挽回
「…………ん、うん。――アッ!」
目を覚ました私は真っ先に家を見た。
うん、壊れてる。夢じゃない。
でも私はそれが気にならないぐらい、幸福感で満たされて安堵した。
大きく間壁の穴からは、私の棚を勝手に物色している女の子が見えた。
よかった、まだどっか行ってない。
まだ青空への道は残ってる。
私は急いで土埃を叩き落として、壁の穴から恐る恐る顔を出した。
「あ、あのー」
「なんだ」
女の子はこっちには目もくれず、棚を物色しながら応えた。
「……その、落ち着いて、くれた?」
「うん。踏み潰したからスッキリした。」
それを聞いた途端私は顰めっ面で睨みつけた。
何この子、私ちょっと嫌いかも。
そんなすぐにスッキリするならさ、ちゃんと話聞いてくれればよかったのに。
こんな暴れる必要なかったじゃん、いっぱい謝ったじゃん――
――あ、ダメ私!怒ったらダメ。
私には青空に合うって、お母さんにもう一度会うって大事な使命があるの。
それにはこの子が必要、嫌いでも怒ったらダメ!
私は深呼吸をして心を落ち着かせた。
ふぅ、私偉い。
……さて。この子ずっと睨んでたのに見向きもせずに、さっきから何してるの。
女の子は私が起きてからずっと鍵が軋むぐらい乱暴に棚を開けては、中身を放り出してを繰り返していた。
「ねぇ、ずっと何してるの? ここ私の家だよ」
その言葉に女の子は初めて手を止めて、首を傾げながらこっちは振り返った。
「……? 何言ってんだ、私がお前に勝ったから私のもんだろ」
その言葉に私も首を傾げた。
「な…‥何言ってるの……? それ動物とかヤジンの話でしょ……。私人間だよ? 人間は、人の物は人の物だよ」
「…………。そうか、お前人間だったのか。知らなかった。ごめん」
「な……、何言ってるの、私どう見ても人間じゃん! 獣と同じだと思ってたの!酷い!」
あまりの失礼さに私は壁から身を乗り出して、怒った。
女の子は右耳を押さえて、顔の右側だけ顰めっ面で私を睨んだ。
「仕方ないだろ、私はママ以外の人間見た事ないんだよ」
「そんなの私も同じだよ! でも人と獣の違いぐらいは分かるもん!」
「あーもー、分かったよ。じゃあ家返す! これでいいだろ! バイバイ!」
そういうと女の子は家から出て、森の中に歩いて行った。
「ちょっと待ったー!」
私すぐに女の子を追いかけて、森に向かって叫んだ。
でも反応は返ってこなかった。
やっちゃった……。怒らないって決めたのに、唯一の青空への道が……。
頑張ったのに、残ったのはボロボロの木だけ……、
「なんだよ、まだ何かあるの! 家返しただろ!」
膝から崩れ落ちて泣きそうになったその時、森から女の子が怒りながら出てきた。
やばい、嫌いって言ったけどやっぱやめる。
好きになりそう。
「戻ってきてありがとー!」
私は目に涙を浮かべながら女の子に抱きついた。
「痛ッ!」
でも抱きしめた瞬間、左腕が締め付けられた痛みで女の子は体を跳ねさせて、私を力一杯振り解いた。
「ぁふッッ!」
そして私はその勢いで近くの木に体を打ちつけて、そのまま気絶してしまった。




