途方もない旅
実話ではありませんが、スッキリする話だと思って投稿しました。
俺は今、不動産業の会社で営業マンとして働いている。
昼休みの休憩時間に会社の屋上でコーヒーを飲みながら煙草を吸う。
そんな時に、ふと、3年前の出来事を思い出す。
当時、俺は22歳の引篭もりだった。
中学時代に不登校になり、バイトをしながら、高校認定卒業資格を取得し、現役のまま念願の大学に入学したのは良かったのだけど、大学の雰囲気に馴染めずに、そのまま中退。
そして3年間、引篭もり生活が始まった。
それから、次第に精神面が悪化して行った。
(死にたい)
引篭もり生活をしている俺に対して親は何も言わない。
兄弟は俺を罵ったりもする。
そんな生活。未来がない人生に嫌になった。
こんな生活を終わらす為に、銀行の口座から全財産の13万円をおろし、太い縄を用意し、リュックに詰め込み、自殺スポットで有名なある樹海に向かった。
樹海近くの駅前のコンビニでコーヒーを飲もうと思い、コンビニに立ち寄ろうとすると、不良集団の若者が4人がたむろっていた。
俺はその不良と目が合うが、目を逸らしコンビニでコーヒーを買い、コンビニから出ると、不良たちは俺の事を睨んでいる。
どうせ死ぬのだから、この不良たちに言いたい事を言おう。
そう感じて、不良に向かってこう言ってやった「お前ら!ここにいたら客の迷惑だろ!」
笑える事に、初めて言葉と言う言葉を発したせいで、声が震えている。
すると不良の1人が立ち上がり「あぁ?何言ってんの?お前」
急に恐怖心が芽生えた。
それでも、俺は引かずに「だから、迷惑だろ!消えろよ!」
そう一喝した。
不良の1人は笑いながら俺に「こんな大声を夜中に言うお前こそが迷惑だと思うよ」と笑っている。
確かにそうだ。
不良たちは俺のことを襲う気配はない。
「お兄さん?おっさんかな。どこから来たの?」
不良だと思ってた奴達は以外に話せばわかる奴だ。
事情を説明した。
今から死のうと思っている事など。全てを
すると、不良達はコンビニの前に止めてあるバイクの後ろに乗れと指図をする。
言われるままに、バイクの後ろに乗り、そこから奇妙なツーリングが始まった。
信号待ちの時間に運転する不良はこう言う。
「おっさん。死ぬなら、俺達と遊んでから死ねよ。意外に楽しいからさ。バイクを運転していると、風が体全身に当たって気持ちが良くなるんだよ」
確かにバイクを乗るのは初めてで、後ろに乗るのも気持ちが良いと感じた。
不良たちは、それから近くの不良の家に遊びに来るように誘った。
神山と言う不良は17歳で、高校を中退して何もやる事がなく、毎日のように友達と遊んでいると言う。
夜中に神山の家に突然、お邪魔したが、神山の家族は寝ているようで、他の不良たちも静かに神山の部屋に向かった。
「あんた、名前はなんて言うの?」
神山はそう尋ねる。
「日下部誠」
そう言うと、神山はクサちゃんと俺をあだ名で勝手に呼ぶ。
そして、神山と他の3人で雑談のトークが始まった。
「へー。クサちゃんは引篭もりだったんだ。俺も引篭もりみたいなもんだし。クサちゃんはまだ若いんだから、頑張れよ」
神山の目には、温かい優しい目をしている事に初めて気がついた。
「今日はこの家に泊まれよ!」
初めて、心を打ち明ける事が出来る人間と出会えた事に、これまでのストレスが全て放出されたような気がした。
俺が今持っているリュックの中の縄で人生を終わらせる。
何だか、死ぬのが馬鹿馬鹿しくなった。
それから、朝の5時頃、
神山含め全員が眠っている。
俺はゆっくり、リュックからペンとノートを取り出し、こうノートに書いた。
(神山君。ありがとう。なんだか生きる勇気が持てたよ。
これは俺の気持ちだ。)
メモを神山の部屋のテーブルの上に置き。
そして財布から10万円を置き、俺はゆっくりと神山の家から出た。
それから、数年。
俺は不動産業者になる為に資格の勉強した。
そして今、コーヒーを飲んでいる会社の屋上で自殺願望があった自分とは別の自分が居る。
コーヒーを飲む度に神山との思い出が蘇る。
今も神山とは友達。
いや、命の恩人。
違う。
最高の友達になっている。
生きる事は素晴らしいと思えもらえたら嬉しいです。




