青空計画開始
その後目が覚めた私は女の子に平謝りして、家までもう一度来てもらった。
心を掴む、その為に全力おべっかタイムスタートだ。
「で、何のようだよ。家返したのに、なんかまだあんの?」
「いや、文句とかじゃないの。その、お願いがあってさ。一旦、ベッドか椅子好きな方に座って」
「ふーん」
女の子は言われた通り大人しく椅子に座ってくれた。
私は近くにあったいい感じの箱を机を挟んだ対面に置いて、その箱に座った。
(よし、やっとここまで来た。……ここまで大変だったんだから、絶対に失敗しちゃダメ! 心を掴む! 頑張ろう!)
でもいざ出そうとするとやっぱり勇気がいる。
両手を太ももで挟んでモジモジが止まらない。
――よく考えたら私、お母さん以外の人と話した事ない。
む、難しい。
「……。まだか?」
「ッ、はい!」
驚いて顔を上げると、少しイラついてる様子でこっちを見ていた。
その姿に覚悟を決めた私は咄嗟に漏れた声に縋り付くように、流れで言葉を吐き始めた。
「あ、あの。その私、見て分かる通り弱くて……。貴方は凄く強いでしょ……。だから、お願いがあって。そんなヤジンも倒せる貴方に、西に、青空に連れて行って欲しくて。」
凄くしどろもどろ。
自分でもめちゃくちゃだって分かるぐらい、何言ってんだろって感じ。
これは、失敗かも。
泳がせた目でチラチラと女の子の方を見て、返答を待った。
「ヤダ。なんで、わざわざ私が――」
「――タダでとは言わないから!」
私は机を叩きながら、怒鳴りつけるように被せて叫んだ。
その行動に女の子は呆気に取られて、固まった。
そしてその姿を見て私はハッとした。
何で私怒ってるんだろ……。
頼む側なのに、ヤバいやらかした……。
「ご、ごめん。怒るつもりは――あれ……。」
その時、手に液体が滴り落ちる事で私は怒ってるんじゃなくて、泣いている事に気づいた。
「な、何で泣いてるんだよ。断った私が悪いみたいじゃねえか」
女の子はオロオロと戸惑いながら、椅子を少し後ろに引いた。
「ごめん…‥そんなつもりじゃなくて……。私は……ただ、お母さんにもう一回会いたくて…………青空が見たくて……。それが、できなくなりそうなのが…………悲しくて……」
あぁ、ダメ。こんなの最低じゃん私……。
何も悪くないのに怒鳴りつけて、泣き落とししようとして。
あぁ、ダメ。ダメ。
私は自分ではお姉ちゃんと思ってたけど、やっぱりまだ子供だったみたいで、溢れる感情が止められなかった。
割り切ってたつもりだったけど、やっぱりお母さんにはもう一度、すぐにでも会いたい。
光が見えたからこそ、失いそうになって私は怖くなった。
「お願い、連れてって。お粥あげるから……、骨折も治すから……。汚い髪といてあげるから……」
こんな泣き落としの交渉……。軽蔑だね……。
「な、泣くなよぉ。意地悪で断ったわけじゃないんだからな。私はお前が嫌いだから、断ってるんだよ」
女の子は申し訳なさそうな顔をしながら応えた。
「なっ、何で嫌いなの。沢山謝ったじゃん」
私は箱から立ち上がり、女の子の右手を両手で握って、縋りついた。
女の子は心底嫌そうな顔をしながら、私を見下ろしながら喋る。
「すぐ怒るし、左腕沢山触ってくるし、なんか態度コロコロ変わるだろ」
「だって、頑張ってるから、変わるんだもん。じゃあお願い、せめて骨折が治るまでここにいて! それまでに好きにさせるから! だから!」
女の子は天井を見ながら考え込んだ。
20秒ほど見続けた後、もう一回嫌そうな顔をしながらこっちを見下ろした。
「…………分かったよ。本当に骨折治るまでだからな。治った時、嫌いだったら出て行くからな」
「うん、うん。ありがとう。」
何とか繋がった青空の道に、私は鼻水と涙を垂らしながら女の子に抱きついた。
「ちょっ――」
「私、名前ナズハ。貴方は?」
私は泣きながら、叫ぶように話す。
「……。ハルマ」
ハルマちゃんは私のハグを受け入れて――多分――、軽く一息吐いた後自己紹介をして抱きしめ返してくれた。
そうして、私とハルマちゃんの時間制限付きの共同生活が始まった。
好感度はマイナススタート、それまでに好きにさせる。




