青空計画開始 3
それからしばらくして、私達はご飯を食べる事にした。
ハルマちゃんに焚き火の準備をしてもらっている間に、私は家に戻ってご飯の準備を始めた。
「山菜と、火打石。あ、後ナイフも必要かな。それと、フライパ――いだッ!」
手に持ったフライパンは、左手の激痛で甲高い音を立てながら地面に落ちた。
「どしたぁー」
「――なんでもない! 手を滑らせただけ!」
心配の声に私は誤魔化して、左手をみた。
爪だけじゃなくて肉も裂けてる……。
うへー、グロい。
こんなの見せたら好感度マイナスだよね……。
包帯包帯。
ベッドに置いてあった包帯を手に取って、一時的な応急処置をした。
とりあえず今はご飯を作って好感度アップを狙う!
手当の暇なんてない!
という事で準備をした物を手に取り、家の外に出た。
「はい、ハルマちゃん」
「ん。ん?」
私はハルマちゃんにナイフを渡して、火の準備を始めた。
カンッカンッ
いったー!
左手痛すぎるよこれ!
石を打つ度に、左手に激痛が走る。
あまりの痛さに力を入れられない。
「ハルマちゃん、ごめん助けて」
「――たく、仕方ねえな。貸してみろ」
ハルマちゃんはやれやれとした顔をしながら、火打石を受け取った。
「使い方わかる……?」
「舐めんな。ママに教わったし、本も一回読んだ事ある。お前は手休めとけ。左手……痛むんだろ。後で見せてみろ」
ハルマちゃんは私の言動から、左手が痛む事を見抜いた。
気遣う素ぶりに私は咄嗟に左手を隠して、首を横に張った。
「違う違う。トンカチ振りすぎて力無くなっちゃったの」
「……そうか」
「……。あ、私ヤジンの下処理してくるね。えっと、ナイフナイフ〜」
バレそうなのと嘘をつく後ろめたさで、気まずさから私はヤジンの死体まで走った。
ふぅ、ふぅ。
あっぶな〜。
私は高鳴る心臓を押さえて、ヤジンの死体に頭を預けた。
さっきからなんか……、ハルマちゃんめちゃくちゃ優しい……!
何あれ何あれ!こっちが先に好感度マックスになっちゃうよ!!!
沢山手伝ってくれるの……久しぶりに感じちゃう。
お母さんの温もり――。
強敵だ……!こっちが先に心を掴まれちゃう!
フッフッフッ、でも私にその技を教えたのは間違いだったよ!
お母さんの温もり、私も使っていくからね!
新技を習得した私は不敵な笑みを浮かべながら、ヤジンの下処理を開始した。
でっかいなぁ〜。
みた感じ、3m級かな……?
とりあえず皮を剥げばいいかな?
……デカすぎて全部の皮は無理だ。
勿体無いけど食える部分だけ取って、後は自然に帰そう。
私は1キロぐらいの肉を切り取って、ハルマちゃんの元へ戻った。
火はもうできてる。
よし、料理開始だ。
私は調味料を駆使して、鮮やかにご飯を作り始めた。
どう?この巧みなスキル!
好感度上がるんじゃなーい?ハルマちゃん!
私はフライパンを振りながらチラリと視線を送った。
でもハルマちゃんはこっちを見るどころか、森の方ばかり見てた。
仕方ないけどさぁ!悔しいよねえ!
料理完成ッッッッ!!!!!!
「ヤジンのお肉のステーキです。どうぞー。私のは昼の残りのお粥」
ハルマちゃんの目の前に皿を置いて、フォークを渡した。
「…………んぁ。」
ハルマちゃんは豪快に肉に齧り付いて、口の中で転がしながら味わい始めた。
定期的に森の領域際際に置いてある死体と肉を交互に見て、ゆっくりと飲み込んだ後私の方へ振り向いた。
「美味い。マジで」
キッッッッタァァァァァ!!!
ポイント追加きたでしょ!
小さくガッツポーズ!
「ほら、ナズハも食ってみろ。美味しいから」
…………え?
喜びから一転、顔を上げるとハルマちゃんが笑顔で肉を差し出してきていた。
「えーと………………。それ、ハルマちゃんのだし……?」
「別にまだあるしいいよ。食ってみな」
私は唾を飲み込み目を瞑った。
私、ヤジン食べるの……??
