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百万点の青空を目指して  作者: 綜目月 梶才


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青空計画開始 2

 私は泣き終わった後、すぐにハルマちゃんの骨折の治療を始めた。

 ハルマちゃんをベッドに座らせて、添え木を用意して、包帯で巻いて、完璧な状態に。


ここからスタートする。

私はもう泣かない。

ここまで譲歩してもらったんだ、覚悟を決めた。

絶対好きにさせる!


私は生き残った時計をチラリと見た。

時刻は16時、スタートダッシュを決める。


「ハルマちゃん」


「ん?」


「今ハルマちゃんが何思ってるか当ててあげる! ジャジャーン!」


 私は机の上に置いていた鍋を持って、顔の前に差し出した。


「お腹空いてるでしょ! ちょっと冷めてるけど、美味しいよ!」


「え、すげえ!当たってる! ありがと!」


 ハルマちゃんは嬉しそうに鍋の中のスプーンを手に取り、口に運んだ。



ふふふ、やるからには全力だからね。

記憶障害を利用しちゃった。

ハルマちゃんは出会った当初の記憶多分ない、だからその時ハルマちゃん自身が喋った言葉も覚えてないはず!

その時喋ってた言葉は『ご飯』!スタートダッシュは完璧だよ!




「うゎ。ぺッ!まず!」



…………えええぇぇぇぇぇぇ!!!???

精一杯作ったよ!?美味しいものしか入れてないでしょ!


「え、ちょっと貸して」


私はスプーンを受け取り、お粥を一口食べてみた。

うっま――。


お粥は確実にビックリするぐらい美味かった。


「美味しいじゃん!滅茶苦茶美味しいよ! これまずいって、ハルマちゃん普段何食べてるの!」


「ヤジン」


はあああぁぁぁぁぁぁ!?!?

ヤジンってあのヤジン!?

あの、化け物を!?

うわ、だから口臭かったんだ!

いや、ていうか――


「――なんてもの食ってんの! 加熱は!?寄生虫は!? 病気になるよ!」


 私は粉々になった棚の残骸から本を取ってきて、ハルマちゃんの目の前で開いた。

そして肉の危険性を熱弁し始めた。


だけどハルマちゃんは完全な上の空。

話が終わった後、欠伸をしながら一言吐いた。


「私なってないぞ。何でか知らないけど、ヤジンだけは生で食えんだよ」


頭がクラクラしてきた。

 ヤジン食うなんて、ハルマちゃんの胃袋掴むとか無理じゃん……。


 スタートダッシュの結果は、不味いものを渡した事により更にマイナスになった。




――次に私はハルマちゃんの目の前で、壁を直し始めた。


 頼りになる感をここで出して、好感度を上げる作戦。

 ハルマちゃんがあけた大穴二つ、これを完璧に直せたら上がる事間違いなし!



トンテンカン

トンテンカン

トンテンカ――


「――あいた!」


 直し始めて30分流石に外が暗くなり始めて、ハルマちゃんが持ってるランタンだけじゃ手先が見えにくくなってきた。

そのせいで私は親指を打ちつけてしまった。


「ヒー、痛い。やらかしちゃった」


「……はぁ、変われ」


 飛び跳ねながら左手を振っていると、ハルマちゃんがランタンを差し出して、トンカチを奪い取ってきた。


「要はこの釘で固定すればいいんだろ」


トカカカカカカカカカカカカカカ


 そういうとハルマちゃんは、ものの30秒で全ての木の板を貼り終えた。


「……すご」


 私が放心しているとハルマちゃんはトンカチを差し出して、森の方へ歩き始めた。


「え、あ、どこ行くの!」


「メシ。すぐ戻る。それまでにもう片方直しとけ」



あぁ、行っちゃった。

――ヤバいな私、今の所いいところゼロだ。

 すぐ戻るって何分ぐらい?それまでに壁直してなきゃ、またマイナスになるかも……



私は家の左側に木の板と釘を運んだ。

 そして自分の左手、トンカチを見て、おでこを少し触った。



 ハルマちゃんが早かったのは、力を込めてたからだ。

私はぶつかるのを怖がって、力が弱かったんだ。

――覚悟を決めるって言ったもん、頑張らなきゃ。





――(ふぅ。左腕使えねえとやっぱ、疲れるな。さて、帰るか)


 ハルマは倒したヤジンを引きずり、ナズハの待つ家を向かう。


(25分ぐらいかかったかな? 帰るのも合わせて30分か。ナズハは……、終わってねえだろうな。――仕方ねえ、また私がやるか。)


 多少迷いながらも、7分ほどかけてハルマは家に着いた。

 そしてヤジンの死体を近くに放り投げ、溜め息を吐きながらもう片方の穴の方へ向かった。


「帰ったぞ。後は私がやる、変わ……れ……」


穴を見るなりハルマは驚いた。

 先程は30分かけて4割程の進みだったのに対して、今回は31分の時間で全てを終わらせていたのだ。


「あ、ハルマちゃんおかえり!大丈夫だった?」


ナズハはハルマに気づくなり、笑顔で抱きついた。


「……う、うん。大丈夫だったけど。これ、どうやった? 早すぎね?」


 ハルマが指差した壁を見て、ナズハは笑顔のまま眉を垂らした。


「ハルマちゃんに褒められたくて、頑張ったの! ハルマちゃんみたいに、力を込めてトンカンって!」


(…………。んっ――。)


 ナズハの言葉にハルマは胸の中に違和感を覚えて、少し撫でた。

そしてすぐその手をナズハの頭に移した。


「ちょい認め」






――きたよおぉ!初めてのプラスだ!

頑張った甲斐があったよ!


 私はハルマちゃんに頭を撫でられながら、胸に顔を埋めた。

 人生で初めて前進した気がして、胸が嬉しさで一杯になった。



 私はハルマちゃんの胸でその喜びの心地よさをしばらく楽しむ、爪が割れて真っ赤に染まった左手を隠しながら。

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