弁明
私が固まって放心していると、女の子は左腕を何度か優しく揉んだ後、右手拳を握りしめて私を睨んだ。
――ヤバい!
私は急いで両手で力一杯棚を押して、体を抜こうと踏ん張った。
ぬっ、抜けない!
本当にやばい!このままじゃ!
もがいていると女の子はベッドの上で立ち上がり、私を指刺した。
「お前は誰だ、なんで私はここにいる」
……何この子、記憶障害?
答えたいけどさぁッ、先に助かりたいんだけど!
安全の確保が先だよ……!
私は待っての意を込めて、両掌を力一杯女の子に差し向けた。
「……ッ!」
すると女の子はビクンッと体を一瞬震わせ眉を下げた。
でもまたすぐに眉をキリッと上げると、拳を振り上げてこっちに飛んできた。
「何する気だったか知らねえが、どっちにしろ答えねえならッッ!!」
ヒイィぃぃぃ!死ぬゥ!!
お願い抜けてええええ!!!
私は必死にお尻を振りながらなんとか隙間を作り、万力の力で棚から脱出した。
火事場の馬鹿力様々だ。
そしてベッドに頭から落下した直後、背後から聞いた事ない轟音が鳴り響いた。
「まさか……!!」
そのまさかだった。
振り返ると私の家の玄関は大きな大きな、開放的な入り口に変わっていた。
あんなの当たってたら……。
「……! 今そんな事考えてる場合じゃなーい! 外でなきゃ!」
放心していた私はハッとして、すぐに――一応壁からじゃなくて玄関ドアを開けて――外に出た。
まだ中にいたら確実に家がもっとめちゃくちゃだ。
外に出てまず私は女の子の姿を探した。
砂煙が凄くて視界が悪くてよく見えない。
よし、探すんじゃなくて出てきてもらおう!
「左腕触っちゃってごめん!! でもそれ私じゃないの!信じて!! 私は!ただ貴方を助けようと!!」
叫ぶや否や、砂煙の中から大きな石が飛んできた。
石は私のおでこに直撃して、私は足を引っ張られたように地面に倒れた。
いったぁぁぁ!おでこ赤くなるよ!
料理道具なのに武器に使わないでよ!
私はおでこを摩りながら家の陰まで走って、砂煙の方を恐る恐る覗いた。
「一回攻撃やめてよ!なんで攻撃してくるの! 私なんもしてないじゃん!」
「私の腕を折っただろ!」
「違うって!多分それヤジンだよ! 私なんかが折れるわけないじゃん!」
「知らん!」
声は明らかに怒っていて、話が通じる感じはしない。
どうやったら話を聞いてもらえるだろうと、私は頭を捻らせた。
何か落ち着いてもらう方法……方法……。
なくない?こんなの、もう殴られるまだ落ち着かなそうだよ。
でも殴られたら死んじゃうし……
「……あっ!そうだ!」
「そこか!」
声が聞こえた途端、私の目の前の壁が蹴破られて吹き飛んだ。
やっばーー!!
声出ちゃった!
女の子は蹴破られた壁を跨いで私の前に現れて、怒りに満ちた表情で見下ろした。
そんな絶体絶命の大ピンチの中、私はある秘策を思いついた。
そう、土下座だ。
どんな怒った人でも、この行為の前では落ち着くらしい。
「ごめんなさい!! 腕を触って痛めさせたのは事実だけど、骨折の方は本当に知らないんです! 落ち着いてください!」
精一杯謝った後チラッと見上げると、女の子は左腕を見ながら静かに息をしていた。
効いてる……?
私は下を向き直して安堵のため息をついた。
(ふー。よか――んべ)
でもその瞬間、とんでもない力で私の頭は地面に叩きつけられた。
「知るか。とりあえず痛いからムカつく」
…‥教訓にしよう。
相手が知らなきゃ土下座なんて無意味だ。