本ッッ当にやだかも……。――でも、これ食べなきゃ好感度が……。
いいの?本当に食べていいのかなこれ。私大丈夫???
――か、加熱の力……!!!
「ぁぁぁあああイッッ!」
勇気を振り絞って思いっきり噛みついた。
その瞬間私の体に電流が走った。
「な、なにこれぇぇぇ。味濃くて美味しいいいいいい」
「な?いったろ」
ハルマちゃんの言う通りだった。
私は肉をよく味わった後、手元にあったお粥に飛びついた。
お粥も美味いけど、こっちは香りとか優しい味だ。
ヤジンの方が美味しい!ヤジン、恐るべし!
私はお粥と睨めっこした後、ハルマちゃんの方へ勢いよく顔を上げた。
「ハルマちゃん!私もあげる。さっきとは違って、あったかいから美味しいよ!」
「うっ……あ〜、うん……。」
ハルマちゃんは差し出されたお粥を睨みながら、少し私から距離をとった。
「大丈夫、不味くないって」
スプーンでお粥を掬って、ハルマちゃんの方へ手を伸ばす。
こんな事したらマイナスかも知れないけど、私にはちゃんと考えがあるの。
そう、これ。『あーん』。
お母さんの温もりの力で、プラスマイナスゼロにする!
この力で私はノーリスクで、お粥の美味しさを渡せるの!
「ほら、ハルマちゃん。あーん。」
「あ、一回だけだからな……!!」
ハルマちゃんは顔をプルプルと震わせて、目を瞑りながらお粥を食べた。
「不味い!!」
すぐに吐き出した。
そして舌を両手で擦りながら私からさらに距離をとった。
「もう2度と食べないからな!」
ごめん、ハルマちゃん。
でもこれでわかった。
私とハルマちゃんの味覚はちゃんと似てるはず。好き嫌いの原因は、食って来た物のせいだ。
私はずっと山菜食べてたから気にならないけど、ハルマちゃんは味の濃いヤジンを食べてた。
濃い味に慣れてたせいで、味が薄くて不味く感じたんだ。
つまり味の濃い調味料があれば、山菜でも満足してくれるはず!!
フッフッフッ、いい実験だった!
――それからご飯を食べ終わった私達は、火消しをして就寝の準備に入った。
ベッドはもちろんハルマちゃんの物――好感度アップ――、私は床に布を敷いて寝るの。
寝る準備をしていた途中、私はこんな提案をした。
「ねぇねぇハルマちゃん。明日からさ、好感度の上下を数字で表さない?」
「なんで?」
ハルマちゃんはベッドに転んだ状態から座った状態に変えて、首を傾げて私の方を見た。
「私目で見えた方が燃えるタイプだからさ、やる気の為に欲しいな。お願い、私頑張るからさ」
ボードとペンをハルマちゃんの膝に置いて、両手でハルマちゃんの手を包み込んだ。
そしてわざと膝立ちに変えて、ハルマちゃんを見上げた。
こうすれば優しいハルマちゃんは絶対受けてくれるはず!
ごめんね!卑怯だけど青空のためなの!
「ん、うん……。そこまで頼まれたらなぁ……。別に変な事じゃないし、いいよぉ」
ハルマちゃんは眉を下げてもじもじしながら答えた。
思った通り!
「これに書けばいいの?」
「うん、沢山書くから小さくね。えっと、大好きがプラス100で、大嫌いがマイナス100にしてね」
「うん。――じゃあ、ベッドの上の方に置いておくから明日見て」
今日のプラスマイナスを書き終えたハルマちゃんは、そのままベッドに潜り込んだ。
それに合わせて私もランタンを消して、寝転んだ――。
――横になってから1時間後、私はこっそり立ち上がった。
ハルマちゃんに近づいてちゃんと寝ているかの確認をした後、私は机に向かった。
明かりを小さくランタンをつけて、手紙を書き始めた。
ハルマちゃんを落としにいくには、もっと私に力がいる。
植物の知識、物理の知識、ヤジンの知識、料理の調味料。
最近してなかった支給の要請の手紙。
私は書き終えた手紙を床の隙間に差し込んだ。
うん、これでよし。
支給品を使って、明日も頑張るぞ!!




