第二話 レイレイ
第二話 レイレイ
ちょいと、ここで三人組の自己紹介をしておこう。
まずは河童のヨーちゃんだが、まんま天井ハゲである。
と、言っても漫画みたいな頭ではないが、結構髪薄い三十代半ば、背は低いが、港の仕事をしているので、身体がっちり、ちょいイキリ野郎でどすけべだが、ギリ人情には熱い。
酒癖悪くて、森熊の店の女の子や、客とも口喧嘩するが、自分の好きな女と家族にははめっさ優しい。独身。
森熊、『森の熊さん』の経営者、気が優しく超男前だが、敏腕経営者。そんな飲食儲からねえだろうの塚口でも儲かってそう。超美人の奥さんもいる。まー女にモテるモテる。けど男の友情には熱い。二十代後半。身長もデカ過ぎ。
最後に私、自分、正ちゃん。テキトーな人生歩いている郵便局員。
一度嫁貰ったが逃げられる。得意技は歌とギター、弾き語りは、世界最強だと想っている、阿保で幸せなやつなのである。
それと、趣味はニ流の数学、ナンパ目的のボクシング。
とにかく女が好きで、片っ端から付き合いまくるが、ここ十五年くらいろくな女と付き合っていない。結婚の約束をしていた二十代前半だけが、恋愛のイイ想い出がある。四十代後半、独身。
以上が三人の紹介である。
『森熊』を出て十分くらい歩いて着いた。
みんなワクワクしながら扉を開けると、二人が「いらっしゃっい」と声をかけて来た。
森熊も河童のヨーちゃんも「期待以上やん」と、表情が緩い。「先体やる?!」「ヤルヤル」と同時に二人は、二コニコが止まらない。『先体』、って言うのはマッサージプラス身体を洗ってくれるサービスで、ただの『マッサージ』は、マッサージと自力シャワーのみである。
基本料金は、先体が一万円、普通のマッサージは二千八百円からで、誰も普通のマッサージなどやらない。もちろん、二千八百円のマッサージなど、テキトーで時間も短い。
「ええ女やんけ〜」と、無神経なヨーちゃんがデカい声で言う。その時振り向いたのが、『ゆい』で、今後、ヨーちゃんは、ゆいにごっそり抜かれる事になる。
森熊にはえりんが付いた。
「背が高くて、ハンサムなのね」とか言われて、森熊も喜んでいた。
二人が部屋に入ってる間、自分は前方の事務室でボサーっとしながら待っていた。
五十分くらいして二人が蒸気させて、事務所に戻って来ると「ええやんええやん」と二人ともご機嫌であった。
「あの女の子ゆいちゃん、ライン教えてくれたで。今度飯行くわ〜」と早速の河童。「はえーなー」と私。
ヨーちゃんは、女とセックスする為ならなんでもやる男である。
森熊も「いやぁ〜美人過ぎるだろ〜」と大絶賛していた。
すると、えりんとゆいが戻って来て
「正ちゃん、マッサージやる?!」
「うん」、
「じゃあ、二人で相手してあげる、先体ね?!」「おお〜ん」とイキそうだったが、二人分、二万円取られたのは言うまでもない。
が、しかし、えろ指二十本のテクは、天国行きKO!!だった。
次の日仕事に行く。
相変わらず面倒くさい管理者がいるので、朝のうちは鬱陶しい。特に今回の管理者は、毎日毎日くだらないことを、思いつきで集合させ、誰でも出来る事を、この糞忙しい時に、の賜ったりする。意味がわからない。
一日に、書留、速達、レターパックや追跡郵便以外にも、一人で、通常郵便約千五百通以上の郵便物をカッチリ配り終えてくる連中相手に、気まぐれで呼び出し、集合させ、
「みんな、右利きの人は、左手に持った郵便物を、ちゃんと左手の親指で送って、右手で受け取る作業をしているかなぁ〜」とか、言い出し、左手の親指使ってこんなに器用に動かせると、実技までやって見せるのである。
