をみて絶句する。

「あなたがグロウ…」


「ああ、そうだ。なにか悪いか?」

長い髪を適当に束ね無精髭を生やした青年の一言に、胸をはずませてやってきた娘の期待は砕かれた。


貴公子の如く見目麗しい姿の医者などいるはずもないのだが、なぜか皆がその姿をグロウだと思いこんでいるらしい。


「なんだ、おまえも俺を美青年と勘違いか?は、残念だったな。さっさと帰れ」



グロウに鼻で笑われ、娘はやっと現実に戻ってくる。


「い、いえ、けしてそういうわけでは。私はコゼットと申します。今日病を治してもらおうと思い来たのです」




「なんのだ?」




「恋患いです」




「……」

す」


「……」

グロウはコゼットを変人を見るような目で数秒見つめた。

「あなたが、万病に効くという薬を調合できると聞いて…」


「そんなもの、自然治癒だ。恋患いが病だと?ふざけるのは喜劇の中にしてくれ」


「万病を治すと言うから来たのです!毎日、愛しいあの人を想う度に胸が熱くなり、食事もろくに喉を通らず…」


「にもかかわらず、俺が美青年かも知れんと思ってきたのか?そんな安っぽい恋患いなど、腹を空かせた野良犬さえ食わんぞ」


「……」

心が純粋で正義感に溢れ、困っている者をけして見捨てない。

そんなことは誰が言いふらしたのか知らないが、そう期待してやって来る人々は、彼と直接会い必ず絶望するのだ。

コゼットがただただ何も言えず立ち尽くしていると、突然ドアが開き派手な格好をした女が現れた。

「お、また哀れな患者が増えたね。あんたもバカだねぇ、噂を信じてこんなヤブ医者のところに来るなんてさ」

軽やかに笑いながら、女はグロウの肩を叩く。

「だ、誰ですか、あなた」

コゼットは馬鹿にされたのが気にくわず、声を荒げて尋ねた。

「わたしは娼婦のレティアだよ」


「その娼婦が何しに来たんだ。また、客にそのケバい顔見て逃げられたのか?」

グロウはそう言ってレティアの顔を見た。

「白く塗り固めた壁みたいだぞ」

レティアの顔がひきつる。

「悪かったね。ヤブ医者!せっかくいつもとは違う患者連れてきてやったのに」


「いつもとは違う患者…?」

グロウは目を細めた。

レティアの存在感が強すぎて気付いてなかったが、ドアの所に幼い少年が立っていた。

「こいつ…」

グロウは少年を見て言葉を失った。

少年の腕には蛇が絡みついていた。

しかもその蛇は体を腕の一部へと変化させている。

そう、まるで彼の腕から蛇が顔を出しているかのようだ。

「この子、蛇に噛まれてるわよっ」

コゼットが蛇を払おうとするのを、グロウは止めた。

「やめろ。この蛇は払っても無駄だ。もう、こいつの体の一部なんだ」


「えっ?」

コゼットは驚き少年を見る。少年は伏せ目がちにグロウを見つめた。

「その通りです。僕の体に絡みついているのは、寄生蛇(セクール)なんです…」


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