第十六話 帰国
第十六話 帰国
出発当日、朝は何とか早く起きた。
焼酎のおかげでめちゃくちゃ眠かった。
えりんと二人で、全部の荷物をまとめてダンに電話した。
「おはよう、悪いけど頼む」と電話すると、
「OK!! ボス!!」と返事が来た。
下のロビーで待ってると、十分くらいで来てくれた。奥さんも一緒だった。
「ハイ、オハヨウゴザイマス!!モウニホンニカエルノネ」と言ってくれた。
えりんも奥さんと仲良くなっていた。えりんが現地で仲良くなったのは、唯一彼女だけだったので、少し寂しそうだった。「さあ行こうか」で、空港まで向かって貰った。フィリピンは高速道路をスカイウェイと言う。スカイウェイを走って、あっと言う間に着いた。
ダン夫婦に、「またフィリピンに来るし、日本にも遊びに来てくれ」と言い、最後に奥さんからお土産を貰った。
こんなに気持ちの良いドライバー夫婦はいないだろう。
フィリピンに行く友人達には、
「ダンを絶対利用するように」と言うからと約束した。
握手して「サヨナラ」をいい、空港の中に入った。
相変わらず空港は、広くてややこい。
帰りは、LCCではなくマニラ航空に乗る。
明らかに職員の雰囲気が違う。地元の職員は選ばれたエリートなんだろう。
昔のJALよりプライドが高そうだった。確かに発音も綺麗だし、中の冷房も効いている。変な緊張感もあるが、予約を確認し、チケット切って貰ってた。
最後の荷物カウンターは、これまで同様長い行列で、手続きが面倒で困ったが、これで帰れるのだから、最後に別にイライラもしなかった。そのままボディチェックのゲートをくぐり、最後の待合室に向かった。中はクーラーも効いていて、いつもより空いていた。えりんに、
「お土産、ダンの奥さん何を貰ったの?!」と聞くと、袋を開けて見せてくれた。ドライマンゴーだった。
定番中の定番だが、フィリピンに行って来た証にはグッドだった。
しかもまぢで美味そうだった。
「飛行機の中、退屈しないやん」と言うと、
「駄目よ、レイレイに送るんやから」と笑った。何袋もあったので、
「ええやん、一袋くらい」と言うと、
「そうね、飛行機の中でも食べましょうか?!」と言った。自分は、
「う〜ん、とりあえずウヰスキーかな!!」と言って、売店で、ウヰスキーの200mlくらいの小さなボトルを二本買って、何んだかよくわからないアテをかった。
(ドライマンゴーは、後でウイスキーのアテになりそうだなぁ〜)と思いながら、椅子に座ってウヰスキーを一口呑んだ。
フィリピンローカルのウヰスキーは、意外と美味しい。えりんはまた買い物をしていた。自分は、完全には眠っていないが、わりと乗客が少ないのと、クーラー良く効いていたので、ええ感じでうとうとしていた。
飛行機の時間はもうすぐだ。
今回の旅行は、結果的には、思っていた以上に楽しかった。結果オーライだ。
えりんは相変わらず、レイレイと話している。
邪魔すると悪いので、眠ったふりをしていると、
「ねえ、寝てるの?!」と肩を揺すられた。
「さっさとしないと、置いて行くわよ」と言われたので、
「チケット没収するぞと」言うと、
「ドライフルーツはあげないわよ」と言われてしまった。ウヰスキーのアテにするのがバレていた。
時間が来て、飛行機に乗った。
マニラ航空はやはり少し高級だった。座席が少し広く感じた。
えりんにドライフルーツを貰って、ウヰスキーと一緒に食べた。
南国の最後の晩餐は、酸っぱくて、甘い味がした。えりんは疲れていたが、エマニュエル夫人よろしく触ろうとしたら、
「指折るわよ」と言われてしまった。
「冗談やん、もう折れてるし、」と言うと、半分笑って、半分軽蔑の目をしていた。笑笑、本当に冗談だったのだが。
それから二時間くらい二人で爆睡した。
意外と日本とフィリピンは近い。
最近は、四時間くらいだ。
えりんは、相変わらず人の窓側の座席を勝手に占拠して、毛布を借りて寝ている。
コイツしばいたろか?!と思ったが、更に日本に着いたら、仕事行くの嫌だなぁ〜と思いながら、前出の、ネットラジオの出演も延期して貰わなあかんなぁ〜とも思った。日本に帰り着くと、面倒な事が多いなかで、たぶん、指は、本当に折れている。
痛みが凄い。二か月はギター持てないだろうし、下手すりゃ仕事も二ヶ月休まないといけない。
指の怪我をすると、郵便物が持てなくなるので、配達員にとって、指の怪我は致命傷だ。