郵便物の処理は基本、機械作業と手区分作業があるのだが、結局、全ての郵便物を一通、一通、ゼロコンマ何秒かで判断し、転送物や、いない人などを判断し、道順を組み立て、雨の日も風の日も、台風の日ですら、バイクに積んで、更に、一通一通もう一度確認し、書留や速達、ポストに入らない大きい郵便物は基本手渡し、残りの通常の郵便物はポストに入れて、配り切ってくる。
そんな連中相手に、指送りがどーのこーの、そりゃあ個人的な多少の癖はあるかも知れない。
しかし、そんなきっつい作業を、やり切って、帰ってくる職人達に、良くもそんな馬鹿な事を言えるなぁ〜とつくづく思う。
で、時々「私も昔配達やっていたから」とか言うのがこの人の常套句だが、
(お前の時代とは全然違うねん。入力しなければならない郵便物の量が全然違うだろ!!しかもこの頃の年賀のノルマ、正社員一万枚。カタログ販売山盛り、勘弁してくれよ) の世界だ。やってらんねぇ〜やけど、けど、
「そーなんですか、そうすると速いですね、へー」みたいな顔をして、職員はみんな心の中で「死ね」と思っていた。
ー*数年後、コンプラ問題で叩かれノルマ無くなる*ー
とりあえず夕方仕事が終わり、
『森熊』に向かう。
「良かったやろ〜、二人とも別嬪やろ〜」と森熊に言うと、既にカウンターの右端のヨーちゃん定位置から、「ゆいと来週USJに行くで〜」と声が聞こえた。
「はえ〜なぁ〜」と森熊と私は呆れてしまった。とにかくこの男は行動力がある。女の為なら何でもする。
でもまあ、そー言いながら私、自分も、えりんとこっそり仲良くなっていたのである。
えりんが、もう自分のアパートの前の部屋に既に引っ越して来ていたのだ。
「もうあなたはお兄ちゃんなんだから面倒みてね」と友達以上恋人未満的な状況になっていた。
実は最近、自分の住んでるアパートを一棟買い取っていたのだ。
何故に?!と言うと、アパート自体は、静かで良いのだが、入る住人、入る住人、うるさい奴とか、面倒い奴が多かったのである。薬中の元刑事までいたのだ。
それでアパートごと四部屋、買ってしまったのである。
自分が一部屋住むと、残り三部屋余っていたのだ。
本当は、潰して家を建て変えるつもりだったのだが、思った以上にお金がかかると不動産屋に言われ、保留状態にしていたのである。
そのうち、他の人に貸して家賃貰えばいいか?!」と知恵が付き、職場の先輩をひとりだけ入れていた。
で、二部屋余っているので、えりんを半額の家賃で入れたのである。
「ヨーちゃん、USJか?!やるねえ、えりん、もう、うちに住んでるよ」と言うと、「えーっ、もー同棲してんのか?!」と二人の悔しがる顔が見えた。まだキスすらした事がないのに、見栄を張りたかったのだ。
「笑笑、前の部屋を貸しただけだよ」と言うと、
「なーんや、でもいいなぁ〜いつでも抜いて貰えるやん」、
「あほか?!そんなわけないやん」、
「でも、半額で貸してるから、なんかええ事あるかもな、それとも部屋代無料にして、時々抜いて貰おうかなぁ〜」と言うと、河童のヨーちゃんと森熊は、
「上手いことしやがってぇ〜」と悔しがっていた。
週末土曜日が来て、ヨーちゃんが
「やばいわ〜日曜日に仕事入ってもた〜どうしよう」と言い出した。
「延期すればいいやん」と、私。
「いや、もうゆいは、USJの口のなってるらしい」とヨーちゃん。
「なぁ〜実は、えりんも行きたがってたからさぁ〜 悪いけど正ちゃん連れて行ってくんね?!」とヨーちゃんが訳のわかんない事を言い出した。
「はっ?!俺が二人の相手すんのか?!」と言うと、「いや、もう一人、えりんの子供も」「なんぢゃそりゃ?!」と、予想外の展開になってしまった。
結局、三人連れて、自分がUSJに行く事になってしまったのだ。
当日、朝早くから、正ちゃんお化けアパートを、ノックする音がして、十歳くらいの女の子が立っていた。
