今更ながらに
コンテストに投稿した物なのですが、せっかく書いたのでここにもUP。
Smile Japan.にも。
あなたと私が初めて会ったのは、親の決めたお見合いでしたね。
渡された写真を見て、真面目そうな人だなって・・・会ってみたらその通りの人でした。
紺色のスーツに、似たような紺に青と白のラインの入ったネクタイを締めて、
後から来たあなたは、座ったらそのまんま。不動で固まってましたね?
出されたお茶にも手を伸ばさず、おまけに口下手。
聞かれた事だけ真面目に答えて、後は私の話と、世話をしてくれた叔母さんの話に耳を傾けていましたね。
そんな所がおかしくて、帰ってから母に印象を聞かれ、
「悪い人ではなかったと思う。」
そう答えたら、あれよあれよと勝手に話は進んでて・・・
いつの間にか結婚式の日取りが決まっていました。
一緒になってもあなたはやっぱり真面目で、誠実で。
正直言って、多少物足りないなって思った事はありますけど、
二人から、三人、そして四人と家族が増えて、子供に振り回される生活に、
そんな事はどうでもよくなりました。
そんな時間も・・・長かった気もするけど、今思えばあっという間だったのかしらね?
家の中は三人になり、また二人になりました。
今更二人だけって、しかも定年を迎えて四六時中あなたが家にいて、
慣れない時間に始めのうちこそ戸惑いましたが、もう諦めました。
ここはあなたの家で、私はあなたの妻なんですものね。
母親業ばかりで、そういう事は長い事忘れてましたよ。
・・・でも、せっかくそう思えるようになったのに、今この家にいるのは私一人だけ。
一人だと何か違いますね。実はこの家、随分と広かったんですね?
私と同じで結構ガタがきてますけど、これもそれぞれ思い出と、愛着があるのよねぇ。
さて、そろそろ病院に行かないと。着替えやタオルを持って行って、
洗濯物を持って帰らなくてはね。
それにね、やっぱり日に一度はあなたの顔を見ないと落ち着かないんですよ。
・・・変なものですね?
病室に入ると、
「おう、来たか。」
って、あなたはそれだけ。
でも少し目が優しくなりますよね?
やっぱり私が一方的に話してるだけの気もするけれど、以前より聞いてくれるようになりましたよね?
入院してからは返事をしてくれる割合も増えて、そういうの嬉しいんですよ?
今になってようやく、あなたと二人でいる時間が心から楽しくなりましたよ。
だから頑張って下さいね。もう少し、いえ・・・できるだけ長く私をワクワクさせて下さい。
また二人で、あの家で・・・ね?
今思い返してみると、あなたとの時間はそう悪いものじゃ無かったと思いますよ?
あぁそうだ、今聞いてみようかしら。
「ねぇ、あのお見合いで、あなたは私のどこを気に入って下さったんですか?」
「恋愛風景」というお題で、どの辺りを扱ったものかと頭を悩ませて、
通りがかった旦那に尋ねてみると、
「年取ったの」
・・・いやぁ、目から鱗。
という事で、その線でお話を展開させてみました。