実は外の配達より、その準備のための内務作業が痛くて出来ないのである。
まず、郵便物をコスレない(郵便物を区分出来ない、コスルはスラング、専門用語)し、機械から上がって来た郵便物と、区分された郵便物を挟み込んでいく作業が、一通につき一秒もかけていられないのだ。
高速で挟み込んでいく。
スロットの目押しみたいなもので、住居者がいなければ、はじいて、特別な作業をしなければならないのだ。
その作業は、まさに指の力が非常に大事なのだ。なので、折れていたら、作業は無理だろう。
(仕事しないのなら、二ヶ月も何をすんねん)の世界であるが、以前、中途半端に出勤して、病院の先生に怒られた事があった。療養しないと、くっつかないのである。
嫌な気分になってもしょうがないので、また眠ってしまった。
「着陸体制に入ります」のアナウンスで目が覚めた。えりんは、CAに毛布を返し、眼を擦っていた。
「着いたわね」
「うん」といい。座席を戻した。
えりんの横から窓の外を見かけると、船の小さい点で見えて、そろそろ関空かなと思った。
海上空港なので、それっぽい建物が何となく見える。リアルで空港が見えるとなんか寂しい気がする。
明日から、日本での現実社会が待っているからである。
骨折に関しては、仲良くして貰っている整形外科の先生がいるので安心だ。
面白い先生で、奥さんも助手で、具体的な、色々な対処法を教えてくれる。帰ったら真っ先に行かなければならない。
色々と考えて事をしているうちに、飛行機はとうとう着陸した。
「これからどうする?!」とえりんに言うと、
「一回京都に帰んなきゃ、色々整理して、来週行くわ、部屋掃除しといてね」と言われた。
「ちっ、俺が掃除すんのかよ?!」と言うと、
「お願いやっといて」とニタッと笑った。
えりんの部屋には、シャワーが付いてるので、合鍵で入って良く利用していた。
お化けアパートは、もともと自宅で、全て自分専用だったので、自分の部屋にわざわざシャワーつける必要なかったので、えりんの部屋だけにつけていたのだ。
えりんに、家賃貰っても、中に入って勝手に使っていいと許可も貰っていたので合鍵を持っていたのだ。
それにもう今更、リョウちゃんより、えりんが一番大事になってしまっていたので、一緒に住んでも良かったのである。
でも、「日本に帰って来たら一緒に住む?!」と言うと、
「嫌、自分の部屋はキープしたいし、レイレイが遊びに来る事もあるから、今まで通りにして」と言う。
まあ、ヤレればどっちでも良かったし、確かえりんはまだ離婚していないので、その方が良かったのだ。
突如入管が訪ねて来るかもしれないし。
いずれその問題も解決しなければならない。
京都行きのバスが来たので、えりんは、「来週には来るから」と、抱きしめた腕をほどいてバスに乗り込んだ。
えりんを送りだすと、どっと疲れが出た。阪神尼崎直行のバスを探して乗り込んだ。今回も出発と同様、席は空いていたので一番後ろの座席に座り、残りのウヰスキーを、一気に飲み干して眠りに入った。
目が覚めると、国道四十三号線上にいた。それから五分程度で阪神尼崎に着き、バスを乗り換えて阪急塚口まで帰って来た。
もう時間は、夕方の七時過ぎになっていた。もちろん家に帰らず、森熊の居酒屋へ直行だ。
中に入ると、当然のように、ヨーちゃんと森熊がいた。
「正ちゃん、おかえりやんけ!!、えりんと何発やったん?!」と相変わらず下品な会話からだった。
「ヨーちゃん相変わらず、阿保やなぁ〜、阿保が増えとるやないか!!はい、お土産」と、サンミゲルのビールとお菓子を渡した。
森熊も「おかえり、正ちゃん、えりんは?!」
「京都に帰ったよ、来週塚口に帰って来るってさ」と言うと、カッパのヨーちゃんが、
「とうとう一緒に住むんか?!、リョウちゃんはどないすんねん?!」と言い出した。
相変わらず無神経で、意味深な笑い方がいつもの通りだった。
「そのままやで、えりんは自分の部屋に住むし、リョウちゃんにお土産を渡さなあかんしなぁ〜」と言うと、
「このラバーボーイが!」と言われた。
ラバーボーイと言うのは、英語で色男のスラングだが、フィリピン人が良く使うので、ヨーちゃんも覚えたらしい。
ボクサーの大統領も良くこの店に来るので、覚えたんだろう。ヨーちゃんは全く英語が似合ってなかった。笑笑
とりあえずいつものハイボールを呑んで、今回のフィリピン旅行の顛末を、二人と常連客と飲みながら話まくった。
続く〜