「えっ、誰?!」って言うと、後から、ゆいとえりんがやってきて、「レイレイよ」とゆいが言い、ちょっとまるまるとしてたが、ピンクの服が似合う可愛い女の子だった。
まあ話は、聞いていたから、シングルマザーの娘なら苦労してんのかなぁ〜と思ったが、全然悲壮感などなく、元気いっぱいで可愛いくて、ちょっと生意気なくらいだった。
「まあ、とにかく出発するか」で、塚口の駅に向かった。
USJには、のちに、JR環状線に乗り換えて、さらに、『ゆめ咲線』と言うのに乗り換えなければならない。結構、面倒くさかった。
しかし、彼女ら三人ワイワイ楽しそうだった。
ゆいもえりんも、普段法律スレスレの仕事をしてる割に、こんな時は、無邪気で不思議な感じだった。
「ねえ、君は何歳なの?!」と聞くと、レイレイは、両手を広げて見せた。
「十歳か?!」と言うと
「うん」とレイレイが答えると、何故か自分自身の父性本能が湧き出てきた。
えりんの子供だから、可愛いと思ったのかも知れないが、人間とは不思議なものである。
で、USJに着いた。さっそくアトラクションに行くのだが、何時間待つねん。って言うようなやつばかりだった。
「とにかく並ぶか」で、まだましな、一時間半待ちの、ジェットコースター的な奴に並ぶ。並んでる間、色々な話をした。
レイレイのクラスの男の子の話や、先生の事、もう一人の中国人の生徒の事など、最初は無口だった子が、いっぱい喋るようになっていた。
レイレイは、日本語も中国語も堪能なので、えりんがわからない日本語もレイレイが通訳してあげていた。
結局一時間半待ったのに、レイレイは年齢か、身体のサイズか身長だったか忘れたが、乗れない事になってしまった。
「えーっ、なんで?!」って言っていたが、
「しょうがない、俺も留守番するから、えりんとゆい、行ってき!!」と言うと、「えっ、良いの?!」と、
えりんとゆいは喜んで手を振ってさよならした。
「おいおい、子供可哀想だろ?!」と思ったが、現実的にはしょうがない。
二人で手を繋いで、「アイスでも食うか?!」とその場所を離れた。
実は本当は自分はジェットコースターが大の苦手だったので、非常に助かったのである。
それから二人で、アイスクリン的なコーンのアイスを一個ずつ買い、観て回る事にした。
がしかし、その時、レイレイが買ったばかりのアイスを落としてしまう。
「おいおい」と私は、レイレイに自分のアイスを渡し、落としたアイスクリンは硬いし、まださらぴんだったので、汚れてない部分を指で剥ぎ取って自分が食べてしまった。
それを観て、レイレイが笑い出し、
「一緒に食べよう」と、一本のアイスを交互に食べる事にした。
普段しんどい仕事してるから、えりんやゆいが、羽根伸ばすのはしゃあないが、子供置き去りにしといて何しとんねん、と思いながら、二人でコーヒーカップに乗った。
なんか本当に娘が出来たような気がしたが、どんどん、えりんの策略にハマって行きそうだなぁ〜とも思った。
「面白かった〜」とえりんとゆいが帰って来て、
「ちゃんと見といてくれた」、
「当たり前ぢゃ〜!!」と言い返すと、レイレイは笑っていた。
後でレイレイが、「正ちゃん、落ちたアイス食べた」とか、飯食ってる時に笑い話にしていたが、まあ可愛いから許す。
残りのアトラクション色々行ったけど、酒呑みのおっさんが行く所ではないので、テキトーに合わしていた。
そのうちゆいが、河童のヨーちゃんから電話あって、
「これからデートとに行かなきゃ!!」か言い出し、えりんとレイレイと自分の三人で帰る事になった。
それから塚口に帰って来て、中華料理を食べに行った。
「何食べんの?!」と言うと、レイレイは「ラーメン食べる」と言ってとても嬉しそうだった。
まあ、母親と一発やるにはまず子供だろう。と思っていたが、短時間でちょいと変な愛情がついてしまった。
続く〜